アルジェのイタリア女[全2幕] ロッシーニ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

G. Rossini, L’Italiana in Algeri 1813
アルジェのイタリア女[全2幕] ロッシーニ作曲

 
登場人物

イザベラ(Ms) リンドロ(T) アルジェの太守ムスタファ(B)  エルヴィラ(S) ズルマ(Ms) タッデオ(B) ハーリー(Br)

 

概説

 わずか17日間(27日という説もある)で書き上げたオペラ・ブッファの傑作で、全部で39曲を数えるロッシーニのオペラの第11作として重要な位置を占めている。ロッシーニ自身の指揮による初演は大成功であった。

第一幕

 第一場 アルジェの太守ムスタファの宮殿の一室。太守の妻エルヴィラが、最近夫の愛がさめてしまったと嘆いている。侍女のズルマや宦官たちに慰められているところに太守が現れ、一同を外へ去らせてから、海賊の首領ハーリーに若くてピチピチしたイタリア女を探して来るよう厳命して去る。
 ハーリーと入れ違いに、捕らわれの身となっているイタリア人の若い奴隷リンドロが一人現れる。彼が故国に残して来た恋人イザベラを想っていると太守が姿を現し、自分の妻をお前に払い下げると言う。太守の命令は絶対である。背くと火あぶりの刑になるので困ったリンドロと、何とか妻を押しつけようとする太守の間で愉快な二重唱となる。
 第二場 嵐のあとのアルジェの海岸。難破したイタリア船が乗り上げる。海賊たちは船を襲って、財宝や奴隷にする人々を連れて来る。捕らわれた人の中にはイザベラもいる。彼女は太守への贈り物にされると聞いて、とんだ場所へ来てしまったと不幸を嘆き悲しむが(「むごい運命よ」)、改めてイタリア女の心意気を示してやろうと気を取り直す。イザベラに片想いの老人タッデオが彼女にしつこくつきまとう。彼女は彼を叔父ということにして、二人は太守の宮殿に連れていかれる。
 第三場 再びムスタファの宮殿の一室。太守はエルヴィラに、イタリア人のリンドロのところへ行けと冷たく当たっていると、ハーリーが美しいイタリア女を捕らえたと報告に来る。たちまち機嫌のよくなった太守は、さっそく彼女を連れて来るよう命じる。 
 第四場 宮殿の大広間。一同が待っているところに連れて来られたイザベラにひと目惚れした太守は大喜びする。反対にイザベラはいやらしい顔つきの太守を嫌悪するが、機智を働かせて逃げ出すために太守の機嫌を取るので、太守はすぐに彼女の魅力の虜になってしまう。その時、奴隷になるのは嫌だと言って騒ぐタッデオが火あぶりの刑になりそうになるが、イザベラのとりなしで命を救われる。
 そこにリンドロがエルヴィラとその侍女ズルマを連れて、太守に暇乞いのあいさつをするために入って来る。イザベラとリンドロは顔を見合わせびっくりする。賢いイザベラは、自分と結婚するために妻を捨てるような野蛮な男はごめんだと言い出すので、彼女に惚れ込んだ太守は頭を抱える。その弱味につけ込んで、イザベラはリンドロを自分の奴隷にもらい受けてしまい、一同混乱の大騒ぎの中に幕となる。

第二幕

 第一場 第一場と同じ一室。一同がイタリア女の手練手管によってすっかり恋の虜になってしまった太守のことをぼやいている。そこに当の太守が現れて、イタリア女にコーヒーを入れるよう命じるので、エルヴィラはまた悲しい気分になる。一同と入れ違いにイザベラが入って来て、リンドロに捨てられたのかと嘆いているが、現れたリンドロから事の真相を聞いて安心する。そして二人はここから逃げ出す相談をする。一方タッデオは、カイマカンという太守の侍従長に昇進し、トルコ風の奇妙な服装をさせられて太守とイザベラの結婚を取り持つように命じられるので困惑する(「頭が重いよ」)。
 第二場 宮殿の壮麗な大広間。イザベラがトルコ風の美しい衣装を着け、鏡の前で入念に化粧をしている様子を、太守、タッデオ、リンドロらが物陰からそっとうかがっている。 それを意識してイザベラは太守をじらしながら、意味あり気な言葉をつぶやく(「愛する彼のために」)。美しいイザベラにぞっこんの太守は、タッデオを彼女の侍従長につけて機嫌を取る一方、タッデオには自分がクシャミの合図をしたらリンドロを連れて下がるよう命じる。
 ところがイザベラはコーヒーを入れるとエルヴィラを招き、太守をこらしめようと何事か相談を始める。また太守に示すイザベラの媚に気が気ではないタッデオは、クシャミの合図があってもてこでも動くまいと居直るので、太守は癇癪を起こして愉快な五重唱となる(「ご紹介しましょう」)。
 第三場 第一場と同じ一室。ハーリーが、太守はご立腹だがイタリア女はいたって快活で賢いと感心して立ち去る。入れ違いにリンドロとタッデオが入って来る。タッデオは自分こそイザベラの影の恋人だと言うので、リンドロは笑いとばす。そして部屋に入って来た太守に対して、イタリア婦人にもてるパッパターチという結社に入会するよう勧める。パッパターチとは皆で大いに食べて寝て快楽を享受する会で、何があっても口をきいてはならないと説明する。太守はそれが逃亡計画の一環であるとも知らずに、リンドロ、タッデオらとはしゃぐ。
 第四場 第二場と同じ大広間。タッデオとリンドロが逃亡の打ち合わせをしているところに、イザベラがイタリア人の奴隷を連れて現れ、彼らを元気づける。パッパターチの入会に来た太守は珍妙な衣裳を着せられ、飲んで食べてご満悦の様子である。そしてパッパターチの規則に従って“見ても見ぬふり”を誓わされてしまう。
 その間に船が海岸に着いて、イタリア人たちは船に乗り込む。イザベラとリンドロの仲を知ったタッデオは怒って太守に事の成り行きを告げるが、太守は規則を守って取り合わない。ようやく太守は様子がおかしいのに気づいて追跡を命じるが、皆酔いつぶれて役に立たない。やむなく太守はエルヴィラに赦しを求めて元のさやに収まり、イタリア人たちの乗った船を見送る。


 



Reference Materials

初演

1813年5月22日 サン・ベネデット劇場(ヴェネツィア)

原作
伝説「偉大なソリーマン2世の美しい女奴隷 ロクセラーナ」

台本

アンジェロ・アネッリ/イタリア語

演奏時間 
第1幕65分、第2幕62分(アバド盤CDによる)

参考CD
●バルツァ、ロパード、ライモンディ、ダーラ/アバド指揮/ウィーン・フィル、ウィーン国立歌劇場唱(DG)
●ベルガンサ、ミシアーノ、ペトリ、ブルスカンティーニ/ヴァルヴィゾ指揮/フィレンツェ5月音楽祭管・唱(D)

参考DVD
●ゾッフェル、ギャンビル、カンネン/ヴァイケルト指揮/シュトゥットガルト放送響、ソフィア男声唱(Art)

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  





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