楽器の事典ピアノ 第1章 ピアノの生誕と発達の歴史 6 ドイツ

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[画像]ウィーンのアントン・ワルターが1785年に作ったグランドピアノ。ウォルナットのケースで脚が6本つき、ピアノ・ストップ、バズーン・ストップおよびダンパーの3個のニー・ペダルがつけられている。ワルターは、シュタインと同様に当時の傑出したピアノメーカーで、ハイドンと親交があり、ベートーヴェンのための楽器も作っているし、モーツァルトのピアノも作ったであろうと伝えられている。

ドイツ


 クリストフォリはイタリアで最初のピアノを作り出して名をあげたが、残念ながらあとが続かなかった。もちろん彼にも弟子はいた。そのうちのひとりであるフェリーニが1730年にスペインの女王であるエルザベッタ・ファーネスのために一台のピアノを作ったという記録があるが、それが最後で、ピアノの製造はイタリアからドイツへと移っていった。
 ドイツでは、クリストフ・ゴッドリーベ・シュレーターが1717年にハンマーのついた二種類のアクションを作り出しているが、彼はそのダウンストライク方式のアクションをパンタレオンと呼び、アップストライク方式のアクションをピアノフォルテと名付けた。
 彼の目標は、このアクションにチェンバロのように、ハープやリュートの音などが出るさまざまなストップをつけることにあり、後に外国のあるパトロンのために、このようなストップがついたアップストライク方式のアクションを使った楽器を作り上げたと伝えられている。
 また同時に、このパトロンの援助によってタンジェントアクションというものも発明している。このタンジェントアクションの例としてはシュマールが1769年に作った楽器があるといわれ、この頃にはクリストフォリのハンマーアクションはほぼ完成されたものになっていた。
 イタリアではチェンバロを改良してピアノを作り出したのであるが、ドイツではクラビコードを中心にしてピアノへの改造の研究が進められた。
 そのため、ピアノは長方形のものとなり、スクエアピアノへと発展していったのである。その初期のものはハンマーがキーの上に乗っており、そのヘッドが奏者の方を向いていた。つまりその位置はクラビコードのタンジェントとほぼ同じであったという。また、シャンクプロジェクトはキーの反対側でちょうつがいで止められ、キーを押し上げるとシャンクの端がレッジ(出っ張り)を押し上げる方式であった。このシステムは、さきに述べたシュロッターのアップストライクのアクションのアイディアから考え出されたものである。
 この変種として、アクションがキーの側面にピボットでつけられたものもあり、この場合、木のカプセルにハンマーバットをピボットでつけられたつけられたものもあり、この場合、木のカプセルにハンマーバットをピボットで止める方式であった。これはベルリンで作り出されたものである。
 ドイツのピアノはジルバーマンの弟子のシュタインがジャーキングレッジをエスケープメントに変えた時に長足の進歩を遂げている。そして、最終段階としてチェックがつけられた。これは彼の娘が考え出したと伝えられている。シュタインの息子と娘はその後ウィーンに移ったので、その頃からこの方式のアクションはウィーン式アクションと呼ばれるようになった。
 ピアノの形は、最初はチェンバロの形を受け継いでグランドピアノに似たものであったが、これが、ドイツで机の形のようなスクエアピアノとなり次いでアップライトの先祖のような形のものも作り出された。これはジラフピアノ、あるいはピラミッドピアノと呼ばれたが、その形がキリンやピラミッドに似ているためにつけられた名称であろう。この楽器はグランドピアノを縦にしてスタンドの上に乗せたようなもので、今にもひっくりかえりそうで、あまり優美なものではなかった。


ヨハン・ゴッドロップ・ワーグナーのスクエア・ピアノ.png
ジルバーマンの弟子であったヨハン・ゴッドロップ・ワーグナーが1783年に製作したルイ16世風の小型のスクエアピアノ。



ヨハネス・シュマールのピアノ.png
ヨハネス・シュマールが18世紀の半ばに作ったスピネット・スタイルのピアノ。弦と鍵盤はほとんど平行になっており、ウィーン形式のアクションがついていて、ハンマー・ヘッドは皮で覆われている。なお、各音に対して弦は一本しかないが、その反面5種類のストップがついている。






改訂 楽器の事典ピアノ 平成2年1月30日発行 無断転載禁止


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