ロンバルディ[全4幕]ヴェルディ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

G. F. Verdi, I Lombardi alla Prima Crociata 1842
ロンバルディ[全4幕] ヴェルディ作曲

 
❖登場人物❖

ジゼルダ(S) オロンテ(T) パガーノ(B) アルヴィーノ(T)  ヴィクリンダ(S) ピルロ(B) アッチャーノ(B)他

❖概説❖

 粗けずりながら、ヴェルディの初期の作品に共通する力強い作風がみられる愛国的なオペラである。初演の成功後、イタリア各地で相次いで上演されたが、1847年「イェルサレム」と改題改訂されて行われたパリ・オペラ座での上演は、さして成功を収めることができなかった。正式な作品名は「第一次十字軍のロンバルド人たち」であるが、イタリアでは通常「ロンバルディ」と呼ばれる。

第一幕「復讐」

 第一場 ミラノの聖アンブロージョ広場。領主フォルコの二人の息子、アルヴィーノ、パガーノ兄弟は、かつて美しいヴィクリンダをめぐって争った末、ヴィクリンダを得た兄アルヴィーノに弟パガーノは追放された。本日、聖地巡礼を終えてパガーノが戻って来たので、市民は二人の和解を祝っているが、パガーノの暗い目つきから、彼がまだヴィクリンダを妻にした兄を恨んでいることをアルヴィーノや市民は悟る。
 司祭の呼びかけで、アルヴィーノがロンバルディの十字軍の指揮官に選ばれ、人々も勇み立つ。舞台裏から修道女たちの祈りの声が聞こえ、一人残ったパガーノは、手下の刺客たちとアルヴィーノを暗殺しようと気勢をあげる(「おお、復讐への喜びよ」)。
 第二場 フォルコ宮の回廊。ヴィクリンダが娘ジゼルダと、パガーノの恐ろしい顔つきを心配していると、現れたアルヴィーノが優しく慰めて立ち去る。ジゼルダは母とともにひざまずいてマリアに祈って寝室に去る(「ああ、聖なる乙女よ、私は祈ります」)。
 従者ピルロの手引きで刺客とともに兄の部屋に忍び込んだパガーノが、血塗られた刀を持ってヴィクリンダを寝室から引きずり出す。彼女の助けを求める声にアルヴィーノが姿を現すので、パガーノは兄と間違えて父フォルコを殺したことを知る。そして今度は永久追放される。


第二幕「洞窟の人」


 第一場 アンティオキアの国王アッチャーノの館。アッチャーノはヨーロッパのキリスト教徒の十字軍が攻めて来ると聞いて、廷臣たちとアラーの神に加護を祈る。
 アッチャーノの王子オロンテは、母にハーレムに捕らえてあるキリスト教徒のジゼルダを愛してしまったと告白する(「私の喜びを」)。すでに密かにキリスト教徒に改宗している母は、息子もジゼルダと一緒になるためにキリスト教に改宗する気があることを知って喜ぶ。
 第二場 山の洞窟。素姓を隠して行者になったパガーノが洞窟の中から姿を見せ、十字軍の到来を祈っている。やはり追放されて今はアンティオキアの城門番になっているピルロが現れるので、十字軍が攻めて来たら城門を開けるように諭す。
 アルヴィーノが十字軍の兵士たちを引き連れて入城して来て、洞窟の前にいる行者に、それがパガーノとも知らずに敵に奪われた娘の奪回について相談する。行者はきっと娘に会えると言い、二人は聖地奪回を誓い、十字軍の兵士たちも異教徒を攻めるため勇躍イェルサレムへ向かう。
 第三場 アンティオキアのアッチャーノのハーレム。女奴隷たちがジゼルダの美しさをたたえるが、捕らわれの身のジゼルダは亡くなった母を偲んで歌う(「たとえ祈りが無駄であっても」)。そこに行者に導かれたアルヴィーノと十字軍の兵士たちが侵め入って来る。
 ジゼルダは父との再会を喜ぶが、血塗られた父の姿を見て、それは神の本意ではないと叫ぶ。怒ったアルヴィーノは娘を刺そうとするが、皆は彼女は理性を失ったのだと、アルヴィーノを押しとどめる。


第三幕「改宗」


 第一場 遠くにイェルサレムを望むジョザファットの渓谷。イェルサレムを目指す巡礼や十字軍の兵士たちの行列が通り過ぎると、アルヴィーノの陣営から脱出して来たジゼルダが現れる。
 彼女の後を追って来たオロンテが姿を現すので、ジゼルダは死んでしまったと思っていた彼との再会を喜び、二人は熱く燃えるような愛を訴える。そこに遠くから十字軍の兵士たちが追って来るので、二人は誰も自分たちを引き離せないと叫ぶ。
 第二場 アルヴィーノの陣営。アルヴィーノが家名を汚したジゼルダに激怒しているところに、十字軍の騎士たちがパガーノを発見したと知らせに来るので、彼はますます怒ってパガーノを成敗してやると叫ぶ。
 第三場 ヨルダン川の岸辺の洞窟。ジゼルダは、致命傷を負ったオロンテを介抱しながら過酷な運命を呪う。そこにパガーノが現れ、オロンテにキリスト教の洗礼を与えると、オロンテは喜びの中に息を引き取る(「ここに身体を休めよ」)。


第四幕「聖なる墓」


 第一場 イェルサレムに近い洞窟。ジゼルダは夢の中で、精霊たちに囲まれたオロンテが法悦に浸っているのを見る。夢から醒めた彼女は「夢ではなかった」と感動に浸る。
 第二場 ラケルの墓のそばの十字軍の陣営。イェルサレムへ侵攻する十字軍の兵士と巡礼者たちは故郷を想って歌い、聖地解放を願う(「おお主よ、ふるさとの家々を」)。そこにパガーノに伴われたジゼルダが父アルヴィーノの軍勢に戻る。「聖なるシロエの泉!」の掛け声とともに一同聖地へと向かう。
 第三場 アルヴィーノの陣営。戦いで瀕死の重傷を負ったパガーノは、アルヴィーノに自分が弟パガーノであると告白して、兄の許しを請う。アルヴィーノも固く抱擁してパガーノを許し、一同神に勝利を祈る。



Reference Materials


初演
1843年2月11日 ミラノ・スカラ座

原作 
トンマゾ・グロッシの同名長篇叙事詩

台本
テミストークレ・ソレーラ/イタリア語

演奏時間 
第1幕32分、第2幕40分、第3幕31分、第4幕26分(レヴァイン盤CDによる)

参考CD

● ドイテコム、ドミンゴ、ライモンディ/ガルデッリ指揮/ドイテコム、ドミンゴ、ライモンディ/ガルデッリ指揮/ロイヤル・フィル、アンブロジアン・オペラ唱(PH)
●シャシュ、ランベルティ、コヴァーチュ/ガルデッリ指揮/ハンガリー国立歌劇場管、ハンガリー放送唱(HUNG)
●アンダーソン、パヴァロッティ、レイミー/レヴァイン指揮/メトロポリタン歌劇場管・唱(D)

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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