金持ちで独身の頑固な老人ウベルトの居間。部屋では下男のヴェスポーネがのろのろと掃除をしている。寝間着姿のウベルトは、毎朝飲むチョコレートを今日に限って女中のセルピーナが三時間半経っても持って来ないのにいらいらしている。幼い時から育ててやったのに今ではまるで女主人のように威張っていると憤慨して、下男に催促に行くように命じる。
　やがて現れたセルピーナは、催促に対し平然として、今日はもうお昼近いから、朝のチョコレートは飲んだことにしましょうとウベルトの言うことに取り合おうとしない。ますます頭に来たウベルトは、今に後悔する時が来るぞと怒鳴り散らす（「お前と私はいつも考えが違う」）。
　そして、うるさい女中を置いて外出しようと、帽子と杖を持って来るよう命じる。セルピーナはそれを押し留めようとするので、ウベルトは仕事に口出しをするなと怒るが、セルピーナは出かけて欲しくないと言って押し問答になる。
　セルピーナはウベルトを手玉にとろうと、静かにしているあなたの方が好きだなどと言うので（「おこりんぼさん」）、ついにかんしゃくを爆発させたウベルトは、自分は結婚するからお前は出て行けと言う。
　するとセルピーナは、結婚するなら私としましょう、と言ってウベルトの気を引く。セルピーナは、私はあなたと結婚することに決めていると言うので、ウベルトは、悪魔よりもうわ手な女だと言い返す。しかし、「口では嫌と言っても目が私を好きだと言っているわ」と言うセルピーナと愉快な二重唱となる。

第二部

　同じ部屋の中、その日の午後。策を弄して金持ちのウベルトの妻の座を狙うセルピーナは、まずヴェスポーネを味方に引き入れようとする。セルピーナはヴェスポーネに、「自分の言う通りにすれば欲しい物を何でもあげる」と言って、彼に大尉の軍服を着せ、大きな髭をつけて自分の婚約者に仕立てる。
　そこにウベルトがそろそろ外出しても良いころだろうと着替えて出て来るので、セルピーナは「長い間お世話になりましたが、婚約者の大尉が訪ねて来て急に結婚することになりました」と挨拶する。そして、婚約者は雷大尉と呼ばれるほど気性の激しい人だから、彼を怒らせると何をするかわからないとウベルトを脅かす。
　そしていかにも悲しそうに、いつまでも私を忘れないで下さいとしおらしく歌うが（「セルピーナのことを忘れないで」）、このアリアの間に、細工は流々と独白する。
　ウベルトは徐々にセルピーナに惹かれはじめ、彼女を手放すのが惜しくなってくる（「俺の頭はどうかしたのかな」）。そこにセルピーナが大尉に化けたヴェスポーネを連れて来る。 セルピーナは大尉の通訳をするふりをして、ウベルトに親代わりとして莫大な持参金を要求する。セルピーナは、もし持参金を出さないならセルピーナを嫁にしろと大尉が言っていると脅かし、大尉は刀を抜いて暴れる身振りを見せる。
　それを見て恐ろしくなったウベルトは、セルピーナと結婚すると言ってしまう。そしてセルピーナが用意していた聖書に手を置いて誓いを立てる。するとセルピーナは、計略がうまく行ったと言って、大尉に扮したヴェスポーネの扮装を取る。
　ウベルトは彼女に謀られたと知るが、すっかりセルピーナの魅力のとりこになっていたので結婚に同意し、軽妙な愛の二重唱を歌って幕となる。