メデア[全3幕]ケルビーニ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

M. L. Cherubini, Medea after 1795
メデア[全3幕]ケルビーニ作曲

 
登場人物

メデア(S) ジャゾーネ(T) グラウチェ(S) クレオンテ(B) ネリス(Ms)他

 

概説

 パリで初演されたこのオペラは、フランス語が原語で題名も「メデー」だが、近年はイタリア語版によって上演されることが多い。長らく忘れられていた作品であるが、マリア・カラスの蘇演後、近年時々上演されるようになった。

第一幕

 コリントの王クレオンテの宮殿の中庭。今日は王女グラウチェの結婚式で、侍女たちが祝っている。しかし王女は、父王によって婿と定められたアルゴー号冒険隊の隊長ジャゾーネが、かつて金羊毛を取りにコルキスへ行った時にめとった前妻の魔女のような王女メデアの存在が気になってならない。彼女が愛の神に誓い終わったところにクレオンテがジャゾーネを伴って現れ(「ああ、愛の神よ来て」)、娘グラウチェを優しく慰める。ジャゾーネは婚礼祝いとして、彼女のためにアルゴー号の戦利品の数々を運び込ませる。しかし人々がコルキスから奪った金羊毛と言うと、グラウチェはメデアを思い出して恐れおののく。ジャゾーネは心配する彼女に、もう前妻には会わないと誓い、前妻の子供二人と共に、新しい生活への決意を歌う。
 人々が愛の神に誓っている時、親衛隊長が、ヴェールを着けた見知らぬ女が来たと告げる。入って来たのはメデアで、彼女はヴェールを取って人々の前でジャゾーネの裏切りを責める。クレオンテはメデアを魔女と罵って彼女に立ち去るように言うと、グラウチェをかばって宮殿の中に入る。
 メデアとジャゾーネの二人が残ると、メデアは子供たちの母親として二人の生活のよりを戻そうと涙ながらに彼に訴える(「あなたの子供たちの母親は」)。しかしジャゾーネがその願いをかたくなに拒むと、態度を豹変させたメデアは、情けを知らぬ敵どもと厳しくジャゾーネを責め、二人は激しいやり取りを交わす。そしてメデアの呪いの中に、ジャゾーネは恐ろしい金羊毛の宿命を知る。
 

第二幕

 ヘラの神殿に通じるクレオンテの宮殿の回廊。宮殿から出て来たメデアは、侮辱を受けて怒りを抑え切れないでいる。そこに彼女の侍女ネリスが現れ、人々がメデアの血を求めて宮殿に殺到していると告げる。 クレオンテが現れて、メデアにただちにコリントから立ち去るよう命じるが、メデアはせめて一日の猶予をと王の足下にひれ伏して懇願する。初めは頑として応じなかったクレオンテも、メデアのたっての願いに、ついに一日だけの滞在を許可する。
 ネリスはクレオンテに逆らうのは止めるようメデアをなだめるが、呪いの言葉を投げかけてメデアは階段の上に崩れ伏すと、何か物思いにふける。それを見たネリスは深く同情して彼女と運命を共にする決意を歌う(「あなたと一緒に泣きましょう」)。
 我に返ったメデアが一日でジャゾーネに対する復讐の方法を考えているところに、当のジャゾーネが現れる。メデアは二人の子供を渡してもらえないなら、せめてここを去る前に子供たちに会わせて欲しいと怒りを抑えて懇願するので、ジャゾーネも彼女の情にほだされて、もう一度会わせることを約束して宮殿に戻って行く。メデアはうまく彼をだませたとほくそ笑む。
 メデアはネリスに子供たちを連れて来るように頼み、婚礼の祝いとしてグラウチェに届ける魔法のかかった立派な王冠と打ち掛けを用意するように命じる。やがて国王クレオンテを先頭に、新郎新婦と神官や宮殿の人々が回廊を抜けてヘラの神殿に入って行く。婚礼の厳かな聖歌が聞こえてくると、メデアは復讐の時は近いと叫ぶ。


第三幕


 クレオンテの宮殿の傍らの神殿の前の丘。ネリスが宮殿からメデアの二人の子供を連れて来ると、メデアは子供たちにグラウチェに届ける王冠と打ち掛けを持たせて宮殿に向かわせる。メデアは丘の上から復讐の成功を地獄の神に祈る(「地獄の神々よ来たれ」)。
 祝いの品を届けた子供たちがネリスに連れられて戻って来ると、メデアは子供たちの目がジャゾーネの目つきに似ていると叫んで短剣で子供たちを殺そうとするが、誇り高い彼女は母性愛からどうしても子供たちを殺せない。ジャゾーネに対する憎悪と子供の母親としての愛情にメデアの心は揺れる(「私の心をくじく誇り高き苦しみには」)。  メデアはネリスから、グラウチェが喜んで祝いの贈り物を受け取り、もうすぐ王冠をかぶる頃だと聞くと、致命的な毒で間もなくグラウチェは死ぬだろうと言う。ネリスは恐れおののき、子供たちを引き連れて神殿の中に駆け込む。一人になったメデアは自分の優柔不断で臆病な心を嘆き、ジャゾーネの子に母親としての憐れみをかけていては復讐は達成できないと歌う。
 その時宮殿の中から絶望的な恐怖の叫びが聞こえて来る。王冠と打ち掛けに仕掛けてあった毒によってグラウチェが死んだことを告げる人々の叫び声である。ジャゾーネの悲しみの声が聞こえて、人々は「腹黒いメデアに死を」と叫ぶ。
 それを聞いたメデアは計画が予定通り運んでいると知り、ますます復讐の鬼と化して子供たちを殺そうと宮殿に入って行く。しばらくすると、メデアは血のついた短剣を手にして宮殿から現れ、「復讐は終わった」と呆然自失のジャゾーネに言う。そして宮殿に火を放って自らその炎に包まれ、人々は恐怖に逃げ惑う。

 



Reference Materials

初演

1797年3月13日 フェイドー劇場(パリ)

原作

エウリピデス/ギリシャ悲劇。ピエール・コルネイユ作とされることもある

台本

フランソワ・ブノワ・ホフマン/フランス語

演奏時間 
第1幕51分、第2幕33分、第3幕15分
(セラフィン盤CDによる)

参考CD
● カラス、スコット、ピラッツィーニ、ペンノ、モデスティ/セラフィン指揮/ミラノ・スカラ座管・唱(EMI)
●グルベローヴァ、シコフ、アガーケ/ボニング指揮/ロンドン響、アンブロジアン・オペラ唱(T)

参考DVD
● デヴィーア、アルバレス、ブルゾン/サンティーニ指揮/東京フィル、藤原歌劇団唱(LV)

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  




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