楽器の事典ピアノ 第2章 黄金期を迎えた19世紀・20世紀 15

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[画像]時代によるハンマーの大きさの相違 1726年のクリストフォリのハンマー(上)と現在のピアノのハンマー(下)

プラスチックと軽金属の採用

 第二次世界大戦以後のプラスチック工業の発達は、ピアノのアクションの材質を次第に変化させてきた。オランダの「リッペン」およびアイルランドの「リンドナー」などのピアノはほとんどオールプラスチックのアクションを備えているし、多くのメーカーが軽金属やプラスチックの部品を使い始めている。
 しかし、アクションに限って、プラスチックの採用は、耐候性の上から考えて、極めて賢明なことで、他のプラスチックの楽器のように音質を低下させることはないであろう。


鍵盤とキー


 鍵盤が現在のような形態を整えたのは、500年から600年も昔であったと伝えられているので、鍵盤の改良の歴史としてはあまり注目すべき点はない。その材料が変わり、18世記の終わりまでは白黒が逆であったくらいである。
 だが、19世紀の初めまでは、ナチュラルのキーの先端とシャープのキーの先端との距離が短かった。その理由は、バッハの時代はフィンガリングに親指を使うことがほとんどなかったためであるといわれている。
 キーのタッチが軽ければ音が小さく、重ければ大きいものになる。その反面、キーの軽いピアノは弾きやすく、重い楽器は奏者が疲れる。
 1848年にショパンが演奏に使用したブロードウッドのピアノは当時のままでイギリスに保存されているが、この楽器の中央のCのキーの重さは2オンス半であり、この重さがショパンの好みであったことがわかる。その後、ナポレオン三世の頃からヨーロッパ各地に大きい演奏会用のホールが作られ、ピアノの音を強大にする必要が生じ、メーカーたちはタッチを次第に重くし、結局、キーの端で3ないし4オンスの重さのものまで現れた。
 なお、キーのタッチの重さはハンマーの重さに左右されるものであるが通常低音部が重く、高音部が軽くなるように調整される。

ハンマーフェルト

 ハンマーヘッドにハンマーフェルトが用いられるようになるまでには、さまざまな材料がテストされた、最初に羊が使われ、次に鹿の皮が用いられた。
 鹿の皮は特殊な工程でなめされると、耐久力はあったが、音質的には良い部分と悪い部分のむらが多く、厚さも一定でないため具合の悪いことが多かった。
 また、イギリスのモルトンという粗いウールの布も用いられたが、あまり良い結果ではなかったらしい。ハンマーヘッドを皮から現在のフェルトに変えたのはパリのパペである。彼は最初、帽子のフェルトでハンマーヘッドを作ったが、これは皮より弱く、すぐにボロボロになってしまったという。その後、さらに研究を重ねた末、1826年にフェルトの調整の明細なデータを含むパリのパテントを取っている。
 その他の材料としては、スポンジ、インディアンラバー、ティンダー(ほくち)、ダッタペルカ(マレー地方のアカテツ科の常緑喬木の樹液を乾燥させたゴム様物質)、コルク、圧縮したウサギの毛などが用いられたが、いずれもフェルトにはかなわなかったのである。
 なお、1827年にエドワード・ドッドがハンマーを包んだ皮をネジで締めたり緩めたりして、希望の音が出せるパテントを取っている。19世紀の後半まではフェルトの張られたハンマーはあまり一般的なものではなかった。
 1888年にハンマーの製造と、そのハンマーにフェルトをかぶせる企業がピアノ製造工業と分離した。そのためハンマーフェルトがポピュラーになったといわれている。

ペダル

 最初にラウドペダルが使用されたのは、1777年にロンドンのアダム・バイエルが作ったスクエアピアノで、この楽器はニュールンベルグの楽器博物館に保存されている。
 ペダルの最初のパテントを取ったのはブロードウッドで、1783年と記録にある。モーツァルトの遺品のピアノの中には、すでにペダルのついたものがあったという。
 なお、現在のピアノについているペダルは次のようなものである。

[ラウドペダル]フォルテペダル、ダンパーペダル、サスティニングペダルとも呼ぶ。右側にあるペダルのことで、このペダルを踏むことによりダンパーの機能を除き、ピアノの音を強く、長続きさせ、さらに美しくするものである。その理由は、ハンマーによって叩かれた弦以外の弦が共鳴して、いわゆるシンパセティック・バイブレーションが起きるからである。

