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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より
イタリアオペラ
G. F. Verdi, Nabucco 1841
ナブッコ[全4幕] ヴェルディ作曲
❖登場人物❖
ナブッコ(Br) アビガイッレ(S) ザッカリア(B) イズマエーレ(T) フェネーナ(Ms) アンナ(S)他
❖概説❖
第一幕「イェルサレム」
イェルサレムにあるソロモンの神殿の内部。バビロニア軍の侵入におびえるヘブライ人たちが神に祈っていると、大祭司ザッカリアはバビロニアの王女フェネーナを人質に取っているので平和がもたらされるだろうと告げる(「エジプトの海辺で」)。 そこにユダヤ王の甥イズマエーレが現れ、バビロニア軍がイェルサレムに迫って来たと告げる。ザッカリアはイズマエーレにフェネーナの身を預けて、人々とともに去る。 イズマエーレは、かつてバビロニアに使者として赴いた時以来密かにフェネーナを愛していたことを告白し、秘密の通路から彼女を逃がそうとする。その時、バビロニア軍の兵士を引き連れたフェネーナの姉アビガイッレが姿を現し、神殿はすでに占領されたと叫ぶ。アビガイッレも以前から密かにイズマエーレを想っていたので、もし私を愛するならヘブライの民を助けようと言うが、彼はその甘言を断る。戦いに敗れたヘブライの兵士たちが戻って来て、バビロニア王ナブッコの侵攻を伝えるので、ザッカリアやヘブライ人たちは慌てふためく。 そこにナブッコが神殿に進攻して来る。怒ったザッカリアはフェネーナの胸に短剣を突きつけて、もし神殿を汚すならばお前の娘の命はないと叫んでフェネーナを刺そうとした時、突然イズマエーレが飛び出して彼女を助ける。ナブッコは兵士たちに神殿に火をつけるよう命じる。ザッカリアとヘブライ人たちはイズマエーレの裏切りを呪う。
第二幕「背信」
第一場 バビロニアにあるナブッコの王宮の一室。羊皮紙の古文書を手にしたアビガイッレが入って来て、自分は王が奴隷に生ませた子で、ナブッコは妹のフェネーナに王位を譲ろうとしているのを知って怒る(「ああ、私が見つけた運命の書よ…いつか私も晴れの身となり」)。 そこにベルの祭司長が現れ、捕虜にしたヘブライ人たちをフェネーナが釈放しているので止めさせるよう願い出る。祭司長はアビガイッレに、ナブッコが戦いで倒れたという噂を流しておいたから、あなたが女王になって欲しいと言うので、アビガイッレは王位に就く野心を燃やす。
第二場 バビロニア王宮の広間。捕らわれの身のザッカリアは、神が奇跡を行うよう祈ってからフェネーナの部屋に入って行く(「神よあなたは予言者の唇に」)。入れ違いに入って来たイズマエーレは、レヴィの神官に裏切りを激しく非難される。 ザッカリアが戻り、フェネーナはヘブライ教に改宗したのでイズマエーレは裏切り者ではないと言う。そこに老臣アブダルロが駆けつけて、戦死のナブッコに代わってアビガイッレが王位に就き、ヘブライ人たちを処刑しようとしていると伝える。
アビガイッレが現れ、フェネーナに王冠を渡すよう迫る。その時群集をかきわけて手兵を連れたナブッコが現れ、王冠を取って自分の頭に乗せる。そしてバビロニア人に向かって、ヘブライの神は滅び、今から私は王ではなく神なのだと叫ぶ。すさまじい雷鳴がとどろき、ナブッコの王冠に落雷する。狂気のナブッコの頭から転がり落ちた王冠をアビガイッレが手にする。
第三幕「予言」
第一場 バビロニア王宮の空中庭園。王座に就いたアビガイッレに人々が忠誠を誓い、ベルの祭司長はフェネーナの死刑の書類に署名するよう進言する。 そこにやつれ果てたナブッコが姿を見せ、アビガイッレが王座に座っているのを見て驚く。そして彼女にそそのかされて死刑令状に署名してしまう。実の子が処刑されると気がついたナブッコは、お前は奴隷の子にすぎないとアビガイッレをなじるが、彼女はそれを記した古文書を懐から取り出して引き裂いてしまう。処刑の合図のラッパの音が聞こえる。娘を返してくれと言うナブッコの懇願に対しても、アビガイッレは少しも心を動かされず、皆は女奴隷にひざまずくのだと言い放つ。
第二場 ユーフラテス河畔。捕虜になったヘブライ人たちは強制労働をさせられている。彼らは故郷をしのんで神に祈る(「行け、わが思いよ、黄金の翼に乗って」)。ザッカリアはバビロニアの滅亡を予言して人々を勇気づける(「未来の暗がりの中に私は見る」)。
第四幕「偶像破壊」
第一場 バビロニア王宮の一室。深い眠りから覚めたナブッコはフェネーナが刑場に引かれて行くのを見る。自分が幽閉されているのを知った彼は、思わずユダヤの神に神を冒讀した罪の許しを請う(「ユダヤの神よ」)。そして正気に戻ったナブッコは、部下を引き連れてフェネーナの救出に向かう。
第二場 バビロニア王宮の空中庭園。ヘブライ人たちの処刑が執り行われようとしている。フェネーナは晴れやかな態度で処刑場に向かおうとする。 そこにナブッコと兵士が駆けつけて死刑を止めさせ、ベルの神の偶像の破壊を命じる。すると不思議にも偶像は自然に崩れ落ちるので、一同は奇跡に驚いてエホヴァの神をたたえる。ナブッコはヘブライ人に帰国を許し、毒を飲んだアビガイッレはフェネーナに許しを請いつつ息を引き取る。ザッカリアはエホヴァの神に仕えるナブッコを誉めたたえる。
Reference Materials
初演
1842年3月9日 ミラノ・スカラ座
原作
旧約聖書(エレミア書、列王記下、ダニエル書)
台本
テミストークレ・ソレーラ/イタリア語
演奏時間
第1幕43分、第2幕30分、第3幕26分、第4幕25分(シノーポリ盤CDによる)
参考CD
●ディミトローヴァ、テッラーニ、ドミンゴ、◦ディミトローヴァ、テッラーニ、ドミンゴ、カプッチッリ/シノーポリ指揮/ベルリン・ドイツ・オペラ管・唱(DG)
参考DVD
●グレギーナ、ジョーンズ、ドヴォルスキー、ポンス/レヴァイン指揮/メトロポリタン歌劇場管・唱(DG)
● グレギーナ、プレスティーア、ドヴォルスキー、ヌッチ/ルイージ指揮/ウィーン・フィル、ウィーン国立歌劇場唱(DEN)
ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止
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