夢遊病の女[全2幕]ベルリーニ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

V. Bellini, La Sonnambula 1831
夢遊病の女[全2幕] ベルリーニ作曲

 
❖登場人物❖

アミーナ(S) エルヴィーノ(T) ロドルフォ伯爵(B) テレサ(Ms) リーザ(S) アレッシオ(B)他

❖概説❖

 ジュディッタ・パスタがアミーナ役を演じたカルカーノ劇場(ミラノ)での初演は大成功を収め、以後マリブラン、グリーシ、リンドといった名歌手たちによって競って上演されたが、やがて大劇場のレパートリーから消えてしまった。しかし二十世紀に入ってテトラツィーニ、ポンス、ダル・モンテ等によって蘇演され、1950年代になってマリア・カラスが歌うに至って本格的に復活された。

第一幕

 第一場 スイスのとある村の旅篭(はたご)の前、後景にテレサの水車小屋が見える。今日は村一番の美人アミーナと若い金持ちの地主エルヴィーノの婚約の日で、村人たちはリーザが経営する旅篭の前の広場に集まっている。しかし、以前からエルヴィーノに想いを寄せているリーザは浮かない顔をしている。リーザに求愛した農夫アレッシオが声をかけても相手にしない。
 そこにアミーナが養母テレサとともに現れ、皆に挨拶と感謝の言葉を述べているところに(「何と爽やかな日」)、花婿エルヴィーノが公証人を連れて現れ、結婚契約書に署名して、亡き母の結婚指輪をアミーナの指にはめて花を贈る(「この指輪を受けて下さい」)。人々は二人を祝福し、エルヴィーノは、結婚式は明日教会で挙げると言う。
 馬車の音が聞こえて見知らぬ紳士が現れる。彼は幼い頃にこの地の城から姿を消した領主の息子ロドルフォ伯爵で、久しぶりの城への帰途にこの村に立ち寄ったところだが、村人は誰も彼のことを知らない。紳士は故郷を懐かしみ(「懐かしい眺め」)、アミーナを紹介されて彼女の美しさをたたえるので、リーザとエルヴィーノは内心面白くない。紳士は、自分は昔領主と一緒に城にいた者であると話す。
 やがて夕刻になると、人々は夜になるとこの辺は幽霊が出るから帰ろうと言う。伯爵は村人たちの噂話に興味を持ってリーザの旅篭に泊まることにする。一同が立ち去った後、エルヴィーノはロドルフォに対するアミーナの態度をなじるが、間もなく仲直りした二人は愛を確かめ合う(「そよ風がうらやましい」)。
 第二場 リーザの旅篭の一室。伯爵が寝室でひと休みしていると、リーザが訪れる。彼女は伯爵こそこの村の領主であると知った人たちが挨拶にやって来ると告げ、彼に色目を使うが、戸外で物音がするのに驚き、慌ててハンカチを落として逃げて行く。そこに白い寝間着姿のアミーナが夢遊病の状態で現れる。伯爵はこれが幽霊の正体であると見抜く。アミーナは夢うつつの中に、エルヴィーノの名を呼んで結婚式のことなどを口にするが、そのうち伯爵のベッドの上で寝てしまうので、伯爵はアミーナをそのままにして部屋を出る。その一部始終を見ていたリーザは、エルヴィーノに知らせに向かう。
 伯爵のことを知った村人たちが集まって来るが、伯爵の代わりに女が寝ているので帰ろうとする。そこにリーザに連れられたエルヴィーノとテレサがやって来る。
 エルヴィーノはベッドのアミーナを見て驚き、物音で目を覚ました彼女を激しく罵ってもう結婚しないと言う。アミーナは弁解しようとするが、村人たちも疑いの目を向ける。ついにアミーナは養母テレサの腕の中で気を失ってしまう。


第二幕


 第一場 城へ行く森の小道。村人たちはアミーナのために伯爵に取りなしを頼みに城へ向かって行く。アミーナとテレサも伯爵に身の潔白を証明してもらおうとやって来る。嘆き悲しむアミーナをテレサは勇気づけるが、そこに悲痛な様子のエルヴィーノがやって来るので物陰に隠れる。すべては終わってしまったと言うエルヴィーノの前にアミーナは勇気を出して現れ、自分の無実を訴える(「すべては終わってしまった」)。しかしエルヴィーノはアミーナの言葉に耳を貸そうとしない。遠くで伯爵万歳と言う村人たちの声が聞こえ、間もなく人々は伯爵がアミーナの潔白を証明にやって来ると告げる。しかし嫉妬に狂ったエルヴィーノはアミーナの手から指輪をもぎ取る。村人たちの非難を浴びたエルヴィーノは、それでもなぜ不実な女を憎めないのかと彼女を忘れきれない胸中を歌い(「なぜ憎めないのか」)、絶望して立ち去る。
 第二場 第一幕第一場と同じ場面。水車が回っている。アレッシオに言い寄られたリーザが彼を適当にあしらっていると村人たちがやって来て、アミーナの不貞を信じたエルヴィーノがリーザと結婚したいと言っていると告げる。
 喜ぶリーザの前にエルヴィーノが現れて結婚を申し込み、教会へ行って式を挙げようと言うので、彼女は有頂天になる。そこに伯爵がやって来て二人を引き止める。伯爵は前夜のできごとのありのままを語り、アミーナは夢遊病だと説明するが、エルヴィーノはそれを信じようとせず、村人たちもまだ疑っている。エルヴィーノがリーザの手を引いて行きかけた時テレサが現れて、娘アミーナが眠っているから静かにして欲しいと頼むが、リーザがエルヴィーノの花嫁になると聞いてびっくりする。そして伯爵の泊まっていた部屋に落ちていたリーザのハンカチを示して、彼女こそ浮気女だと非難する。エルヴィーノはリーザも自分を裏切ったのかと嘆くが、伯爵は再びアミーナの潔白を説く。
 その時白い寝間着姿のアミーナが水車小屋から出て来て、夢心地に壊れかかった狭い橋を渡り出す。皆は彼女が橋から落ちないかとはらはらして見守る。
 無事渡り切ると、夢遊状態でエルヴィーノのために祈り、指輪のことを口走る。そして彼からもらった花を胸から取り出して、しぼんだ花に口づけして失われた愛を嘆く。このいじらしい様子のアミーナを見たエルヴィーノは後悔して、指輪を再び彼女に返してやる。
 村人たちが大声で万歳と叫ぶので彼女は目を覚まし、エルヴィーノの誤解が解けたことを知る。アミーナは喜びを取り戻し(「おお花よ、お前に会えるとは思わなかった…おお、思いもよらぬこの喜び」)、村人たちに祝福されてエルヴィーノとともに教会に向かう。



Reference Materials


初演
1831年3月6日 カルカーノ劇場(ミラノ)

原作 
ウージェーヌ・スクリーブ・エロールの同名のオペラ

台本
フェリーチェ・ロマーニ/イタリア語

演奏時間 
第1幕54分、第2幕66分(セラフィン盤CDによる)

参考CD
●カラス、コソット、モンティ、ザッカリア/ヴォットー指揮/ミラノ・スカラ座管・唱(EMI)
●サザーランド、モンティ、コレナ/ボニング指揮/フィレンツェ5月音楽祭管・唱(D)

参考DVD
●デセイ、フローレス、ペルトゥージ/ピド指揮/メトロポリタン歌劇場管・唱(D)

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  




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