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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より
イタリアオペラ
C. Monteverdi, Il Ritorno d’Ulisse in Patria 1640
ウリッセの帰還[プロローグと全3幕] モンテヴェルディ作曲
❖登場人物❖
ウリッセ(Br) ペネーロペ(Ms) テレマコ(T) エリクレーア(S) エウメーテ(T) ミネルヴァ(Ms) ジョーヴェ(T) ネットゥーノ(B) メラントー(S) イーロ(T) 他
❖概説❖
プロローグ
時はトロイ戦争後のギリシャ神話の時代。 時の神(テンポ)、愛の神(アモール)、運命の神(フォルトゥーナ)が現れて、人間は時、愛、運命に左右される弱い存在だと言って、神の力を誇示する。
第一場 ギリシャのイタカ島のウリッセの王宮。トロイ戦争に出征したまま不在の国王ウリッセの帰国を、貞淑な王妃ペネーロペが待ちわびている。乳母のエリクレーアがそれを慰めているが、出征から20年も経つので、王妃は多くの求婚者に再婚を促されている。侍女のメラントーは、王妃に彼らからの愛を受け入れるように勧める一方、自分は愛人エウリマコと密会している。
第二場 海と洞窟のある海岸。ウリッセはトロイ戦争中に海神ネプチューンの息子を殺したために父神の怒りを買い、幾多の苦難に逢ってようやく故郷のイタカ島に漂着した。そこに羊飼いに変身した女神ミネルヴァが現れて、宮殿では王妃が多くの求婚者に纏(まと)わりつかれていると告げる。ミネルヴァはウリッセを老いた物乞いに変身させて老羊飼いエウメーテの許に行くように命じ、自分はウリッセの息子テレマコをスパルタから連れ戻して来ると言う。
第三場 ウリッセの王宮。王妃は求婚者た ちに付き纏われるが、侍女メラントーの勧めにも拘らず貞操を守っている。
第四場 アレトゥーザの泉のほとり。年老いた羊飼いエウメーテのところに、求婚者たちの従者で大食漢のイーロがやって来て、ウリッセを馬鹿にして王宮での大食の楽しみをおどけて踊って立ち去る。そこにみすぼらしい老人姿に変身したウリッセが一夜の宿を乞いに来るので、エウメーテは快く客人を迎え入れる。老人は近くウリッセが戻って来ると言うのでエウメーテは喜ぶ。
第二幕
第一場 アレトゥーザの泉のほとり。ミネルヴァがウリッセの息子テレマコを連れて現れる。エウメーテはテレマコの帰還を知らせるために、彼の母親ペネーロペの許に赴く。 その間に天から閃光が光り、ウリッセは本来の王の姿に戻るので、二人は再会を喜ぶ。
第二場 ウリッセの王宮。王妃は求婚者た ちにしつこく取り巻かれている。そこにエウメーテが駆けつけてテレマコの帰還を知らせ、やがてウリッセも戻るだろうと言うが、 彼女はなかなか信用しない。求婚者の一人アンティノオは、王妃が自分になびかないのは、息子を待っているからだと思い、彼を殺そうと考える。
第三場 森の中。ウリッセが王宮に向かう途中にミネルヴァが現れて、王宮で王妃の婿選びの競技会が開かれるだろうと告げる。そこにエウメーテが戻って来て、ウリッセの帰還を伝えると求婚者たちが慌てふためいていたと報告する。
第四場 ウリッセの王宮。王妃はスパルタから戻ったテレマコを迎える。老人姿のウ リッセがエウメーテに伴われてやって来る。彼は大食漢イーロをたちまちねじ伏せて、王妃の再婚相手を決める競技会に参加する資格を得る。彼女は競技会の勝者と再婚せざるを得ないと観念して、夫ウリッセの持っていた弓で最も見事に射た者を夫にすると宣言する。しかし求婚者たちはことごとく失敗して、最後に残った老人ウリッセだけがやすやすと弓を引く。雷鳴と共に女神ミネルヴァが現れる。ウリッセは居並ぶ求婚者たちを弓で次々と射殺す。
第三幕
第一場 王宮の外。もう宮廷で寄食できなくなったイーロはショックで自殺する。
第三場 海の上。困ったミネルヴァは大神ジョーヴェに執り成しを頼むので、大神はウリッセを赦し、イタカの島に平和を取り戻すよう命じる。
Reference Materials
初演
1641年2月サン・カッシアーノ劇場(ヴェネツィア)
原作
ホメロス/「オデッセウス」
台本
ジャコモ・バドアーロ/イタリア語
演奏時間
プロローグ・第1幕 70 分、第 2 幕 70 分、第 3 幕 35 分(アーノンクール盤DVDによる)
参考CD
•レーラー、エリアッソン、ハンゼン、エグモント/アーノンクール指揮/ウィーン・コンツェントゥス・ムジクム、ダルムシュタット・ユース唱(T)
•ブレガルディエン、フィンク、ラルエット、ショッパー/ヤーコプス指揮/コンチェルト・ケルン(HMF)
参考DVD
•ホルヴェーク、シュミット、レンハルト、フッテンロッハー、アライサ/アーノンクール指揮/チューリヒ歌劇場モンテヴェルディ・アンサンブル(DG)
•カサロヴァ、レイ、ヘンシェル、ヤンコヴァー、モール/アーノンクール指揮/チューリヒ歌劇場シンティッラ管・唱(Art)