オテロ[全4幕]ヴェルディ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

G. F. Verdi, Otello 1880~86
オテロ[全4幕] ヴェルディ作曲

 
❖登場人物❖

オテロ(T) デズデーモナ(S) イアーゴ(Br) ロドヴィーコ(B) カッシオ(T)  モンターノ(B) エミーリア(Ms) ロデリーゴ(T)他

❖概説❖

 すでに故郷で隠棲生活を送っていたヴェルディが、台本作家ボーイトの勧めによって再び作曲の筆を執った最晩年の傑作である。ワーグナーの作風さえ採り入れた密度の濃い劇的緊張感に圧倒される。
 オテロ役には、当時最高のテノールと謳われたフランチェスコ・タマーニョを想定して作曲された。


第一幕



 ヴェネツィア支配下のキプロス島の海岸。すさまじい嵐の中を、将軍オテロが率いるヴェネツィア船艦が戻って来る。人々が見守る中、やっと接岸した船の上にオテロは姿を現し、威厳ある声で敵を海に沈めて来たと叫んで城内に入る。
 オテロの旗手イアーゴは、恋人デズデーモナをオテロに奪われて落ち込んでいるヴェネツィア貴族ロデリーゴの肩を叩き、俺の代わりにカッシオを副官に任命したオテロには恨みがあるから力になろうと声をかける。
 たき火を囲んで戦勝の酒宴が始まり、イアーゴはカッシオに無理やり酒を勧めて泥酔させる。カッシオは前総督のモンターノに砦の見張りを命じられるが、千鳥足なので皆に嘲笑され、仲裁に入ったモンターノにさえも斬りかかる。イアーゴは騒ぎをあおりたてる。オテロが現れて騒ぎを収め、イアーゴの誹謗を信じてカッシオを副官から解任する。イアーゴはほくそ笑む。
 一同を去らせた後、オテロは後から駆けつけた妻のデズデーモナと二人きりになった夜ふけの海岸で、愛を語り合って優しく抱き合う(「すでに夜もふけた」)。


第二幕


 城内の庭園。イアーゴは副官を罷免されて気落ちしているカッシオに、デズデーモナに取りなしてもらうのが一番だと言い、彼女はいつも自分の妻エミーリアを連れて庭を散歩すると教える。カッシオが立ち去ると、イアーゴは自分の悪魔的な信条を冷酷そうに述べる(クレード「無慈悲な神の命じるままに」)。庭園の奥でカッシオがデズデーモナに話しかけている。その時オテロが現れるので、イアーゴはその様子をオテロに見せ、二人の仲に疑念を持たせるように仕向ける。
 島の娘や子供たちから花の贈り物を受けたデズデーモナは、オテロに近づいてカッシオの罪を取りなすが、嫉妬にかられたオテロは苛立って、デズデーモナが差し出した結婚記念のハンカチを投げ捨てる。彼女は夫に愛を訴えるが、その間にエミーリアが拾ったハンカチをイアーゴが奪い取る。
 一同を去らせたオテロは妻への疑念に苦悩するが、イアーゴは夢の中のできごととして、カッシオがデズデーモナを呼んでいた話や、デズデーモナのハンカチをカッシオが持っているなどと言うので(夢の歌「ある夜のこと」)、オテロは逆上し、忠誠を誓うイアーゴとともに激しい復讐の念に燃える(「神かけて誓う」)。


第三幕


 城内の大広間。オテロとイアーゴが話をしているところに、伝令がヴェネツィアの使節を乗せた船が到着したと知らせる。イアーゴはここにカッシオを連れて来て、不義の証拠を見せる算段をオテロに告げて去る。
 その時デズデーモナが現れ、またもカッシオの赦免を願うので、オテロはますます妻の不貞を信じて不快になり、結婚記念のハンカチの行方を問う。デズデーモナが持っていないとわかると、オテロは彼女を突き飛ばすように外へ追い出し、自分の不幸な運命を嘆く。そこにカッシオを連れたイアーゴが戻って来るので、あらかじめ打ち合わせた通りにオテロは物陰に隠れる。
 イアーゴはカッシオに彼の愛人ビアンカの話を持ち出すので、カッシオも笑いながらそれに答える。離れているので話がよく聞こえないオテロは、それがすっかりデズデーモナのことと思い込む。そして、いつの間にかイアーゴがこっそりカッシオの服の中に忍ばせておいたハンカチを、カッシオはそれとも知らずに取り出す。折りしもヴェネツィアの使節が到着したという知らせが届くので、イアーゴはカッシオを去らせる。
 物陰から出て来たオテロはデズデーモナの不貞を確信して、彼女を絞め殺すと言う。そしてイアーゴを副官に任命する。そこにロドヴィーコを大使としたヴェネツィアの使節が現れ、総督の命令書を渡す。オテロは自分のヴェネツィア召還と、その後任者はカッシオと読み上げるが、取りすがるデズデーモナをカッシオとの別れがつらいものと誤解し、激しく床に突き飛ばす。狂乱のオテロは一同を去らせると、逆上のあまり卒倒する。イアーゴはそれを見て勝ち誇る。外からはオテロ万歳の声が聞こえる。


第四幕


 デズデーモナの寝室。エミーリアに髪をすかせて寝支度をしたデズデーモナは、死を予感して昔聞いた「柳の歌」を歌い、「アヴェ・マリア」を唱えてベッドに入る。すると、忍び足で剣を持ったオテロが登場し、デズデーモナに軽く接吻する。
 目を覚ました彼女の抗弁に耳を貸さず、オテロは彼女の首を絞める。その時エミーリアが激しく扉を叩いて、カッシオを討とうとしたロデリーゴが逆に殺されたと入って来る。虫の息でつぶやくデズデーモナの声に驚いたエミーリアの叫び声で皆が集まる。
 エミーリアの話からハンカチの件が暴露され、ロデリーゴも死ぬ前にイアーゴの奸計を白状したとモンターノが皆に告げる。逃げ出そうとするイアーゴを一同は兵士に追わせる。すべてを悟ったオテロは、隠し持っていた短剣で自分の胸を刺し(オテロの死「私を恐れることはない」)、最後の口づけをしようとデズデーモナのベッドににじり寄る。




Reference Materials


初演 

1887年2月5日 ミラノ・スカラ座

原作
ウィリアム・シェイクスピア/「オセロ」台本 アリーゴ・ボーイト/イタリア語

演奏時間 
第1幕29分、第2幕40分、第3幕42分、第4幕28分(カラヤン盤CDによる)

参考CD
●テバルディ、デル・モナコ、プロッティ、コレナ/カラヤン指揮/ウィーン・フィル、ウィーン国立歌劇場唱(D)

参考DVD
●フレーニ、ヴィッカーズ、グロソップ、ファン・ダム/カラヤン指揮/ベルリン・フィル、ベルリン・ドイツ・オペラ唱(DG)
●フリットーリ、ドミンゴ、ヌッチ/ムーティ指揮/ミラノ・スカラ座管・唱(DEN)

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  




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