ファルスタッフ[全3幕]ヴェルディ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

G. F. Verdi, Falstaff 1890~92
ファルスタッフ[全3幕] ヴェルディ作曲

 
❖登場人物❖

サー・ジョン・ファルスタッフ(Br) フォード(Br) フェントン(T) 医師カイウス(T)  バルドルフォ(T) ピストラ(B) フォード夫人アリーチェ(S) ナンネッタ(S)  クイックリー夫人(Ms) ページ夫人メグ(Ms)他

❖概説❖

 ヴェルディ最後のオペラであるが、最初期の「偽のスタニスラオ」以来の彼二作目のオペラ・ブッファである。音楽と言葉が完全に一体化したドラマが繰り広げられる。初演は老大作曲家に対する敬意の込められた大喝采で包まれた。


第一幕



 第一場 ウィンザーにあるガーター亭の一室。ファルスタッフが二通の手紙を書き終えたところに医師カイウスが怒鳴り込んで来て、ファルスタッフと彼の二人の従者バルドルフォとピストラの悪行をなじるが、適当にあしらわれて追い返される。ガーター亭の亭主が飲食代の勘定書きを持って来るが、金のないファルスタッフは照れ隠しに従者たちを罵る。そして美しいフォード夫人アリーチェとページ夫人メグへの愛を歌い、二人に恋文を届けて、どちらかが手紙に引っかかれば金の心配はないと歌う。二人の従者にそれぞれ恋文を届けさせようとするが、彼らは騎士の名誉を盾に断るので、しかたなしに小姓を使いに出し、箒で二人の従者を追い回す。
 第二場 フォード家の庭先。ファルスタッフからの恋文を受け取ったアリーチェは、通りかかったメグも同じ文面の恋文をもらったのを知る。自尊心を傷つけられた二人は、不遜なファルスタッフを懲らしめようと約束して退場する。
 そこにファルスタッフに追い出された従者のバルドルフォとピストラ、それにフェントンを伴ったカイウスの四人がフォードとともに現れて、口々にフォードにファルスタッフの不行跡を告げる。ピストラはファルスタッフがアリーチェに恋文を送って、彼女のところに押しかけると話すので、フォードは怒り心頭に発する。女性たちもファルスタッフの計画を知って一同で彼に復讐を誓い、甘言で彼をおびき出すことにする。その間フェントンとフォードの娘ナンネッタの恋人同士は木陰に隠れて、束の間の甘い恋をささやく。


第二幕


 第一場 ガーター亭の一室。ファルスタッフがいつものように飲んでいると、二人の従者が偽りのわびを入れる。クイックリー夫人がうやうやしく現れ、ファルスタッフを慕うアリーチェが嫉妬深い夫の留守の二時から三時の間に彼を待っている、と伝言して帰る。
 ファルスタッフがすっかりご機嫌になっているところに(「行け、老練なジョン」)、フォンタナという偽名でフォードがやって来る。彼はアリーチェを口説いてもうまく行かないので、金は弾むからまず貴殿が彼女を陥落させてみて欲しいとファルスタッフに頼む。
 ファルスタッフは、お安いご用でもうデートの約束はできていると言い、着替えに立ち去る。フォードは妻の裏切りに自分の間抜けさを自嘲するが(「夢か現実か」)、正装したファルスタッフについて出かける。
 第二場 フォード家の一室。アリーチェがメグとおしゃべりをしているところにクイックリー夫人がやって来て、約束の時間にファルスタッフがやって来ると報告する。アリーチェがリュートを奏でているとファルスタッフが現れて彼女を口説きにかかり、自分は昔はもっとスマートだったと語り始める(「私がノーフォーク公の小姓をしていた時は」)。そこにメグが入って来て、怒り狂ったフォードが大勢の手下を連れてやって来ると知らせる。隠れ場所に困ったファルスタッフは、夫人たちの勧めるままに洗濯かごの中に身を潜める。フォードたちは衝立の陰の物音をファルスタッフかと思うが、それはフォードに隠れて逢い引きしているナンネッタとフェントンであった。怒ったフォードはさらに家中を調べさせるが、その間に夫人たちと召使たちはファルスタッフが入った洗濯かごをテムズ河に投げ込む。


第三幕


 第一場 ガーター亭の外。夕暮れ時、危うく溺れそうになったファルスタッフが酒を飲んで憂さを晴らしている(「おい亭主!乱世だ、裏切りの世の中だ」)。そこにクイックリー夫人がやって来て、アリーチェはあなたを愛しているというので、その言葉にだまされたファルスタッフは機嫌を直し、真夜中にウィンザー公園の樫の木での逢い引きを了承する。隠れて様子をうかがっていたアリーチェ以下の面々は今夜の打ち合わせをする。フォードは妖精の女王に仮装した娘ナンネッタをうまくカイウスと結婚させると彼に約束する。これを盗み聞きしたクイックリー夫人は、そうさせまいと急いで出て行く。
 第二場 深夜のウィンザー公園。フェントンが愛の喜びを情熱的に歌っている(「唇から流れる愛の歌」)。そこに緑色の妖精姿のナンネッタとアリーチェが現れ、フェントンに僧服を着せてフォードの裏をかく手はずを整える。
 真夜中の鐘の音とともにアリーチェの指示通りファルスタッフが現れ、アリーチェを口説きはじめる。そこに魔女がやって来ると言ってメグが飛び込んで来るので、迷信深いファルスタッフは身を伏せる。妖精の女王になったナンネッタが美しい歌を歌い(「秘密の抜け穴から」)、妖精や化け物に扮した皆でファルスタッフを痛めつけるので(「つねれ、刺せ」)、彼は悲鳴を上げて皆に謝る。
 一方フォードは、カイウスに白いヴェールを着けた妖精の女王の手を取らせて二人の結婚を発表するが、仮面の下の顔はナンネッタではなくバルドルフォであった。そこでアリーチェが「もう一組、緑色の妖精と僧服の男との結婚を」と言って仮面を取ると、ナンネッタとフェントンである。フォードも二人の結婚を認め、世の中すべて冗談と言うファルスタッフの言葉に続いて、全員がにぎやかに歌い、幕となる。




Reference Materials


初演

1893年2月9日 ミラノ・スカラ座

原作 
ウィリアム・シェイクスピア/「ウィンザーの陽気な女房たち」「ヘンリー4世」

台本
アリーゴ・ボーイト/イタリア語

演奏時間 
第1幕32分、第2幕43分、第3幕43分(トスカニーニ盤CDによる)

参考CD
●ヴァルデンゴ、ネッリ、シュティヒ=ランダル、メリマン/トスカニーニ指揮/NBC響、ロバート・ショウ唱(RCA)

参考DVD
●タッデイ、カバイヴァンスカ、ルートヴィヒ、ペリー、アライサ、パネライ/カラヤン指揮/ウィーン・フィル、ウィーン国立歌劇場唱(SONY)


ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  






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