詳解オペラ名作217もくじはこちら
詳解 オペラ名作２１７ 野崎正俊 より
イタリアオペラ
C.Monteverdi, L'Orfeo 1606?
オルフェオ［プロローグと全5幕］ モンテヴェルディ作曲
❖登場人物❖
オルフェオ（T、Br） エウリディーチェ（Ｓ） シルヴィア（Ａ） プルトーネ（Ｂ） プロセルピナ（Ｓ） カロンテ（Ｂ） 音楽の精（Ｓ） 希望の精（Ms）他
❖概説❖
バロック・オペラ初期の傑作。美しい旋律と豊かな和声法により、それまでのオペラに対して劇的表現力が飛躍的に向上した。
プロローグ
音楽の精が、自分はどんなに乱れた心をも鎮めることができると言い、これから獣たちや地獄さえその願いに従わせたオルフェオの話をするためにやって来たと告げる。
第一幕
美しい野原。羊飼いやニンフたちがトラーキアの野に集まって、竪琴と歌の名手オルフェオとエウリディーチェの婚礼を祝って楽しげな歌と踊りを繰り広げている。
一人の羊飼いがオルフェオに、この喜びを楽しい歌にして欲しいと言うと、オルフェオは太陽に対して、幸せな恋人を得た証人になって欲しいと頼み、エウリディーチェを得た喜びを歌う（「天のばら、世のいのち」）。続いてエウリディーチェも口では表現できないほどの喜びを歌って応え（「わが喜びもいかばかりか」）、二人は互いに愛を確かめる。再び羊飼いやニンフたちがこの幸せを感謝しようと歌う。
第二幕
美しい野原。オルフェオや羊飼いたちが森や太陽をたたえ、祝福の歌や踊りを続けている。そこに突然エウリディーチェの友人シルヴィアが使者として現れる。彼女は羊飼いたちに歌を止めさせると、痛ましいことにエウリディーチェが髪を飾る花環を作るために友人たちと花を摘んでいる最中に、毒蛇にかまれて死んでしまったと言う（「ああ痛ましきこと、厳しくむごき運命よ」）。
オルフェオは驚き悲しみ、エウリディーチェは死んでしまったと嘆くと（「わが命なる君、逝きて」）、竪琴を持って、黄泉（よみ）の国に降りて地獄の王プルトーネの心を音楽で和らげ、妻エウリディーチェを返してくれるよう頼んでみようと決意する。そして、もしその願いが聞き入れられないなら、自分も妻と共に死の国に留まろうと言う。シルヴィアは、自分が知らせた不幸によってオルフェオをも悲しませたのを嘆き、自分も太陽の光の入らない洞穴にこもって生涯を送ろうと言う。羊飼いたちも悲しみの合唱を歌う。
第三幕
黄泉の国の入口にある三途（さんず）の川のほとり。オルフェオがエウリディーチェを取り戻そうと黄泉の国へ降りて行くと、希望の精が現れて彼を励ます。しかし、三途の川の渡し守カロンテは、冷たく彼の行く手をさえぎる。オルフェオが心から嘆願してもカロンテの心は動かないが（「力強き精霊よ」）、切々たる美しい訴えの歌に聴きほれるうちに眠ってしまう。その間にオルフェオは三途の川を渡ってしまい、精霊たちは彼の勇気をたたえる。
第四幕
黄泉の国。地獄の王プルトーネの妻プロセルピナは、オルフェオの歌と竪琴に感動して、彼の訴えを聞き入れるようプルトーネを説得する。ようやく心を動かされたプルトーネは、現世にたどり着くまで決してエウリディーチェを振り返って見ないという条件で彼女をオルフェオに返すことを認める。
オルフェオは竪琴の力をたたえながら地上へ向かうが、途中で物音がするので、妻が本当に後ろについて来ているか不安になって振り向く。するとオルフェオを叱責する精霊たちの声がして、エウリディーチェは嘆きながら黄泉の国へ連れ戻され（「ああ、余りにも優しく、痛ましいあの姿」）、オルフェオは光と自然の国へ引き戻される。精霊たちが、オルフェオは地獄には勝ったが自分の心に負けたと歌う。
第五幕
美しい野原。オルフェオが再び妻を失った悲しみを嘆くと（「山も嘆き、石も泣き」）、こだまの精がそれに応える。そこにオルフェオの父である太陽神アポロが天から降りて来てオルフェオを慰め励ますと、一緒に天国に昇って不滅の生命を与えようと告げる。二人は歌いつつ天に昇り、羊飼いたちはそれを見送りながらオルフェオの昇天をたたえる。
Reference Materials
初演
1607年２月24日 マントヴァ宮廷
原作
ギリシャ神話
台本
アレッサンドロ・ストリッジョ／イタリア語
演奏時間
プロローグ7分、第1幕17分、第2幕24分、第3幕25分、第4幕18分、第5幕15分（アーノンクール盤CDによる）
参考CD
● ハンスマン、コズマ、エグモント、バーベリアン、ヴィリゼック、片野坂栄子／アーノンクール指揮／ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス、ミュンヘン・カペラ・アンティクァ(T)
参考DVD
● レンスブルク、ジェルスタンハーパー、ジャルスキー／マルゴワール指揮／王宮大厩舎・宮室楽団（DEN）
＊欧文タイトル末尾の数字は作曲年をあらわしているので、初年の年度と異なる場合があります。
ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止
