一日だけの王様、または偽の スタニスラオ[全2幕]ヴェルディ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

G. F. Verdi, Un Giorno di Regno, ossia Il Finto Stanislao 1840
一日だけの王様、または偽のスタニスラオ[全2幕]ヴェルディ作曲

 
❖登場人物❖

騎士ベルフィオーレ(Br) ケルバール男爵(B) ポッジョ侯爵夫人(S) ジュリエッタ(Ms)  エドアルド・サンヴァル(T) ガスパロ・アントニオ・デラ・ロッカ(B) イヴレア伯爵(T)他

❖概説❖

 ヴェルディ二作目に当たる最初期のオペラで、彼にしては珍しいオペラ・ブッファのスタイルで書かれている。初演が失敗に終わったために一八四〇年代を過ぎるとまったく上演されなくなったが、一九五一年ヴェルディ没後五〇年を機に蘇演され、その時の記録がワーナー・フォニット盤としてCD化されている(下記参考CDのシモネット盤)。

第一幕

 第一場 第一場 ケルバール男爵家の回廊。今日はここで二組の結婚式が執り行われ、しかも結婚式のためにポーランド国王スタニスラオがわざわざパリから来訪されるというので、召使いたちはてんてこ舞いである。ケルバール男爵の娘ジュリエッタと結婚する財務官ロッカが現れて、男爵と喜び合っているところに国王の到着が告げられる。国王といっても実は騎士ベルフィオーレが扮した偽者で、本当の国王が敵の目を眩ませて別ルートで無事ワルシャワに帰るまでの代役である。
 偽の国王は男爵に、誰と誰が結婚するのかを尋ねる。一組はジュリエッタと財務官、もう一組はポッジョ侯爵夫人…と男爵が言いかけるので、ベルフィオーレはびっくりする。というのも、彼女こそ彼の愛する恋人だからである。これでは自分の正体がばれてしまうし、しかも恋人を失ってしまうと、ベルフィオーレはさっそく本物の国王に偽者の役からの放免を願い出る手紙を書く。
 皆が立ち去ったところに財務官の甥にあたる若い士官エドアルドが現れる。彼は国王に、恋人のジュリエッタが伯父と結婚させられる羽目になったのに失望したので、国王の部下としてポーランドのために身を捧げたいと申し出る。そこで偽の国王ベルフィオーレは彼の願いを聞き入れてやる。そしてちょっぴり国王の代役に未練が残る。
 二人が立ち去るとポッジョ侯爵夫人が現れ、国王が彼女の前から突然姿を消したベルフィオーレであると見抜く。そして、もし自分がイヴレア伯爵と結婚することにすれば彼が本心を顕(あらわ)すに違いないと、彼の心を試そうとする(「恋する心は」)。
 第二場 男爵家の庭園。農婦や召使たちがジュリエッタの結婚を祝っているが、彼女は愛するエドアルドではなくて初老の財務官が結婚相手なので悲しんでいる。そこに男爵、財務官、次いで偽の国王ベルフィオーレとエドアルドが現れる。ベルフィオーレは、男爵と財務官と三人で政治上の話があるからと言ってわざとエドアルドに席を外させ、彼にジュリエッタの相手をしているように命じる。財務官は若い二人が陰で手を取り合っているのを見て気が気でないが、国王の命令の手前しかたがない。偽の国王は地図を広げて作戦会議を始める。そこに侯爵夫人が案内されて来て、ベルフィオーレをポーランド国王として紹介されるのでびっくりするが、素知らぬ顔をする。ベルフィオーレも心の動揺を隠してその場を取り繕う。男性たちが立ち去ると、ジュリエッタは侯爵夫人にエドアルドと結婚できるようとりなしを頼むが、自分のことで頭がいっぱいの侯爵夫人はそれどころではない。
 第三場 男爵家の回廊。偽の国王は財務官の能力を高く買って、もし彼がジュリエッタをあきらめるならば大臣の地位を与え、ポーランド王女を娶らせようと言うので、財務官は男爵にジュリエッタとの婚約解消を申し入れ、名誉を傷つけられて怒る男爵と決闘になる。その騒ぎに全員が集まって来る。男爵から事の成り行きを告げられたジュリエッタは嘆くどころか大喜びする。偽の国王が現れ、一同は国王に裁きを願い出る。


第二幕


 第一場 大広間。召使たちが結婚式がなくなりそうだと噂していると、エドアルドが現れて希望の光が見えてきたと歌う(「長い苦しみに」)。彼が立ち去った後に偽の国王、ジュリエッタ、財務官が現れる。偽の国王はジュリエッタから彼女の父男爵がエドアルドとの結婚に反対なのは彼に財産がないからだと聞き、さっそく財務官にお金と彼の城をひとつエドアルドに譲るよう命じる。財務官が一人不平を呟いているところに男爵がやって来て、改めて決闘になるので財務官は逃げ出す(二重唱「古今東西、あらゆる武器を」)。
 第二場 庭園に通じる玄関の広間。侯爵夫人は偽の国王に本当の身分を明かさせようとするのに対して、彼は身分を隠したまま侯爵夫人の結婚を思いとどめさせようと、腹の探り合いになる。
 男爵が侯爵夫人に彼女の結婚相手であるイヴレア伯爵の到着を告げる。偽の国王は、彼女の愛する騎士のことはどうするのかと訊ねるのに対して、彼女は彼が私を愛しているなら姿を現すでしょうと答える(「彼の愛する人の前に姿を現して」)。任務上正体を明かせないベルフィオーレは悩むが、侯爵夫人は伯爵を出迎えに玄関に向かう。入れ代わりにジュリエッタとエドアルドが現れ、偽の国王のとりなしで結婚が許されたことを喜び合う。しかしエドアルドは今すぐ偽の国王に従って出発しなければならないと告げるので、彼女は愕然とする。そして自分も行動をともにすることを偽の国王に願い出ることにする。
 第三場 第一場と同じ大広間。侯爵夫人は男爵の前でイヴレア伯爵に対して、もし私の騎士が一時間以内に姿を現さなければ伯爵と結婚すると返事をする。そこに偽の国王がジュリエッタを連れて姿を見せ、今すぐここを出発すると告げる。そしてイヴレア伯爵にも秘密特使として同行を命じるので皆は驚く。その時伝令が本物の国王からの手紙を持って来て、ベルフィオーレに手渡す。そこには国王スタニスラオ一行が無事ワルシャワに到着し、ベルフィオーレは身代わりの任務から解かれたことが記されていた。ここで初めて彼は自分の正体を明かし、晴れて侯爵夫人と結ばれる。ジュリエッタ、エドアルドのカップルとともに二組の結婚式が行われることになり、一同祝福のなかに幕となる。



Reference Materials


初演
1840年9月5日 ミラノ・スカラ座

原作 
レクサンドル・ヴァンサン・ピヌー=デュヴァル/「偽のスタニスラオ」

台本
フェリーチェ・ロマーニ/イタリア語

演奏時間 
第1幕71分、第2幕47分(ガルデッリ盤CDによる)

参考CD

●コッソット、ノーマン、カレーラス、ヴィクセル、
● コッソット、ノーマン、カレーラス、ヴィクセル、サルディネロ/ガルデッリ指揮/ロイヤル・フィル、アンブロジアン・オペラ唱(PH)
● コッジ、パリューギ、オンシーナ、ブルスカンティーニ、カペッキ/シモネット指揮/RAIミラノ管・唱(WF)

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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