ノルマ[全2幕]ベルリーニ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

V. Bellini, Norma 1831
ノルマ[全2幕] ベルリーニ作曲

 
❖登場人物❖

ノルマ(S) アダルジーザ(Ms) ポリオーネ(T) オロヴェーソ(B)  クロティルデ(S) フラヴィオ(T)

❖概説❖

 ベルリーニ自身最も愛したオペラで、ベル・カント・オペラの最高傑作である。初演では主役ノルマに名歌手ジュディッタ・パスタを迎えたが不成功に終わり、1834年マリア・マリブランが主演して以来、曲の真価が認められた。

第一幕

 第一場 ドルイッド教徒たちの聖なる森。ローマ帝国の支配下にあるガリア地方のドルイッド教徒たちは、長老オロヴェーソとともに夜の森に集まって来る。オロヴェーソは、新月が昇ったら娘で巫女の長のノルマが祭壇に置かれた銅鑼を三度打ち鳴らすので、その音を合図にローマ軍に戦いを挑むと言う。
 ガリア人たちが去ると、ローマ軍の総督ポリオーネが友人のフラヴィオとともに現れる。フラヴィオはポリオーネにこの森には近づかないほうがよいと言う。ポリオーネは、ノルマが純潔の誓いを破って自分との間に二人の子供までもうけているのに、自分は今では別の若い巫女アダルジーザに惹かれていると当惑気味にフラヴィオに打ち明け、アダルジーザをローマへ連れて帰りたいと話す。
 再びガリア人たちが集まって来る様子に二人は姿を消す。彼らが月の出を待って祈ると、手に三日月のように光り輝く鎌を持ったノルマが巫女たちを従えて現れる。ノルマは月の女神に向かって祈り(「清らかな女神よ…私の胸に帰れ」)、ローマ軍撃退にはやるオロヴェーソやガリア人たちの心を鎮める。ポリオーネを愛する彼女はひたすら平和を願う。
 森に一人残ったアダルジーザが祭壇に近づいて愛の悩みを嘆いていると、ポリオーネが現れて、ローマへ行って幸せに暮らそうと言う。彼女は神に仕える身なのでそれはできないと言うが、ついにポリオーネの熱意に負けて明日ここで落ち合うことを承諾してしまう。
 第二場 ノルマの家の前。掟を破ってポリオーネを愛してしまったノルマは、間もなくローマに召還されるポリオーネが、帰国する時には自分と子供を捨てるに違いないと思っている。人の来る気配に、侍女クロティルデに子供たちを奥に連れて行かせる。
 現れたのはアダルジーザで、信仰と愛の相克の悩みを告白する(「一人静かに神殿にいた時でした」)。同じような立場にあるノルマは身につまされて同情を示し、優しく慰めて恋を貫くよう力づける。その相手は誰かと言うノルマの問いにローマ人だと答えた時、ポリオーネが突如入って来るので、アダルジーザは彼を指さす。
 アダルジーザの恋の相手がポリオーネと知ったノルマは、彼の裏切りを激しく怒る。意外な成り行きにおろおろするアダルジーザ、アダルジーザをかばうポリオーネ、三人はそれぞれ運命のいたずらを呪う。 アダルジーザは愛をあきらめてポリオーネをノルマに返すと言うが、その時ノルマを儀式に呼ぶ寺院の鐘の音が聞こえるので、三人はその場を立ち去る。


第二幕


 第一場 ノルマの家の中。短剣を持ったノルマは、眠っている我が子を殺して自分も死のうとするが、無心に眠っている子供を見ると殺すことができない。ノルマはクロティルデにアダルジーザを呼びに行かせる。 現れたアダルジーザにノルマは、自分は恥辱から死を決意したので、子供たちをポリオーネのもとに届けて彼の良い妻になって子供を育てて欲しいと頼む。しかしアダルジーザは子供を指さして、そのようなことはできないと言い(「ノルマよ、見てごらん」)、逆に自分が身を引くからポリオーネとの仲を戻すよう言い、彼を説得して来ると言う。二人は変わらぬ友情を感動的に歌いあげる。
 第二場 ドルイッドの森の中。再びドルイッド教の兵士たちが集まって来る。兵士たちはローマ軍の動静について情報を交わす。オロヴェーソが彼らの士気を鼓舞し、立ち上がる時が来るのを冷静に待つように言う。
 第三場 イルミンスル神殿の中。ノルマがポリオーネのもとに出かけたアダルジーザの報告を一人待っている。その期待に反して話の首尾が不調だったこと、そしてポリオーネは祭壇からアダルジーザを連れ去ろうとしたことをクロティルデが報告する。怒ったノルマは復讐の言葉を口にして、戦いを告げる銅鑼の音を鳴らす。あちこちからドルイッド教の兵士が集まって来て、口々に戦争だと叫ぶ。
 オロヴェーソがノルマに儀式を始めるよう促し、誰がいけにえなのかと尋ねた時、あわただしくクロティルデが駆け込んで来て、神聖な神殿の中に忍び込んだローマ人を捕らえたと伝える。兵士たちに引き立てられて来た男は、アダルジーザを連れ去るために単身聖域に乗り込んで来たポリオーネであった。一同はいけにえにふさわしい人間だと叫び、オロヴェーソが剣を抜いてポリオーネに近づくと、ノルマは自分が殺すと言って押しとどめる。しかし彼女はどうしても彼を殺すことができないので、皆はいぶかる。ノルマは、この男について取り調べることがあると言って皆を立ち去らせる。
 ノルマはポリオーネに向かって、アダルジーザをあきらめて私とよりを戻すならば生命を助けようと言う(「とうとうあなたは私の手に落ちた」)。またノルマは、子供を殺して自分も死ぬつもりだったと説得を続けるが、彼はノルマの申し出をきっぱり断り、早く殺せと主張する。怒ったノルマは、ではアダルジーザも一緒に処刑すると言って再び一同を集める。
 ノルマは神聖な誓いに背いた一人の巫女をいけにえに捧げると言うので、それがアダルジーザだと思ったポリオーネは悲痛な声をあげる。ところが意外にもノルマは、その巫女は自分だと告白するので(「裏切られた心」)、ポリオーネは初めて彼女の深い愛情を知って後悔する。人々の弁解を求める声に、ノルマはポリオーネとの間にすでに子供が二人いると述べ、オロヴェーソに罪のない子供の命を助けるよう懇願する。人々が悲しみに涙を流す中、ノルマはオロヴェーソに別れの言葉を告げ、ポリオーネとともに火刑台にのぼる。




Reference Materials


初演
1831年12月26日 ミラノ・スカラ座

原作
アレクサンドル・スーメ/同名の戯曲

台本
フェリーチェ・ロマーニ/イタリア語

演奏時間 
第1幕91分、第2幕70分(セラフィン盤CDによる)

参考CD
●カラス、ルートヴィヒ、コレッリ、ザッカリア/セラフィン指揮/ミラノ・スカラ座管・唱(EMI)
●スリオティス、コッソット、デル・モナコ、カーヴァ/ヴァルヴィーゾ指揮/ローマ聖チェチーリア・アカデミー管・唱(D)

参考DVD
●カバリエ、ヴィージー、ヴィッカーズ/パターネ指揮/トリノ王立劇場管・唱(NMC)

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  




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