タンクレディ[全2幕] ロッシーニ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

G. Rossini, Tancredi 1812~13
タンクレディ[全2幕] ロッシーニ作曲

 
登場人物

タンクレディ(A) アルジリオ(T) アメナイーデ(S) イザウラ(Ms)  オルヴァッツァーノ(Br) ルッジェロ(Ms)

 

概説

 ロッシーニの10作目にあたるこのオペラは、彼の初の本格的なオペラ・セリアであり、最初の成功作である。ヴォルテールの原作ではタンクレディの死を結末とする悲劇であるが、ロッシーニのオペラではハッピー・エンドで終わることに変更された。 ただし近年のフェラーラ改定版では、タンクレディの死で終わるようになっている。なお序曲は、1812年作の「試金石」から転用されている。

第一幕

 第一場 1000年頃のシチリア島のシラクサにあるアルジリオの王宮の一室。シラクサの市民たちが国王アルジリオをたたえている。王は宿敵のサラセンの勢力に対抗するために国内の抗争を解消することを目指し、長年抗争を続けてきたオルヴァッツァーノと和解しようとしている。そのために娘アメナイーデをオルヴァッツァーノに妻として与えることを約束する。 アメナイーデはかつて抗争に敗れ、メッシナに追放されているタンクレディを密かに愛しているのでその話に驚き、一日だけ結婚式の猶予を父に懇願する。友人のイザウラが現れ、彼女がタンクレディ宛てに書いた手紙を届ける手配が済んだことを伝える。
 第二場 王宮の庭。腹心の部下ルッジェロとこっそりシラクサに戻ったタンクレディは、宮殿の庭園でアメナイーデが現れるのを待っている(「おお祖国よ〜大いなる不安と苦しみの中で」)。父アルジリオと言い争いながら庭に出て来たアメナイーデは、タンクレディとの久し振りの再会を喜ぶが、危険が迫っているから早くここから立ち去るよう彼に言う。
 第三場 シラクサの広場。多くの騎士や人々が祝賀の準備のために集まっているが、それがアメナイーデとオルヴァッツァーノとの結婚式であることを知ったタンクレディは、彼女が自分を裏切ったものと思い込み、ルッジェロの忠告にも耳を貸さず、名を隠したままアルジリオの義勇兵に応募する。 結婚式が始まろうとするが、アメナイーデはオルヴァッツァーノとは結婚しないと宣言する。アルジリオが怒り狂っているところにオルヴァッツァーノが現れ、メッシナのサラセンの陣地に行こうとしていたアメナイーデの召使を捕らえると、宛名のない手紙を持っていたと言ってそれを王に渡す。その手紙はタンクレディに送られたものであるが、王はてっきりその手紙をかねてからアメナイーデを妻に望んでいた敵国サラセン王ソラミールに宛てたものと思い、アメナイーデを祖国を裏切った反逆罪で逮捕する。

第二幕

 第一場 アルジリオの王宮の一室。オルヴァッツァーノはアルジリオに、反逆罪で捕らえられたアメナイーデの死刑執行書に署名するよう求める。王は娘の死と王としての義務の間の相克に悩むが(「おお、神よ酷い」)、しかたなしに署名する。
 第二場 アメナイーデが監禁されている牢獄。アメナイーデは自分の不幸な運命を嘆き、いつの日にかタンクレディが彼女の無実を知ってくれることを願う(「ついに不幸な人生の終わりに〜死は恐ろしいものではない」)。そこにアルジリオとオルヴァッツァーノが入って来る。アルジリオは娘を赦したい気持ちがあるが、オルヴァッツァーノは彼女の処刑を主張する。 そこに仮面をつけたタンクレディが鉄柵の戸から入って来る。彼はまだアメナイーデの手紙に疑いを持ちながらも、彼女を救うためにオルヴァッツァーノに決闘を申し込み、彼はその申し出を受ける。アルジリオも思わぬ騎士の出現に喜び、タンクレディは名を明かさないままに決闘のために出て行く。イザウラはこの騎士がタンクレディであることを見抜いてそれをアメナイーデに伝えるので、彼女はタンクレディの武運を祈る。やがてタンクレディが勝利して彼女の無実を勝ち取る。
 第三場 シラクサの広場。決闘に勝ったタンクレディが市民たちの歓呼に迎えられて戻って来る。アメナイーデは彼に誤解を解いてくれるよう頼むが、彼女に裏切られたものと思い込んでいるタンクレディは彼女の懇願に耳を貸さずに、この土地にはもう用はないと言って再び戦場に赴く。
 第四場 シラクサ近郊のエトナ山が見える谷間。タンクレディはいまだにアメナイーデの裏切りを信じられずに一人物思いに耽っている。そこにアメナイーデを伴った国王アルジリオが現れ、シラクサ軍の兵士たちはタンクレディを指揮官として勇躍出撃して行く。やがて彼がサラセン王ソラミールを倒したと伝えられるが、タンクレディの身を案じていたアメナイーデの前に瀕死のタンクレディが運ばれて来る。彼はアルジリオから、例の手紙がソラミールに宛てたものではなく、実はタンクレディに宛てたものであるとわかったと知らされるが時すでに遅く、アメナイーデの腕の中で息絶える。


 



Reference Materials

初演

1813年2月6日 ヴェネツィア・フェニーチェ座

原作
ヴォルテール(本名フランソワ=マリー・アルエ)/「タンクレード」

台本

ガエタノ・ロッシ/イタリア語

演奏時間 
第1幕70分、第2幕97分(ヴァイケルト盤CDによる)

参考CD
● ホーン、クベッリ、パラシオ、ザッカリア/ヴァイケルト指揮/ヴェネツィア・フェニーチェ座管・唱(SONY)
● コッソット、クベッリ、ホルヴェーク、ギュゼレフ/フェッロ指揮/ケルン・カペラ・コロニエンシス、ケルン放送唱(WF)
● カサロヴァ、メイ、ヴァルガス、ペータース/R・アバド指揮/ミュンヘン放送管、バイエルン放送唱(RCA)

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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