秘密の結婚[全2幕] チマローザ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

D. Cimarosa, II Matrimonio Segreto 1791~92
秘密の結婚[全2幕] チマローザ作曲

 
登場人物

ジェロニモ(B) エリゼッタ(S) カロリーナ(S) フィダルマ(A)  ロビンソン伯爵(B) パオリーノ(T)

 

概説

 チマローザは1791年末からごく短期間ウィーンの宮廷楽長に就いたが、このオペラはその在任中に初演されて好評を博した。その後ヨーロッパ各地で盛んに上演された。オペラ・ブッファの名作で、チマローザの代表作でもある。

第一幕

 第一場 金持ちの商人ジェロニモの家の居間。ジェロニモの次女カロリーナと、ジェロニモの店の若い使用人パオリーノが話をしている。二人は既に秘密裏に結婚しているが、カロリーナは早く晴れた仲になりたいと言うのに対し、パオリーノはカロリーナの姉エリゼッタと自分の知人ロビンソン伯爵との結婚をうまく取り持ち、その手柄で自分たち二人の仲を認めてもらおうと目論んでいる。
 貴族との縁組で家の格を上げたいと思っているジェロニモは、パオリーノの話を聞いて大喜びし、家中の者を集めてこの話を発表する(「みんな聞いてくれ」)。エリゼッタは早くも伯爵夫人気取りで妹をあしらうので、姉妹は言い争いになるが、それを止めに入った叔母フィダルマも、実は再婚を考えているとエリゼッタに告白し、自分はこの家の女主人だと歌う(「私はこの家の女主人」)。
 第二場 やがてパオリーノが伯爵を連れて来て皆に紹介するが、伯爵は形式ばったことは必要ないと答える(「どうぞお構いなく」)。そして一目見てエリゼッタよりカロリーナの方を気に入ってしまい、てっきりカロリーナを花嫁と思い込んで彼女に求婚するが、花嫁はエリゼッタの方だと言われてショックを受ける。一同それぞれが複雑な気持ちを歌う。
 第三場 ジェロニモの家の居間。パオリーノは一人カロリーナに対する愛を歌い、これ以上秘密を保てないと独白しているところに伯爵が入って来る。伯爵が結婚の相手はどうしてもカロリーナでなくては嫌だというので、困惑したパオリーノは部屋を出て行く。そこにカロリーナが現れるので、伯爵は彼女を口説きにかかる。しかし彼女は、自分は貴族の妻にはふさわしくないと言って立ち去る(「失礼します」)。
 第四場 ジェロニモの家の内庭。エリゼッタは伯爵に少しも相手にされないのを嘆き、ジェロニモとフィダルマに慰められている。そこにパオリーノが祝宴の準備ができたと呼びに来るので、皆は出て行く。入れ違いに伯爵とカロリーナが入って来る。なおも執拗に求婚する伯爵に対して、カロリーナは姉の方を考えて欲しいと言うが、伯爵はまったく取り合おうとしない。
 その様子を見ていたエリゼッタが、裏切り者と叫んで現れ、このことを町中に言いふらしてやると騒ぎ立てる。そして、戻って来たフィダルマにエリゼッタは妹の裏切りを訴える。やがてジェロニモやパオリーノも現れるが、皆がそれぞれ勝手なことを言うので、何が何だかわからない混乱の中に幕となる。

 

第二幕

 第一場 ジェロニモの家の居間。ジェロニモが、事の成り行きがわからないとつぶやいているところに、伯爵が入って来る。伯爵はエリゼッタとは結婚しないと言うので、ジェロニモはカンカンになって怒る。しかし伯爵が、代わりに妹のカロリーナと結婚できるなら持参金は半分で良いと言うので、ジェロニモは持参金は節約できるし体面も保てると、この結婚を了承する。そしてエリゼッタを説得するために立ち去る。
 伯爵からこの話を聞いたパオリーノは、いつも優しくしてくれるフィダルマに助けを求めようとするが、逆に年増女フィダルマから強引に言い寄られてショックで気を失ってしまう。しかしフィダルマは、彼が喜びのあまり倒れたものと勘違いしてカロリーナを呼ぶ。フィダルマに抱かれた彼を見て、カロリーナは彼が浮気をしたものと誤解してびっくりする。
 フィダルマが気付け薬を取りに行っている間に息を吹き返したパオリーノから事情を聞いても、カロリーナは信じることができない。戻って来たフィダルマは、口づけしようとパオリーノに手を差し出すので、さすがに彼も彼女の老いらくの恋に呆れる。フィダルマが去ると、パオリーノはカロリーナに向かって、愛の証しのために今夜にも駆け落ちしようと話を持ちかける(「夜が明ける前に逃げよう」)。
 第二場 エリゼッタの部屋。一方、伯爵はエリゼッタに嫌われようとして、自分は浮気者で気違いじみた男だなどと彼女が嫌がるようなことを色々と言って立ち去る。伯爵と入れ違いに現れたフィダルマは、じゃま者のカロリーナを一時修道院に入れてしまおうとジェロニモを説得してしまう。
 第三場 ジェロニモの家の居間。カロリーナが修道院入りを父から命じられて嘆き悲しんでいるところに伯爵がやって来て、彼女を慰めて口説く。そこに皆が現れて浮気なカロリーナを責め、エリゼッタは伯爵の浮気は許さないと言う。皆が去って一人残ったエリゼッタは伯爵を許し(「仕返しできたから満足です」)、きっとあの人を自分のものにしようと独白する。
 第四場 ジェロニモの家の応接間。夜遅くなってパオリーノはカロリーナの部屋に忍び込み、彼女の手を取って駆け落ちしようと部屋から出て来るが、人の気配に部屋へ戻る。それは伯爵を見張りに来たエリゼッタで、妹の部屋からヒソヒソ話が聞こえるので、てっきり伯爵が室内にいるものと思って大声で皆を呼ぶ。
 ところが部屋から出て来たのはパオリーノとカロリーナで、二人は既に密かに結婚していると白状して許しを請う。ジェロニモは憤慨するが、伯爵とフィダルマがとりなすと、伯爵は自分はエリゼッタと結婚すると宣言する。ジェロニモは皆に翻弄されたことを怒りながらも、二組の結婚を認める。一同晴れの結婚式を祝い、めでたく幕となる。

 



Reference Materials

初演
1792年2月7日 ウィーン宮廷劇場

原作

ジョージ・コールマン、デイヴィッド・ギャーリック共作の同名戯曲

台本

ジョヴァンニ・ベルターティ/イタリア語

演奏時間

第1幕89分、第2幕77分(下記CDによる)

参考CD
● ヴァラディ、ハマリ、フィッシャー=ディースカウ/バレンボイム
指揮/イギリス室内管(DG)

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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