詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より
コラム
ブリテンと日本建国2600年祝賀音楽
『日本書紀』の伝承によると、1940年は日本建国二千六百年にあたっていた。このため、時の政府は世界各国の有力な作曲家に奉祝音楽作曲を委嘱した。
日米関係が悪化していたアメリカ政府は斡旋を拒否したが、ドイツはリヒャルト・シュトラウス、フランスはジャック・イベール、ハンガリーはシャンドール・ヴェレシュ、イタリアはイルデブラント・ピツェッティが応じ、そしてイギリスからはブリテンの「シンフォニア・ダ・レクイエム」が送られてきた。しかし、この曲の内容は祝賀音楽にふさわしくないと判断されて楽譜は送り返され、 同年12月に歌舞伎座で開かれた祝賀演奏会で演奏されることはなかった。
ところが皮肉にも、この時に作曲された作品の中では、ブリテンの「シンフォニア・ダ・レクイエム」が今日もっとも演奏される機会が多い名曲になっている。次いで演奏されるのは、イベールの「祝典序曲」である。