オペラ名作217 もくじはこちら
詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より
イタリアオペラ
G. Rossini, II Barbiere di Siviglia 1816
セビリャの理髪師[全2幕] ロッシーニ作曲
❖登場人物❖
ロジーナ(S、Ms) アルマヴィーヴァ伯爵(T) フィガロ(Br) ドン・バルトロ(B) ドン・バジリオ(B) フィオレルロ(T) ベルタ(Ms)他
❖概説❖
第一幕
第一場 セビリャのある街角の広場。夜も明けようとする頃、バルトロ家のロジーナを見染めたアルマヴィーヴァ伯爵は学生姿に変装し、楽士を連れてロジーナの家の窓辺でセレナードを歌う(「空はほほえみ」)。
楽士たちが去ると、上機嫌な鼻歌と共に伯爵とは旧知の理髪師フィガロが通りかかる(「私は町のなんでも屋」)。伯爵は彼を呼び止め、彼がバルトロ家に出入りしていると聞くと、ロジーナとの取り持ちを依頼する。
その時、バルトロ家の二階の窓が開いてロジーナが姿を現し、一枚の紙切れを下に落とす。歳甲斐もなくロジーナと結婚しようとしている後見人のバルトロは拾いに出て来るが、すでに伯爵がすばやく拾い上げた後である。手紙には、後見人の監視が厳しくて外出もままならないので、名前と身分を知らせて欲しいと記されていた。
間もなくバルトロが外出すると、伯爵はフィガロのギターを借りて「私の名前はリンドロで貧しい学生」と名乗る。一瞬、ロジーナが窓を開けて応えようとするが、誰かが彼女を中に連れ戻してしまう。伯爵はフィガロに礼金をはずみ、フィガロはバルトロ家に入り込む方法を提案して去る。すでに夜も明け、フィガロはバルトロの家に入り、伯爵は立ち去る。
第二場 バルトロの家の一室。ロジーナがリンドロへの手紙を書いて、彼への切ない恋心を歌う(「今の歌声は」)。そこにフィガロが現れるが、バルトロが戻って来たので慌てて物陰に隠れる。フィガロの来訪を知ったバルトロは彼女を詰問するが、ロジーナはのらりくらりとした答えではぐらかす。
間もなく音楽教師バジリオが訪れ、ロジーナ目当てに伯爵がこの町にやって来たらしいので、伯爵を中傷する悪い噂をまき散らして彼を町から追い出そうと言う(「かげ口はそよ風のように」)。しかしバルトロは、それよりもすぐに彼女と結婚するのが最善の策だと言って二人は出ていく。
その一部始終を陰で立ち聞きしていたフィガロは、リンドロの気持ちをロジーナに伝え、彼女からはリンドロ宛の恋文を預って帰る。入れ違いに入って来たバルトロは、ロジーナに再びフィガロが来た理由や、彼女の指にインクがついて便箋が一枚減っている理由などを詰問するが、彼女が巧みに言い逃れるので、これから監視を強めなければならないと脅す(「わしのような先生には」)。
その時、ドアを強く叩く音がして、酔ったふりをした士官姿の伯爵が入って来て、バルトロの名前をわざと間違えて呼ぶので、彼は気分を害する。伯爵が宿泊提供命令証を示すと、バルトロは机の中から宿泊免除証を探し出して伯爵を追い返そうとする。
伯爵はそれを破り捨て、姿を見せたロジーナにそっと手紙を渡そうとするので、バルトロはすっかり怒り出す。そして杖を持って伯爵の方に突進するので、伯爵も剣を抜いて対抗して大騒ぎとなる。
そこにバジリオやフィガロ、さらに巡羅兵もやって来て伯爵を逮捕しようとするが、伯爵は巡羅兵の隊長にそっと身分を明かすので、兵士たちはびっくりして直立不動の姿勢をとる。一同はあっけにとられる中に幕となる。
第二幕
第一場 バルトロ家の居間。バルトロが、あの酔いどれ士官は伯爵の手下に違いないとつぶやいていると、病気のバジリオの代理のアロンゾと称して音楽教師の姿に変装した伯爵が登場する。彼はロジーナからリンドロにあてた手紙を入手したと言って、彼女の不実の証拠として見せるので、バルトロはすっかり彼を信用する。アロンゾが恋人であると知ったロジーナは大喜びで歌の稽古が始まる。退屈したバルトロが居眠りする間に二人は愛をささやいていると、フィガロがバルトロの鬚を剃りに来て、別室で準備をすると称してわざと食器を壊したり、すきをみてバルコニーの鍵を抜き取ったりする。
そこに病気のはずのバジリオが現れるので一同は驚くが、伯爵はバジリオに財布を握らせるので、バジリオは重病人にさせられたまましぶしぶ追い返される。再びフィガロはバルトロの鬚を剃り始め、ロジーナと伯爵は駆け落ちの相談をするが、二人の会話の言葉尻からバルトロは伯爵の変装を見破って大騒ぎになり、バルトロは召使にバジリオを呼びに行かせる。
第二場 バルトロの家の一室。バルトロはアロンゾこそ伯爵本人に違いないというバジリオの言葉に、今夜中にもロジーナと結婚してしまおうと、彼に公証人を呼びに行かせる。そしてロジーナにはアロンゾが持って来た手紙を見せて、リンドロは不実者でロジーナを口説いて伯爵に売り渡すつもりだったと説明する。リンドロと伯爵が同一人物だとは知らないロジーナは、その話を信用してバルトロとの結婚を承諾する。
外は嵐となるが、それが静まるとフィガロと伯爵が忍び込んで来る。バルトロの話を信用したロジーナは自分をもてあそんだリンドロをなじるが、リンドロは自分こそ伯爵だと打ち明けるので、ロジーナは誤解を解く。
そして伯爵はバルコニーにかけた梯子から逃げ出そうとするが、いつの間にか梯子が外されている。そこに公証人を連れたバジリオがやって来るので、伯爵はバジリオを買収して結婚証書を作ってしまう。バルトロが兵士を連れて戻って来た時はあとの祭りで、フィガロに無益な用心だったねと冷やかされる。伯爵がロジーナの全財産をバルトロに与えると言うので、彼も二人の結婚を承諾し、すべて円満に解決して幕となる。
Reference Materials
初演
1816年2月20日 1816年2月20日 アルジェンティーナ劇場(ローマ)
原作
ピエール・オーギュスタン・キャロン・デ・ボーマルシェの同名戯曲
台本
チェザーレ・ステルビーニ/イタリア語
演奏時間
第1幕92分、第2幕47分(アバド盤CDによる)
参考CD
●バルトリ、マッテウッツィ、ヌッチ/パターネ指揮/ボローニャ市立劇場管・唱(D)
●ベルガンサ、アルヴァ、プライ/アバド指揮/ロンドン響、アンブロジアン・オペラ唱(DG)
参考DVD
●ベルガンサ、アルヴァ、プライ/アバド指揮/ミラノ・スカラ座管・唱(DG)
ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止
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