清教徒[全3幕]ベルリーニ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

V. Bellini, I Puritani 1835
清教徒[全3幕] ベルリーニ作曲

 
❖登場人物❖

グァルティエロ・ヴァルトン卿(B) エルヴィラ(S) ジョルジョ(B)  リッカルド・フォルト(Br) ブルーノ・ロベルトン(T)  アルトゥーロ・タルボ(T) エンリケッタ(S)

❖概説❖

 ベルリーニの自然で美しい旋律はショパンやワーグナーの心をも捉えたが、その中でも「清教徒」は特に高貴さに溢れたベル・カント・オペラの傑作である。主役のエルヴィラ役はソプラノにとって難役であるが、テノールにも難しい高音が要求される。名歌手を集めた初演は華々しい成功を収めた。

第一幕

 第一場 ヴァルトン卿の城塞の外。今日は議会派清教徒の城主であるヴァルトン卿の娘エルヴィラの結婚式が行われることになっている。清教徒の騎士たちが夜明けの合唱をしていると、遠くからエルヴィラたちの朝の祈りが聞こえてくる。騎士たちは彼女の結婚を祝う。ただ一人リッカルドは、戦場に赴く前にヴァルトン卿が娘をやると言ったのにもかかわらず、昨日帰ってみると断られたと嘆いている(「ああ、永遠におまえを失ってしまった」)。士官ブルーノはリッカルドに再び出征するように勧めるが、彼は恋に燃えているのだと答えて立ち去る。
 第二場 エルヴィラの部屋。結婚相手が誰であるかをまだ知らずに思い悩んでいるエルヴィラを、叔父のジョルジョが訪ねて来る。彼はエルヴィラを優しく慰めると、結婚相手をリッカルドではなくエルヴィラが愛する王党派の騎士アルトゥーロにするよう、父親のヴァルトン卿を説得して来たと告げるので、彼女は喜ぶ。そこに人々の歓呼に迎えられてアルトゥーロが到着する。
 第三場 城内の大広間。皆がアルトゥーロとエルヴィラの結婚を祝っている。アルトゥーロはエルヴィラに対する愛をたたえ(「いとしい乙女よ、あなたに愛を」)、人々もそれに和す。そこにエンリケッタが入って来る。彼女は前国王カルロ(チャールズ)一世の妃であるが、身分を隠して幽閉されている。ヴァルトン卿は彼女に、イギリス最高議会が彼女を召喚していると告げるので、出頭すれば処刑される彼女は絶望感に襲われる。
 一同が退出した後、アルトゥーロはそっとエンリケッタに近づいて彼女の身分を尋ねると、前国王妃であることを告げられる。王党派のアルトゥーロは彼女を救い出そうと申し出るが、エンリケッタは彼の危険な申し出を断る。
 その時、花嫁衣裳をまとったエルヴィラが浮き浮きと姿を現し(「私は美しい乙女」)、エンリケッタにヴェールを整えるよう頼み、無邪気にヴェールをエンリケッタの頭上に置く。その時エルヴィラを呼ぶ声がするので、ヴェールをそのままにして彼女はジョルジョに伴われて次の間に去る。アルトゥーロはこれこそ天の贈り物だと言って、エンリケッタに花嫁のヴェールをかぶせたまま彼女と城から脱走しようとする。
 たまたま通りかかったリッカルドがそれを見つけてアルトゥーロに決闘を挑もうとするが、エンリケッタが自らヴェールを取るので、相手の女性がエルヴィラではないのを知り、これ幸いと二人を城から逃がしてやる。そこに戻って来たエルヴィラはリッカルドから話を聞くと、アルトゥーロに捨てられたと思って錯乱状態に陥る。ヴァルトン卿は逃げた二人の追跡を命じる。


第二幕


 第一場 城内の一室。城の人々が発狂したエルヴィラを心配して語り合っている。エルヴィラの部屋から出て来たジョルジョが皆の求めに応じて、今日この頃のエルヴィラの病気の様子や、発狂に至ったいきさつなどを語って聞かせる(「花冠をつけて」)。
 そこに書類を持ったリッカルドが現れ、逃亡中のアルトゥーロに最高議会が死刑を宣告したと告げる。その時、舞台裏からエルヴィラの声が聞こえ、恋人アルトゥーロの姿を追い求めて気の狂ったエルヴィラが姿を現す。彼女はうつろな状態でアルトゥーロとの楽しかった日々を回想し(狂乱の場「やさしい声が私を呼んでいた…さあ、いらっしゃい、愛しい人」)、もし彼が戻って来る希望がないのなら、死にたいとさえ漏らす。
 ジョルジョはすっかり正気を失ったエルヴィラを自分の部屋に戻してから、エルヴィラがこのようになったのもリッカルドのせいだと彼を責めて、アルトゥーロを救うように諭す。はじめはアルトゥーロの自業自得だと言い張っていたリッカルドも、やがてジョルジョの優しい気持ちに打たれてアルトゥーロへの憎しみを捨てるが、明日の王党派との戦いでは勇敢に闘おうと誓い合う。

第三幕

 城外の庭園。大きなマントに身を包んだアルトゥーロが現れて、エンリケッタを逃がしてから再び城の近くまで戻って来られた喜びを感謝している。彼はイングランドから立ち去る前に、ひと目エルヴィラに会いたいと思っている。
 その時、遠くからエルヴィラの歌声が聞こえる。やがて狂乱状態のエルヴィラがアルトゥーロの姿を求めて庭園に出て来る。彼も彼女に近づこうとするが、まだ敵の追っ手が近くを探しているので身を隠す。兵士たちが行ってしまうと、アルトゥーロは再び彼女の姿を探す。エルヴィラは再会したアルトゥーロの言葉に正気づき、アルトゥーロがエンリケッタと逃れた真相を知る。しかし二人が恋の喜びに酔いしれているところにリッカルドが率いる清教徒軍の兵士が現れ、アルトゥーロを捕らえて死刑を宣告するので、エルヴィラは再び錯乱状態になる。
 アルトゥーロはたまらず彼女にいたわりの言葉をかけるが(「彼女は私に裏切られたと思ったのだ」)、今にも死刑に処せられようとしている。その時、クロムウェルの使者が現れて、ステュアート家が敗れて罪人には恩赦が出されたという書面を届ける。アルトゥーロは許され、エルヴィラは再び正気を取り戻す。そして二人の恋人はめでたく結ばれる。



Reference Materials


初演
1835年1月25日 イタリア劇場(パリ)

原作 
フランソワ・アンスロ、クサヴィエ・サンティーヌ/「巡羅隊長と騎士」

台本
カルロ・ペポーリ/イタリア語

演奏時間 
第1幕69分、第2幕41分、第3幕32分(セラフィン盤CDによる)

参考CD
●カラス、ディ・ステファノ、パネライ、ロッシ=レメーニ/セラフィン指揮/ミラノ・スカラ座管・唱(EMI)

参考DVD
●グロベローヴァ、ブロス、アルバレス/ハイダー指揮/リセウ大劇場管・唱(CC)

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  




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