友人フリッツ[全3幕] マスカーニ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

P. Mascagni, L’Amico Fritz 1890~91
友人フリッツ[全3幕] マスカーニ作曲

 
❖登場人物❖

スーゼル(S) フリッツ・コブス(T) ベッペ(S) ダヴィッド(Br)  フェデリーコ(T) カテリーナ(S)他


❖概説❖
 「カヴァレリア・ルスティカーナ」が空前のヒットとなったマスカーニの次作である。前作が懸賞応募作品として一幕ものという条件で書かれたのに対し、これは一転してのどかな田園劇をテーマにして作曲された。作品としての評価は「カヴァレリア・ルスティカーナ」を凌ぐことはできなかったものの、美しい二重唱やアリアによって知られている。


第一幕


 フリッツの家の食堂。金持ちの中年の農場主であるフリッツは独身主義者で、結婚は金もかかるし、嘆いたり悲しんだり煩わしいことばかりだと思っている。司祭のダヴィッドがやって来て、持参金のない若いカップルのために金を貸してやってくれと言う。フリッツは、お前は結婚のおせっかい焼きをしすぎると言いながらも、返済期限は自分の二百歳の時でよいと気前よく貸してやる。感謝する司祭はいつか君にもよい花嫁を世話してあげると言うが、フリッツはそんなことは真っ平だと答える。
 折からフリッツの四十歳の誕生日を祝いに独身主義者の仲間がやって来て一杯やろうと言う。そこに農場の管理人の娘スーゼルがスミレの花を摘んで祝いの挨拶に来る(「私の摘んだわずかな花を」)。一同が彼女に席を勧めて仲間に入れたところに司祭が戻って来る。ジプシーのヴァイオリン弾きベッペも旧友のダヴィッドに挨拶し、貧しい人に愛情を施すフリッツをたたえる(「ぼろを着た、ひもじい子どもたちが」)。家政婦のカテリーナが、スーゼルに迎えの荷馬車が来たと告げるので、彼女は帰る。美しいヴァイオリンの調べに感激するスーゼルの成長した姿を見て、司祭は彼女をすぐにもアルザス一の花嫁にしなければと言うので、フリッツはむきになって司祭を非難する。
 司祭は家庭を持つことの大切さを諭し、フリッツも近く結婚することになるだろうと言う。フリッツはそんなことはあり得ないと言って、司祭に自分のブドウ園を賭ける。そこに孤児たちがやって来て、フリッツの施しに感謝する。


第二幕


 農場の管理人の家の庭先。家にはフリッツが泊まっている。サクランボもちょうど熟したので、スーゼルはフリッツが早く起きて来てくれたら良いのにと思っている。百姓娘の歌声が聞こえ、スーゼルはフリッツに贈る花を摘みながらアルザスの民謡を歌い(「騎士は森へお出かけで」)、自分のロマンスと重ね合わせる。歌声に目覚めたフリッツが現れるので彼女は花束を渡し、熟れたサクランボを差し出す。彼女は梯子にのぼってサクランボを摘むと、それを下にいるフリッツが受け取り、二人はしばしの幸福に浸る(サクランボの二重唱「真っ赤に熟れて珠のよう」)。
 やがて馬車の音がして司祭やベッペ、フェデリーコなどの友人たちがやって来る。フリッツは皆を農場に案内しようとすると、司祭は疲れているからと言ってそこに残るが、フリッツの生き生きとした表情から恋を読み取る。彼は井戸に水を汲みに行くスーゼルに水を所望し、彼女に話しかける。そして聖書の中のレベッカの物語を引き合いに出して、彼女の心を探ろうと対話を続ける(二重唱「アブラハムは年を重ねて老い」)。
 そこにフリッツたちが戻って来るので、スーゼルは顔を真っ赤にして走り去る。司祭は彼女がフリッツを愛していることを確信し、フリッツにあの娘も近く花嫁になるさ、そして自分には相手の心当たりがあると言う。フリッツは、彼女はまだ子供でそんなことはないと怒り出して司祭を追い払い、自分がスーゼルを愛していることを自覚して激しく動揺する(「何か妙な不安が」)。心が乱れたフリッツはスーゼルの家から早く逃げ出そうと、友人たちが乗って来た馬車で農場を去る。その音を聞きつけた司祭とスーゼルは家から出て来る。司祭は彼を卑怯者と言い、スーゼルはもう彼は戻って来ないのではないかと嘆く。

  〈間奏曲〉


第三幕


 第一幕と同じフリッツの家の食堂。スーゼルに挨拶もせずに帰って来てしまったフリッツは、これまでの独身主義と初めて意識したスーゼルへの恋との間に悶えている。遠くからは水車小屋の娘の婚礼を祝う歌声が響いて来る。そこに仲間のベッペがフリッツの様子をうかがいにやって来て、フリッツが打ち沈んでいるのを見て恋をしているのを知る。
 ベッペは、彼を慰めようとして自分も悩んだことがあると語るが、かえって彼が苛立つのでしかたなしに帰って行く。再び一人になったフリッツは、もう恋心を隠そうとせずに美しいロマンスを歌って愛を讃美する(「おお恋よ、心の美しき光よ」)。そこに司祭がやって来て、スーゼルの結婚相手が決まって彼女の父親が今日フリッツに承諾をもらいに来ると告げる。激しく動揺した彼は、承諾を拒否すると言うと怒って出て行く。
 そこにスーゼルが悲しそうな顔つきで果物を届けにやって来る。司祭はもうすぐ笑顔が戻って来るよ、と彼女を優しく慰めて立ち去る。彼女が悲しそうに嘆いているとフリッツが現れ(悲歌「嘆きのために空しく」)、父親からの結婚話など断ってしまえと言う。彼女が涙ぐむのを見たフリッツは、ついに恋心を抑え切れずに彼女を抱きしめてしまう。
 こうして二人はようやく愛を確かめ合うが、そこに司祭が友人たちを連れて現れる。フリッツが司祭は賭けに勝ったので、ブドウ園はあなたのものだと言う。賭けに勝った司祭はブドウ園を花嫁のスーゼルに贈り、独身主義者の友人たちを冷やかす。司祭はその気になれば皆の面倒をみますよと言い、一同で愛をたたえる。




Reference Materials


初演

1891年10月31日 コスタンツィ劇場(ローマ)

原作 
エミール・エルクマン、アレクサンドル・シャトリアン共作/「友人フリッツ」

台本 
P. スアルドン(本名ニコラ・ダスプロ)/イタリア語

演奏時間 
第1幕27分、第2幕34分、第3幕32分(ガヴァッツェーニ盤CDによる)

参考CD
●フレーニ、パヴァロッティ、サルディネロ/ガヴァッツェーニ指揮/コヴェント・ガーデン王立歌劇場管・唱(EMI)
●タッシナーリ、ピーニ、タリアヴィーニ、メレッティ/マスカーニ指揮/RAIトリノ管・唱(WF)

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  




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