エルナーニ[全4幕]ヴェルディ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

G. F. Verdi, Ernani 1843~44
エルナーニ[全4幕] ヴェルディ作曲

 
❖登場人物❖

エルナーニ(T) ドンナ・エルヴィラ(S) ドン・カルロ(Br) ドン・ルイ・ゴメス・デ・シルヴァ(B) リッカルド(T)他

❖概説❖

 ヴェルディの五番目のオペラであるこの作品は、前作「ロンバルディ」に比べて一段と充実した内容を持ち、初演の主役は不調ながら好評を持って迎えられた。特に第三幕の「陰謀の合唱」は人々の愛国心を盛り上げた。

第一幕「山賊」

 第一場 アラゴン山中のエルナーニの陣営。山賊たちが首領エルナーニとともに現れ、酒をたたえている。エルナーニは本来貴族なのだが、父親がカスティーリャの国王ドン・カルロと戦って敗れたため、今では山賊に身をやつしている。
 エルナーニは、恋人のエルヴィラが叔父で後見人のシルヴァに結婚を迫られていると聞いて、彼女への想いを歌う(「色あせた花の茂みの露のように」)。山賊たちはそれなら彼女を救い出そうと言うので、エルナーニは喜び勇んで、山賊たちを率いてシルヴァの城へ向かう。
 第二場 シルヴァの城のエルヴィラの部屋。シルヴァとの結婚を明日に控えたエルヴィラが悩んでいる。そして、エルナーニが自分を奪って一緒に逃げてくれれば良いのにと願う(「エルナーニ、私を奪って逃げて」)。侍女たちが結婚の贈り物を持って祝いに来ても、彼女は少しも喜ばずに侍女たちを退出させる。
 そこに突然国王ドン・カルロが乳母の手引きで入って来る。国王はエルヴィラに山賊のエルナーニとの恋をなじり、自分の愛人として宮廷に来るよう口説くが、エルヴィラは固く拒絶する。この時、秘密の扉からエルナーニが現れ、父の仇と国王に決闘を挑むが、折しもシルヴァが帰って来る。 シルヴァは誘惑者が二人もいるのに驚き(「わしは不幸な男だ」)、復讐するため二人に外へ出ろと言うが、国王の侍従リッカルドが現れるので、相手が国王と知ってまたも驚く。国王は今夜はここに泊めて欲しいと言い、この場はエルナーニを逃がしてやるように言う。


第二幕「客人」


 シルヴァの城の豪華な広間。エルヴィラとシルヴァの結婚を祝い、参列者たちが集まっている。そこに一人の巡礼者がもてなしを請いに現れるので、シルヴァはしきたりに従って快く広間に迎え入れる。そこにエルヴィラが姿を見せるので、シルヴァは花嫁だと言って彼女を巡礼者に紹介する。すると巡礼者は衣裳をかなぐり捨てて、自分は国王からこの首に賞金をかけられたエルナーニだ、祝いに自分の首を差し出そうと言う。しかしシルヴァは、今日の客人は皆兄弟だとその場をとりなすと、城の守りを固めるために立ち去る。
 エルナーニはエルヴィラと二人だけになると、彼女の不実を責めるが、エルヴィラが結婚式の後で自害するつもりだったと言うので、エルナーニは誤解を解いて二人は抱き合う。そこにシルヴァが戻って来て二人の裏切りに怒るが、ちょうどこの時国王の到着が知らされるので、シルヴァはひとまずエルナーニを秘密の扉にかくまう。
 国王はエルナーニがこの城に潜んでいるはずだから彼を引き渡せと言って部下に城中を捜させるが、発見できないので代わりにエルヴィラを連れて行く。姿を現したエルナーニはエルヴィラに対する国王の横恋慕を怒り、シルヴァとともに国王に復讐することを誓う。エルナーニは誓いの印として角笛をシルヴァに渡し、もしこの音を聞いたら即座に命を差し出そうと約束する。


第三幕「慈悲」


 ドイツ、アーヘン近郊のアキスグラーナにあるカルロ大帝の墓。国王は祖先の墓の前で反逆者たちへの怒りを歌って墓の中に入る(「若き日々よ」)。反逆者たちが集まり、くじ引きでエルナーニが国王暗殺者に選ばれる。シルヴァはエルナーニに、暗殺の役を譲ってくれたら例の角笛を返そうと言うが、誇り高いエルナーニはその申し出を断る。
 反逆者たちは団結を誓って勇壮に歌うが(陰謀の合唱「いま一度目覚めるのだ、カスティーリャの獅子よ」)、その時大砲の音が三発聞こえ、国王に続いて侍従たちが姿を現す。侍従長は国王が神聖ローマ皇帝に選ばれたと告げる。国王は反逆者たちの逮捕を命じ、首謀者たちには死刑を宣告する。
 その時エルヴィラが現れて、国王の足元にひれ伏して慈悲を請う。国王は大帝の墓をじっと見つめると、大帝の徳を思い出して全員を許し、エルヴィラとエルナーニとの結婚を許す。一同新皇帝の寛容さをたたえる合唱となるが、面目をつぶされたシルヴァは、一人復讐を誓う。


第四幕「仮面」


 アラゴンの貴族ドン・ジョヴァンニとなったエルナーニのサラゴサにある宮殿。エルナーニとエルヴィラの婚礼の祝宴が開かれている。客の中に黒いマントに仮面をつけた男が紛れ込んでいるので、参列者たちは不吉がる。
 夜もふけて、エルヴィラとエルナーニは舞踏会を抜け出しバルコニーで愛を語り合っていると、遠くから角笛の音が聞こえるので、エルナーニは不安を覚える。角笛の音が近づいて来ると、エルナーニの顔は青ざめ、エルヴィラに別室に薬を取りに行かせる。そこに仮面をつけたシルヴァが現れ、角笛が鳴ればシルヴァに命を捧げるという約束の履行を迫り、短剣か毒薬かどちらかを選べと言う。エルヴィラも駆けつけて許しを請うが、シルヴァは冷酷に誓いを果たせと言い放つ。観念したエルナーニは短剣で自分の胸を刺す。エルヴィラも後に続こうとするが、エルナーニはそれを制して息絶える。悲しみのあまりエルヴィラも気絶する。シルヴァは、復讐の悪魔が来たと勝利を宣言する。



Reference Materials


初演
1844年3月9日 ヴェネツィア・フェニーチェ座

原作
ヴィクトル・ユーゴーの同名戯曲

台本
フランチェスコ・マリア・ピアーヴェ/イタリア語

演奏時間 
第1幕51分、第2幕35分、第3幕22分、第4幕20分(ガルデッリ盤CDによる)

参考CD
●シャシュ、ランベルティ、ミラー、コヴァーチュ/ガルデッリ指揮/ハンガリー国立歌劇場管・唱(PH)
●サザーランド、パヴァロッティ、ヌッチ/ボニング指揮/ウェールズ・ナショナル・オペラ管・唱(D)

参考DVD
●フレーニ、ドミンゴ、ブルゾン/ムーティ指揮/ミラノ・スカラ座管・唱(W)

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  


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