テンダのベアトリーチェ[全2幕]ベルリーニ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

V. Bellini, Beatrice di Tenda 1833
テンダのベアトリーチェ[全2幕]ベルリーニ作曲

 
❖登場人物❖

ベアトリーチェ・ディ・テンダ(S) ミラノ公フィリッポ・マリア・ヴィスコンティ(Br)  アニェーゼ・デル・マイーノ(Ms) オロンベッロ(T) アニキーノ(T)  リッツァルド・デル・マイーノ(T)

❖概説❖

 このオペラはベルリーニの晩年の作品であるが、「ノルマ」と最後のオペラとなる「清教徒」という二つの名作に挟まれてやや陰の薄い存在になっている。物語は十五世紀初頭のミラノにあった史実がもとになっている。 ごく短期間で作曲したので霊感十分な作品とはいえず、初演は失敗であったと伝えられている。しかしベルリーニらしい抒情豊かな美しい旋律はやはり魅力的である。

テンダのベアトリーチェ.png

第一幕

 第一場 ミラノ近郊のビナスコ城内。ミラノ公フィリッポは政略結婚によって未亡人ベアトリーチェを公妃に迎え、その富とミラノ公という地位を手に入れた。廷臣たちは目的を達したからには、彼女と別れて本当に愛している女官のアニェーゼと結婚するように勧める。
 第二場 城内のアニェーゼの居間。一方のアニェーゼはベアトリーチェと血縁関係にある宮廷人オロンベッロに恋していて、彼に手紙を送る。差出人の名前のない手紙を受取ったオロンベッロは、それが密かに恋するベアトリーチェからのものと早とちりして、逢い引きの場所と思い込んでやって来たところがアニェーゼの部屋であるのに驚く。彼女はオロンベッロを引き留めようと遠回しに恋を告白するが、彼はそれがベアトリーチェからの伝言と誤解する。アニェーゼはオロンベッロの言葉の端から彼がベアトリーチェを愛していることに気づき、彼に復讐を誓う。
 第三場 ビナスコ城に近い森の中。侍女たちと散策しているベアトリーチェは、侍女の慰めに応えて、もう夫フィリッポの所業に耐えられないと悲しみを訴える(「私は一人きりです」)。そこにフィリッポが忍び寄って、腹心のリッツァルドにベアトリーチェが不貞を働いていないかを見張るように命じる。そして現れたベアトリーチェに一通の手紙を示して、彼女の陰謀と疑惑を責め立てる。
 第四場 城内の一角。フィリッポの兵士たちが、彼の優柔不断な姿勢について不満をもらして立ち去る。ベアトリーチェが現れて、自分の無実が晴らされることを亡夫の胸像の前で祈る。そこにオロンベッロが突然姿を現わし、愛する彼女のために国中から兵士を募って彼女を救出する反乱軍を組織したことを伝える。彼女はオロンベッロも疑われているので自重するように言う。
 二人の様子はフィリッポと廷臣たちに見られ、フィリッポはベアトリーチェとオロンベッロの逮捕を命じる。


第二幕


 第一場 城内の一室。拷問に耐えかねたオロンベッロが自分の罪を認め、ベアトリーチェが共犯者であると(虚偽の)告白をしたことを、廷臣たちが宮廷の婦人たちに伝える。オロンベッロの友人で廷臣の一人でもあるアニキーノが、民衆がベアトリーチェに同情していることをフィリッポに伝える。フィリッポは城門をすべて閉鎖するように命じ、自らの支配下において裁判を開くことにする。アニキーノはそれでは不公平だと意見を述べるが、廷臣リッツァルドを裁判長として裁判が行われる。被告席のベアトリーチェは臣下が自分を裁く権利はないと主張するが、そこに罪を告白したオロンベッロが引き出される。
 ベアトリーチェはオロンベッロになぜ虚偽の告白をしたかを尋ねると、彼は拷問に耐えかねた偽証の自白であると言って、ベアトリーチェの潔白を主張するので、再び拷問に連れ出される。そこに良心の呵責に耐えかねたアニェーゼが駆け込んで来て、二人を赦免するように願う。フィリッポは裁判官たちが持って来た死刑執行命令書のサインを躊躇(ちゅうちょ)するが、その時ベアトリーチェに味方する反乱軍が来襲して来たことを知って命令書にサインする。
 第二場 城内の牢獄に通じる広間。宮廷の婦人や侍女たちが嘆き悲しんでいる。牢から出て来たベアトリーチェは、栄光の中に無実で死ぬのだからと言って慰める。そこにアニェーゼが入って来て、すべて自分のオロンベッロへの恋心による嫉妬と企みによって起こったことであると告白する。 ベアトリーチェは彼女を呪うが、その時遠くからオロンベッロがアニェーゼを赦す声が聞こえる。ベアトリーチェもアニェーゼに赦しを与え、最後に「ああ!もし私に墓を建てることが赦されても、花などは捧げないでください」と歌って皆に別れを告げ、死刑執行人と刑場に向かう。



Reference Materials


初演
1833年3月16日 ヴェネツィア・フェニーチェ座

原作
ディダータ・サルッツォロエーロ/「ビナスコ城」

台本
フェリーチェ・ロマーニ/イタリア語

演奏時間 
第1幕91分、第2幕72分(ゼッダ盤CDによる)

参考CD
●ニコレスコ、カプッチッリ、トツィスカ、ラ・スコラ/ゼッダ指揮/モンテ・カルロ管、プラハ・フィルハーモニー唱(SONY)
●サザーランド、アプトフ、ヴィージー、パヴァロッティ/ボニング指揮/ロンドン響、アンブロジアン・オペラ唱(D)

参考DVD
●グルベローヴア、ヴォッレ、カルーザ、エルナンデス/ヴィオッティ指揮/チューリヒ歌劇場管・唱(CC)

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  






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