オペラ名作217 もくじはこちら
詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より
日本オペラ
H. Hirai, Princess from the Moon 2002~03
かぐや姫[全2幕]平井秀明作曲
❖登場人物❖
かぐや姫(S) 帝(Br) 翁(Br) 嫗(おうな)(Ms) 車持皇子(T) 大納言(Br) 中納言(Br) 公家(T) 石作皇子(T) 里の娘(S) 他
❖概説❖
平井秀明は作曲家の康三郎を祖父に持つ。「かぐや姫」はその平井のオペラ第一作であり、一九九二年にアメリカで書かれた一曲のアリアからオペラへと構想が膨らんだ。
平安時代前期に成立されたと考えられる日本古来の物語にもとづく親しみやすいオペラであり、オーソドックスなスタイルで書かれている。海外での上演の機会も多い。
実直な竹取の翁は、ある日根元が光り輝く竹の中から美しい赤ん坊を見つけて、天からの授かりものとして大切に育てる。その後翁は、たびたび竹の中から大判小判を見つけて金持ちになる。
かぐや姫と呼ばれるその赤ん坊は、三ヶ月も経つうちに美しい娘に成長する。美しいかぐや姫の評判を聞きつけた貴族や公家、権力者ら五人の求婚者たちは、彼女の心を得ようとお互いに面白おかしく競い合う。嫗と翁は里の人気者で気高い車持皇子をかぐや姫に薦め、里一番の美女は皇子の心を取り戻すことができない。姫は求婚者たちに戸惑いながらも適当にあしらい、それぞれ指定した品物を手に入れて来るように求める。それらはすべて唐の国やはるか東方の山海にあると伝えられているこの世には存在しないような珍宝ばかりである。
翁と嫗は、はるばる遠方の宝探しの旅から帰還して来た求婚者たちの姿を見て感激するが、姫はそれらがいずれも偽物であることを次々に見破る。残るは真面目な中納言だけになるが、彼は燕(つばくらめ)の子安貝を自ら取ろうとして高い場所から落ち、病床に伏している。それを知った姫は彼に同情心が芽生えるが、中納言はついに死んでしまう。
この嫁取り物語は帝の耳に届き、恋の鞘当て競争に失敗した求婚者たちは、姫と帝の間を取り持って褒美を手に入れようとする。帝は姫を出仕させるよう翁に命じる。帝は姫にこの国一番の幸せを約束するが、姫は自分がこの世の人間ではないことを告白する。姫は、間もなく地上に留まれる期限が切れることを翁と嫗に打ち明けて、別れを告げる。姫に愛情が芽生えた帝は、姫を宿命から守るよう兵士に命じるが、天の魔力の前には無力で、姫は不老不死の薬を大切な人たちに手渡して月の世界へ旅立って行く。
Reference Materials
初演
2003年2月16日 めぐろパーシモンホール(東京)
原作
日本最古の物語「竹取物語」
台本
平井秀明/日本語
演奏時間
第1幕47分、第2幕52分
ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止