ポッペアの戴冠[プロローグと全3幕] モンテヴェルディ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

C. Monteverdi, L’Incornazione di Poppea 1642
ポッペアの戴冠[プロローグと全3幕] モンテヴェルディ作曲

 

登場人物

ネローネ(S、T) オッターヴィア(S) オットーネ(A、C-T) ポッペア(S)  ドルシルラ(S) アルナルタ(A、T) セネカ(B) 幸運・美徳・愛の三女神(S3人)他

 

概説

 モンテヴェルディ最後のオペラであり、彼の手法が大成された傑作。人間らしいドラマが繰り広げられている点で、オペラとして「オルフェオ」を上回る魅力を持っている。

プロローグ

 幸運・美徳・愛の三人の女神が現れ、それぞれの力について論争する。最後に現れた愛の女神が、自分こそ最高の力を持っていて、自分の手で全世界が変わってしまうことをお見せしましょうと言う。

第一幕
 

 第一場 ポッペアの屋敷の外。ローマの将軍オットーネが夜明け前に戦地から帰還すると、屋敷の門前で皇帝ネローネの衛兵が居眠りしているので、妻ポッペアの不貞を察して愕然とする。衛兵が目を覚まし、ポッペアに見送られてネローネが出て来る。ネローネは皇后オッターヴィアと離婚して、ポッペアを皇后にする約束をして帰る。
 第二場 ポッペアの屋敷の中。ネローネが去った後、ポッペアの乳母アルナルタはポッペアに皇后になる野心をいさめ、オッターヴィアが既にネローネとポッペアの関係を感づいて復讐を狙っているから気をつけるように言う。ポッペアが笑って気にとめないので、アルナルタはさらに注意を与えて去る(「あなたは狂っているわ」)。
 第三場 皇帝の宮殿。オッターヴィアが夫の浮気を嘆いている(「捨てられた皇妃」)。乳母が慰め、復讐にオッターヴィアにも浮気を勧めるが、彼女は自分は潔白でいたいと言う。オッターヴィアは哲学者のセネカに、ネローネへの忠告を依頼するが、忍耐が必要だと説かれるので神殿へ祈りに向かう。セネカの前に女神パラーデが現れ、セネカの死を予言して去る。そこにネローネが来て、「オッターヴィアは子供ができないし冷たい女だから」と離婚してポッペアと結婚する意志をセネカに伝える。セネカがそれをいさめると、ネローネは彼に宮廷から出て行けと言う。
 第四場 ポッペアの寝室。再びポッペアを訪ねて来たネローネは、間もなく皇后にしてやると告げる。ポッペアは喜ぶが、セネカの存在が気になると言う。するとネローネは衛兵を呼んで、今日中に自殺するようセネカに伝えろと命じる。
 第五場 ポッペアの屋敷の外。オットーネはバルコニーにいるポッペアに向かって、夫の代わりに皇帝を家に入れる悲嘆を訴えるが、ポッペアは相手が皇帝だからしかたないと言って中に入ってしまう。そこにオッターヴィアの侍女ドルシルラが言い寄って来るので、オットーネは心を動かされるが、まだポッペアを忘れられない。

 

第二幕


 第一場 
セネカの家。セネカが瞑想にふけっていると、神々の使者メルクリウスが現れて死を予言する。間もなく皇帝の衛兵長が訪れ、皇帝からの自殺命令を告げるので、セネカは命令に従うと返答する。そして家族や友人たちの制止も聞かずに(「死ぬなセネカ」)、彼らに別れを告げ、浴槽の中で血管を切って自殺する。
 第二場 宮殿の庭。小姓が若い女官と戯れている。女官ははじめ小姓を子供呼ばわりするが、ついに仲良くなる。
 第三場 
宮殿の中。セネカの死を祝う宴会が開かれている。ネローネは廷臣ルカーノと愛の歌を歌い、ポッペアの美しさをたたえる。ポッペアもネローネと喜びを歌う。
 第四場 宮殿の部屋。不貞の妻ポッペアを殺そうと思いながら、まだ彼女を愛しているためにためらっているオットーネに、オッターヴィアはポッペアを殺すように命じる(「あなたは私の祖先から」)。そこにやって来たドルシルラの衣裳を借りて変装したオットーネは、ポッペアを殺しに向かう。
 第五場 宮殿の庭。セネカの死によって皇后になる希望に胸が高鳴るポッペアは、愛の女神に祈りを捧げてまどろむ(「セネカが死んで」)。乳母アルナルタが優しく子守歌を口ずさむと、ポッペアは深い眠りに入る。愛の女神が天から降りて来て、危険も知らずに寝ている彼女を守ってやろうと言う。
 そこにドルシルラの姿に女装したオットーネが忍び込んでポッペアを暗殺しようとするが、愛の女神に遮られ、ポッペアは目を覚ましてアルナルタを呼ぶ。オットーネは逃げ、アルナルタがその後を追う。
 

第三幕

 
 第一場
 路上。何も知らないドルシルラが幸福そうな様子でいると、オットーネを追って来たアルナルタと警官が、彼女をポッペア暗殺未遂の犯人と思い込んで逮捕する。オットーネを愛している彼女は事情を察して、彼の身代わりになって死ぬことを決意する。
 ネローネはドルシルラの死刑を命じるが、そこに現れたオットーネは、自分が真犯人だと名乗り、二人はかばい合う。それを聞いたネローネは二人に国外追放を命じ、この事件に関わりがあるとしてオッターヴィアも永久追放にする。ネローネとポッペアはすべての障害が取り除かれ、一緒になれる喜びを歌う。
 第二場 宮殿。オッターヴィアはローマを去るのを嘆き悲しんで宮殿を去る(「さらば、ローマよ」)。アルナルタは今日ポッペアの戴冠式が行われ、自分もただの乳母から王妃付きの女官になれると喜ぶ。戴冠式が盛大に執り行われ、役人たちが祝福する。ネローネとポッペアの愛の二重唱の中に幕となる。




Reference Materials

初演
1642年12月26日 サン・ジョヴァンニ・エ・パオロ劇場(ヴェネツィア)1642年12月26日 サン・ジョヴァンニ・エ・パオロ劇場(ヴェネツィア)

原作
プブリウス・コルネリウス・タキトゥス/「年代記」第14巻

台本
ジョヴァンニ・フランチェスコ・ブセネッロ/イタリア語

演奏時間 
プロローグ7分、第1幕79分、第2幕62分、第3幕43分(ガーディナー盤CDによる)

参考CD
●ハンチャード、マクネアー、オッター、チャンス/ガーディナー指揮/イギリス・バロック・ソロイスツ(Arc)
●ゼーダーシュトレーム、ドナート、バーベリアン、エスウッド/アーノンクール指揮/ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス(T)

参考DVD
● クロフト、シューマン、クールマン、ギャレ/ヤーコプス指揮/コンチェルト・ケルン(Art)
 

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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