火の鳥〜ヤマト編[全2幕]青島広志作曲

HOME > メディア > 詳解オペラ名作217 > 火の鳥〜ヤマト編[全2幕]青島広志作曲
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

オペラ名作217 もくじはこちら

詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

日本オペラ

H. Aoshima,Hinotori 1984~85

火の鳥~ヤマト編[全2幕]青島広志作曲


登場人物❖

ヤマト・オグナ(BrまたはT) 鼻彦(T) 耳彦(Br) クマソ・タケル(Br) カジカ(S) 老人(おじい)(B) 火の鳥(S) ヤマトの大君(B) 他


概説

 このオペラは古墳時代の日本を背景にした手塚治虫の長編漫画「火の鳥」の「ヤマト編」が原作で、「古事記」や「日本書紀」のヤマト・タケルの熊襲(くまそ)征伐を素材に、火の鳥をライトモティーフのように絡ませている。音楽的には既存の名曲からも引用したパロディ・オペラの性格を持ち、オペレッタの側面も持っている。東京室内歌劇場の委嘱作品である。

 

 ヤマトの大君は、自分にとって不利益だが実は正しい歴史書を記しているクマソ・タケルを征伐するために、四男の王子ヤマト・オグナを赴かせる。タケルが支配する九州火の国には、その血を飲むと永遠の命を与えられるという火の鳥が生息していて、オグナはそれを捕らえて大君の墓に殉葬(じゅんそう)される人々を救おうと考える。

 タケルの館では豪華な宴会が開かれている。タケルには、男まさりの勇猛な妹カジカがいる。オグナが家来の鼻彦と耳彦を従えて到着し、カジカは警戒心を抱きながらもオグナに惹かれる。しかし、わずか三人のオグナの一行は捕らえられる。オグナは夢の中に現れた大君と三人の兄に、タケル征伐を催促される。オグナは身勝手な彼らの姿を追いやろうと一心不乱に笛を吹く。凛々しいオグナの笛に耳を止めて、火の鳥は人生について語りかける。火の鳥は人の言葉を解し、未来を見通す力を持っている。

 オグナは心の広いタケルに惹かれる。またタケルに紹介された老人から、クマソの人民がいかに火の鳥を大切にしたかを教えられる。老人はまた、タケルに永遠の命の空しさを諭す。しかし老人の葬儀の夜、オグナはついに隠し持っていた短剣でタケルを刺殺する。それでもタケルはオグナを恨むことなく、自分の名前をオグナに贈る。

 異変に気づいて現れたカジカは復讐を誓い、クマソの兵士はオグナを追う。火の鳥は山に火を放って追っ手を混乱させ、オグナには自分の血を与える。オグナはヤマトに凱旋するが、大君や三人の兄はオグナが正しい日本の歴史書を持ち帰ったので、心中穏やかでない。

 カジカはオグナを殺そうとヤマトまで追って来るが、愛する彼を殺すことができない。二人は抱き合って大君の墓を壊す決意を話すが、それを耳にした兄たちによって墓の中に埋められる。ようやく自分の愚行に気がついた大君は逝去し、墓の中ではオグナとカジカは結ばれる。火の鳥の血を持ち帰ったオグナはそれを生き埋めにされた殉葬者たちに分け与え、皆で殉死に反対する合唱を歌い続ける。


Reference Materials



初演
1985
年3月13日 都市センターホール(東京)

原作
手塚治虫の長編漫画「火の鳥」ヤマト編

台本
加藤直/日本語

演奏時間
120

 

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



◀︎◀︎◀︎ 羅生門        かぐや姫 ▶▶▶︎


オペラ名作217 もくじはこちら



  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
 
KAWAI
YAMAHA WEBSITE