楽器の事典ヴァイオリン 2章 オールド・ヴァイオリンの名器 28 ストラディヴァリとデル・ジェス

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ストラディヴァリとデル・ジェス

 ストラディヴァリの作る楽器は、音色も理想的で、しかも構造的にも美しくて完璧なものであった。
 しかし、1720年代の初めから1730年代の初めにかけて、彼のライバルとなった、ガルネリ・デル・ジェスの優れたヴァイオリンが出現した。もっとも、デル・ジェスの最も優れた楽器はストラディヴァリの死後に作り出されていたが、彼の大胆で荒っぽく作られ、しかも強大な音色を持つ楽器は、少なからず、ストラディヴァリを脅やかしたと想像される。
 そのため、ストラディヴァリの晩年の作品には、ハーフリングその他の構造は完璧ではないが -もっとも老齢が原因とも思われるがーその反対に、その音色は、デル・ジェスやブレッシアの楽器に似て、強大でしかも浸透性に優れた楽器が多い。ヴァイオリンの名奏者たちがこれらの晩年の作品を好んで使っているのもその理由によると想像される。
 もちろん、ストラディヴァリはデル・ジェスの楽器が、ずさんでいい加減に作られていたことは承知していたに違いない。しかし、彼の死後、つまり1737年以後に作られたデルージェスの強大な音色の楽器を察知していたとは考えられない。
 しかし、一方では、彼はスーパーマンであったので、デルージェスの将来を見透して、80代の終りになって、未来の音色、つまり情熱的で強大な音のヴァイオリンを次々と作り上げたとも考えられる。
 現在の強大なオーケストラの音量をバックに、ブラームスやブルッフのヴァイオリン協奏曲を弾くことは容易なことではない。
 この点では、デル・ジェスの楽器は最適なものであると云える。しかし、このヴァイオリンは、アマティの楽器のように、室内楽のクァルテットで、純粋で優美な音色を生み出すことは不可能である。


楽器の事典ヴァイオリン 1995年12月20日発行 無断転載禁止



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