カプレーティとモンテッキ[全2幕]ベルリーニ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

V. Bellini, I Capuleti e I Montecchi 1830
カプレーティとモンテッキ[全2幕]ベルリーニ作曲

 
❖登場人物❖

ロメオ(Ms) ジュリエッタ(S) カペッリオ(B) テバルド(T) ロレンツォ(B)

❖概説❖

 ロマーニの台本は、五年前のヴァッカイのために書かれたものを、急ごしらえで改訂したので弱いとされるが、ベルリーニの音楽は高貴な美しさに溢れている。そして名歌手をそろえた初演は大成功であった。音楽も前年の失敗作「ザイーラ」からの転用が多い。

第一幕

 第一場 カプレーティ館の回廊。13世紀のヴェローナでは、教皇派(グェルフィ党)のカプレーティ家と皇帝派(ギベリーニ党)のモンテッキ家が、代々権力抗争を繰り返していた。カプレーティ家は先の争いで息子を敵方の指揮官ロメオに殺され、郎党たちが復讐を誓っている。そこに当主カペッリオの甥テバルドが現れ、一同に、モンテッキ家はエッツェリーノ大公を味方に引き入れて新たな抗争の準備をしているから、ロメオが和平の使者としてやって来てもそれを拒否して復讐を遂げようと言う(「この剣で復讐を」)。医者でカペッリオの友人ロレンツォは、これ以上無意味な争いは止めるように忠告するが、カペッリオは耳を貸さず、今夜にもテバルドと娘ジュリエッタの結婚式を挙げようと言う。ジュリエッタが敵のロメオを愛しているのを知っているロレンツォは、何とか式を延ばそうと「彼女は病気だから」と言うが、テバルドは彼女に対する愛にかけてロメオへの仇を討つことを誓う。
 やがてヴェローナの平和を願う大公の使者としてロメオがやって来る。ジュリエッタを密かに愛するロメオは一同に和平を申し出るとともに、両家の和解の証としてジュリエッタへの結婚を申し込む(「ロメオがご子息を死に至らしめたとしても」)。しかしカペッリオはジュリエッタの相手はすでに決まっていると言い、彼女への求婚をはねつける。カプレーティ家のあまりにもかたくなな態度にロメオは憤然として立ち去り、カペッリオとテバルド以下一同は徹底抗争を叫ぶ。
 第二場 ジュリエッタの部屋。父に命じられたテバルドとの結婚の婚礼衣裳を着けたジュリエッタは、ロメオを想いながら両家の争いのために実らない恋を嘆き悲しんでいる(「おお幾たびか」)。
 そこに彼女の唯一の理解者であるロレンツォが入って来て、ロメオがヴェローナに戻って来ていると知らせ、彼を秘密の扉から引き入れる。ロメオはジュリエッタと熱い抱擁を交わして一緒に逃げようと言うが、この家と父が全世界と考えているジュリエッタはなかなか駆け落ちを決意できないでいる。婚礼の時は刻々と迫って来て、ついにあきらめたロメオは再び秘密の扉から出て行く。
 第三場 カプレーティ館の大広間。大勢の人々が婚礼を祝うために集まっている。彼らが立ち去ると、グェルフィ党に変装したロメオとその一味が婚礼を中止させようと潜入して来る。ロレンツォは潜入を止めさせようとするが、早くも宴会場は戦場と化し、戦いは庭に移る。姿を現したジュリエッタがロメオの無事を祈っていると当のロメオが現れ、力ずくで彼女を連れて行こうとするが、テバルドやカペッリオらカプレーティ家の郎党に取り囲まれてしまう。やがてロメオの仲間が助太刀に来るので、変装した男がロメオであることが露見する。両家の人々の間に緊迫した空気が流れる中に幕となる。


第二幕


 第一場 カプレーティ館の一室。騒ぎも収まった夜更けに、ようやく一人になったジュリエッタが外の様子を心配していると、ロレンツォが入って来て、ロメオが無事だったと知らせる。喜ぶジュリエッタにロレンツォは、テバルドとの結婚から逃れるには人々に死んだと見せかけるほかはないと、仮死状態になる薬を飲むように勧める。そしてカプレーティ家の墓所に葬られたところを自分が助け出し、ロメオと駆け落ちする手はずを整えようと説得する。
 はじめは恐れていたジュリエッタも、ついに意を決して薬を飲み干す(「神よ、私は死を恐れはいたしません」)。カペッリオが現れて明朝の婚礼の準備を促すと、ジュリエッタはそれとなく父に別れを告げるので、不安にとらわれたカペッリオは部下にロレンツォを外出させないように命じる。
 第二場 カプレーティ館に近い寂しい場所。ロメオはロレンツォを待っているが、いつになっても彼は来ない。そこにテバルドが通りかかるので、二人は罵り合った末に決闘を始めようとする。その時、館の中からジュリエッタの死を悼む声が聞こえ、弔いの行列が出て来る。テバルドもロメオもあまりの驚きに決闘をも忘れて悲嘆にくれる。
 第三場 カプレーティ家の墓所。モンテッキ家の人々に伴われたロメオが現れ、ジュリエッタの墓の前で悲しみにくれる。彼は部下の者に墓石を開けさせると、棺の中で冷たく横たわるジュリエッタに口づけをする。ロメオは部下を去らせて一人悲しみにふけり、最後の愛を誓うと(「ああ、美しい魂よ」)、自分もジュリエッタの後を追おうとして隠し持って来た毒薬を飲む。その時仮死状態から目覚めたジュリエッタはロメオが側にいるので喜ぶが、ロメオは毒が回って手遅れである。真相を聞かされたロメオはジュリエッタに抱かれたまま息を引き取り、ジュリエッタも力尽きて死んでしまう。
 そこにカペッリオ、ロレンツォをはじめ両家の人々が駆けつけ、二人の死を知る。人々が無情なカペッリオの責任を激しく非難する中に幕が下りる。



Reference Materials


初演
1830年3月11日 ヴェネツィア・フェニーチェ座

原作 
伝説「バルトロメオ・スカラ公の御世、ヴェローナの町に起こりし、いとも哀れなる物語の言い伝え」など

台本
フェリーチェ・ロマーニ/イタリア語演奏時間 第1幕78分、第2幕90分(ムーティ盤CDによる)

参考CD
●グルベローヴァ、バルツァ、ラファンティ、ハウエル、トムリンソン/ムーティ指揮/コヴェント・ガーデン王立歌劇場管・唱(EMI)

参考DVD
●チョーフィ、ポリート、サッキ/アコチェッラ指揮/イタリア国際管、ブラティスラヴァ室内唱(Dyn)

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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