(注)共鳴弦を利用して音を美しくする楽器には、ビオール、シタールなどのいろいろな楽器があるが、ピアノに共鳴弦をつける方法も考え出された。これは弦を張る際の余分な弦を利用するもので、最初のパテントはF・Wクラードが1821年に出している。彼の方法はブリッジからヒッチピンまでの弦のバックドロート(折り返して逆に引っ張ること)を利用したもので、彼はこれを「リバブレーションのためのブリッジ」と呼んだ。文章で書くとちょっとわかり難いが、要するにヒッチピンで折り返している部分の余分な弦の長さと張力を適当にして共鳴弦として役立てたのである。このアイディアは、ずっと後になって、スタインウェイのジュプレックススケールに応用されており、また、ブルッツナーは独立した半分の長さの共鳴弦をアリコートピアノに使っている。また、ブルッツナーのピアノでは、この方法で、3オクターブの範囲で共鳴弦を加え(オクターブハーモニックスがその音に加わることとなる)、特にソフトペダルを使用した際の音色を優雅で美しいものとしている。
(注)演奏者がピアノの音質を変える方法としてはペダルの使用以外にはない。その手段としては次の三つのものがある。(1)キーを叩く以前にペダルを踏む。(2)キーを叩くと同時にペダルを踏む。(3)キーを叩いた後にペダルを踏む。
(ソフトペダル)別名ピアノペダルともいう。このソフトペダルによってピアノの音をやわらかくする方法は次の三種類のものが考え出された。

1.ウナコルダ アイネザイテ、キーボードシフトとも呼ばれる。これはベートーヴェンの頃からあったもので、ソフトペダルを踏むことにより、キーブロックのストップまたはウェッジを持ち上げ、奏者の自由意志により一本または二本の弦だけを鳴らすように鍵盤とアクションをシフトできる方法である。現在はグランドピアノのソフトペダルの方式として用いられている。ベートーヴェンの時代には、ソフトペダルでは一本弦を鳴らすのが普通であったために、ウナコルダ、あるいはアイネザイテの記号が用いられていたが、この一本弦による演奏法が消滅してから長い年月がたち、現在のソフトペダルは低音部が一本弦、中音部と高音部は二本弦となっている。
2.チェレスタ ハンマーと弦との間にフェルトの布をはさんで音をやわらげる方法である。チェレスタ(鉄琴の発音装置を持つ有鍵楽器)に似た音が出るのでこの名称がつけられたのだろう。現在市販されている三本ペダルのアップライトの真ん中の弱音ペダルはこの装置に似ている。
3.ピアノ "フォルテ" "ピアノ" のピアノで、やわらかくという意味。この方法は、ハンマーと弦の間の打撃距離を短くして、音をやわらかくするもので、現在のアップライトピアノのソフトペダルはこれである。この方式に関するパテントは1851年にモンタールにより、また、1855年にレンツによって申請されている。
[ソステヌートペダル]ある一定の音だけを伸ばして、他の音を全部ダンパーで消すことのできるペダルである。このペダルは通常三本ペダルの中間におかれ、ある音を弾いた後にこのペダルを踏むと、その音だけがサスティーンし、他の音は普通に演奏できるという方式のもので、次のような利点がある。

 ☆コードの音を伸ばし、メロディの部分はペダルの妨げなしに鮮明な音で弾くことができる。
 ☆オクターブ以上離れたコードのカウンターベースの音を伸ばすことができるために、ワルツやマーチなどの演奏に好都合である。
 ☆アルペッジョの基音を伸ばすことができる。
 ☆普通のラウドペダルと共用してコードを伸ばした場合、これを放すと特殊な音色の変化が得られる。
 ☆ハーフダンピングが容易となる。
 このソステヌートペダルのついたピアノは意外に多い。スタインウェイ、ヤマハおよびカワイなどのグランドなどにもついている。この方式の最初のパテントは、1874年にフランスで "ハープの音の出るピアノ" として申請されているが、実際にこのペダルをピアノにつけたのはアメリカであるという。


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4本ペダルのピアノのために書かれた作品

 
改訂 楽器の事典ピアノ 平成2年1月30日発行 無断転載禁止


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