ローエングリン[全3幕]ワーグナー作曲

HOME > メディア > 詳解オペラ名作217 > ローエングリン[全3幕]ワーグナー作曲
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

詳解オペラ名作217 もくじはこちら
詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

ドイツオペラ

R. Wagner, Lohengrin 1846~48

ローエングリン[全3幕]ワーグナー作曲


登場人物

ローエングリン(T) エルザ・フォン・ブラバント(S) フリードリヒ・フォン・テルラムント(Br) オルトルート(S、Ms) ドイツ国王ハインリッヒ・デア・フォーグラー(B) 王の伝令(B)他

概説

 ワーグナー自身はロマン的オペラと呼んだが、彼の独創になる楽劇形式を採り入れている。ワーグナーの作品としては、高貴で美しい音楽として親しまれている。


第一幕

 

 アントワープ郊外のシェルデ河畔。ドイツ国王ハインリッヒは、ハンガリー出征の兵を募るためにこの地ブラバント公国を訪れている。国王は、領主の死後この地に確執と紛糾があるのはなぜかと問う。するとテルラムント伯爵が進み出て、領主の公爵が没する時に幼い娘と息子の後見を自分に託したが、ある時二人が森へ行って姉エルザが一人で戻って来たので、姉が弟ゴットフリートを殺したに違いないと語る。また、亡き領主は自分とエルザとの結婚を望んでいたが、自分は名門出のオルトルートを妻にしたと説明する。そして、この際エルザを弟殺しの罪で告発するとともに、自分をブラバント公国の領主に任命して欲しいと国王に申し出る。国王は裁判を開くこととし、エルザを召喚する。

 現れたエルザは国王の尋問に、夢で見た白鳥の騎士について語り、冤罪(えんざい)を晴らすためにこの騎士が自分の代理としてテルラムントと決闘すると言う(エルザの夢「一人淋しく悲しみの日を」)。国王はエルザの願いを入れて神の判断を仰ぐこととし、伝令がラッパを吹いて夢の騎士を呼び出す。

 二度目の呼びかけに応じて、シェルデ河上に白鳥に引かれた小舟に乗った一人の騎士が現れる。騎士は白鳥に別れを告げ(白鳥への別れの歌「ありがとう、愛する白鳥よ」)、国王に挨拶すると、エルザに自分を保護者として認めるかと問う。エルザがすべてを委ねると答えるので、騎士はエルザに、決闘に勝った暁には自分を夫にすること、そして名前と素姓を知ろうとしてはならないことを誓わせる。

 やがて試合が行われ、騎士はテルラムントを倒してエルザの潔白が証明される。騎士はテルラムントの命だけは助けてやる。夫が敗れて悔しがるオルトルートは、あの男は何者かとつぶやく。


第二幕

  

 アントワープの城内。決闘に負けたテルラムントは、夜の庭でオルトルートとひそひそ話し合っている。テルラムントが、このようになったのもお前がしたからだと妻を罵るのに対して、オルトルートはエルザが騎士の素姓に疑念を抱くように仕向けて、騎士の魔法を解いて復讐(ふくしゅう)を果たそうと言う。実は魔力を持つ邪悪なオルトルートは、ゴットフリートを白鳥の姿に変えてしまい、ブラバント公国の乗っ取りを図っていたのだった。

 やがて自室のバルコニーにエルザが姿を現し、幸せが訪れた喜びを歌う(「そよ風よ、私の嘆きを聞いておくれ」)。するとオルトルートは、バルコニーの下からエルザの同情をひくように声をかけ、言葉巧みに彼女に白鳥の騎士に対する疑念を起こさせようとする(「汚れた神々よ」)。エルザは不快に思いながらもオルトルートを室内に招き入れる。テルラムントはその様子を見て、災いがこの家に入り込み、自分の名誉を奪った者を滅ぼしてやるのだと言う。

 夜が明けて人々が集まると、伝令はテルラムントを追放して騎士とエルザが結婚すること、そして騎士はブラバント公を固辞したので、ブラバントの保護者を名乗って王とともに明日出征することなどを告げる。

 やがて貴婦人を従えたエルザが結婚式のために教会へ向かう途中、オルトルートが突然道をふさいで居丈高にエルザを罵り、名も素姓も明かさない騎士を非難する。そこに国王と騎士の一行がやって来てオルトルートを退け、騎士は国王であろうと誰にも自分の名と素姓は答えないが、エルザに問われれば答えねばならないと言う。エルザは、皆の歓呼に送られて結婚式のために教会に入る。


第三幕

 

 第一場 新婚の間。婚礼を祝う人々に導かれて(婚礼の合唱「真心こめてご先導いたします」)エルザと騎士が入って来る。二人は愛の喜びに浸るが、エルザはだんだん夫の名前を知りたい気持ちが強くなり、こらえ切れずに禁じられた問いを発してしまう。そこに部下を引き連れたテルラムントが剣を抜いて乱入するが、騎士はすばやくテルラムントを討ち倒す。騎士はテルラムントの亡骸(なきがら)を彼の部下に運び出すよう命じると、エルザに国王の前で自分の素姓を明かそうと言う。

 第二場 第一幕と同じシェルデ河畔。ラッパの音とともにブラバントの軍勢が続々と国王のもとに集まって来る。そこにテルラムントの死体が運び込まれ、打ちしおれたエルザも現れる。

 やがて騎士が現れ、昨夜自分に夜討ちをかけたテルラムントを倒したこと、エルザが誓いを破って自分の名を尋ねたことを国王に告げる。そして自分の名と素姓を語り(「遥かな国へ」)、遥か遠いモンサルヴァートという聖杯の城の王パルジファルの息子ローエングリンであると明かす。

 皆はその高貴な身分に感激して、この地に留まるよう懇願するが、彼は身分を明かした以上は聖杯の国に戻らねばならないと言い、エルザと一同に別れを告げる。すると再び白鳥の小舟が現れる。ローエングリンは別れ際に角笛と剣と指輪をエルザに託し、一年後に弟ゴットフリートが戻った暁に彼に渡すように言う。

 ローエングリンは白鳥を眺めてエルザに別れを告げるが(「愛する白鳥よ!」)、その時、白鳥が自分の魔術で姿を変えたゴットフリートであるのに気づいたオルトルートが悪態をつく。すると聖杯の使いの白い鳩が舞い降りて、白鳥はゴットフリートの姿に戻る。ローエングリンは、この方こそブラバント公であると告げると、白い鳩に引かせた小舟で去って行く。エルザは弟の腕の中で息絶える。


Reference Materials



初演
1850
年8月28日 ワイマール宮廷劇場

原作
ヴォルフラム・フォン・エッシェンバッハ/「パルツィファル」、コンラート・フォン・ヴュルツブルク/「白馬の騎士」、中世ドイツ/「ローエングリン叙事詩」など

台本
リヒャルト・ワーグナー/ドイツ語

演奏時間
第1幕64分、第2幕41分、第3幕46分(ショルティ盤CDによる)

参考CD
●ノーマン、ランドヴァー、ドミンゴ、ニムスゲルン、ゾーティン/ショルテイ指揮/ウィーン・フィル、ウィーン国立歌劇場唱(D

参考DVD
●マルトン、リザネク、ホフマン、ロア、マカーディ/レヴァイン指揮/メトロポリタン歌劇場管・唱(DG

 

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



◀︎◀︎◀︎ タンホイザー               トリスタンとイゾルデ ▶︎▶︎▶︎



  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
 
KAWAI
YAMAHA WEBSITE