西部の娘[全3幕] プッチーニ作曲

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オペラ名作217 もくじはこちら
詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

G. Puccini, La Fanciulla del West 1908~10
西部の娘[全3幕]プッチーニ作曲

 
❖登場人物❖

ミニー(S) ディック・ジョンソン(T) ジャック・ランス(Br)  アシュビー(B) ニック(T) ジェイク・ウォーレス(Br)  ビリー・ジャックラビット(B) ソノーラ(Br)他

❖概説❖

 「蝶々夫人」に続き、プッチーニが同じベラスコの戯曲に作曲した異国趣味に溢れたオペラで、アメリカの西部劇的な物語を題材としている。ジャズの要素も取り入れたプッチーニの新機軸がうかがえるが、有名なアリアは少ない。


第一幕


 酒場「ポルカ」。ゴールドラッシュに沸くカリフォルニアの果てにやって来た荒くれ鉱夫たちがたむろしている。流しの芸人ウォーレスが望郷の歌を歌いながら入って来るので(「どうしているか、私の家族」)、出稼ぎの鉱夫たちは皆故郷を懐かしみ、故郷へ帰って行く者もいる。そこに運輸会社の支配人アシュビーや保安官ランスも酒を飲みに来て、間もなく盗賊団の首領ラメレスを逮捕できるだろうと語る。
 そのうち酒場の人気者である女主人ミニーをめぐって、ランスと鉱夫ソノーラとの間でけんかが始まる。ミニーはソノーラの手からすばやくピストルを取り上げてその場を収める。皆はミニーを褒めそやし、ソノーラは彼女の機嫌を取ろうとして黄金の入った袋をミニーに預けるので、彼女はそれを小さな樽にしまう。ミニーが皆に聖書を読んで聞かせていると郵便屋が来て、怪しい者がいたから気をつけろと言う。
 二人きりになると、ランスはミニーの美しさをたたえて彼女に言い寄るが、ミニーは、本当に愛する人でなければ結婚できないと断る(「ソレダードにいた時」)。そこに酒場のバーテンのニックがジョンソンと名乗る他国者を連れて来る。ミニーはひと目見て男がお尋ね者のラメレスと気づくが、かつてモンタレーで会ったのを思い出して懐かしそうにもてなし、二人は意気投合する。
 ランスは正体不明の他国者に嫉妬するが、ミニーは彼の弁護をして身元を保証する。やがてアシュビーが盗賊団の一員のカストロを引き立てて来る。カストロはすきを見て小声でジョンソンに合図をすると、一同に首領の居所を教えると言い、皆を案内してラメレス逮捕に向かう。後に残ったジョンソンとミニーは互いに心をときめかせ、別れ際にミニーはジョンソンを自分の山小屋へ来るように誘う。その間ニックが口笛を吹いて樽の中の黄金への注意を促すので、ミニーは命がけで守るのだと言う。  


第二幕


 ミニーの山小屋の中。インディアンの召使ウォークルがビリーと結婚話をしているところにミニーが帰って来て、二人分の食事を用意するよう命じて化粧を始めるので、ウォークルは何事かとびっくりする。間もなくジョンソンがやって来て、二人は語り合ううちに愛が高まり、ミニーは吹雪にたじろぐウォークルを家に帰す。やがてジョンソンは帰ろうとするが、吹雪が一層激しくなるので、ミニーは彼を引き止めて生死をともにしようと愛を誓い(「もう離れない」)、二人はしっかりと抱き合う。
 ミニーがジョンソンにベッドを譲って寝支度をしていると、ドアをノックする音がするので、急いでジョンソンをベッドの後ろに隠す。現れたのは鉱夫たちを引き連れたランスで、情婦の証言からジョンソンこそ盗賊団の首領ラメレスだと判断したと告げ、家の中の様子を探る。
 皆を帰した後、ミニーはジョンソンを詰問する。ジョンソンは盗賊になった自分の身の上を語り、今はミニーだけを愛していると言うが、その言葉を信用しないミニーは怒って彼を追い出してしまう。その途端に銃声が聞こえる。ミニーは傷ついたジョンソンを急いで家の中に入れると、彼を屋根裏に隠す。すぐにピストルを持ったランスが入って来て家中を捜索するが、どこにもジョンソンを発見できない。
 しかしランスが無理やりミニーを抱き締めようとした時、天井から血が滴り落ちるので、ついにジョンソンは発見されてしまう。ミニーはカードの勝負でジョンソンの身柄の扱いを決めようと言い、いんちきでランスに勝つ。ランスは無念そうに荒々しく立ち去り、ミニーは勝ち誇ってカードを宙に撒くと、気絶しているジョンソンを抱きかかえてヒステリックに笑う。   


第三幕


 カリフォルニアの大森林。夜明けの寒々とした空気の中でたき火を囲みながら、ランスはジョンソンを取り逃がして悔しがる。鉱夫たちはジョンソンを追って山狩りをしている。やがてソノーラが来て、ジョンソンを捕らえたと言うので、鉱夫たちは縛り首だと言って騒ぐ。
 引き立てられて来たジョンソンは、自分は盗みはしたが殺人はしていないと抗弁するが、人々の怒りは収まらない。ついに首吊り用の太い縄が用意される。その前に立ったジョンソンは、処刑の前にひと言ミニーに伝えて欲しいことがあると言い、彼女には自分の死を伝えずに自由になって遥か遠くへ行ったと信じさせて欲しいと言う(「やがて来る自由の日」)。ランスはこれを聞いて、恥知らずの男めと怒る。
 この時馬に乗ったミニーが駆けつけるので、ランスは早く処刑しろと叫ぶが、人々は静かにミニーを迎える。ピストルを身構えたミニーはジョンソンを愛するようになったいきさつを綿々と語り、彼の助命を請う。いつも彼女の世話になっていた人々はついに彼女の優しい心に打たれ、ジョンソンの首から縄を外す。ミニーとジョンソンはカリフォルニアの地に別れを告げ、皆に送られて新しい人生へと旅立って行く。
 



Reference Materials


初演

1910年12月10日 メトロポリタン歌劇場

原作
デイヴィッド・ベラスコ/「黄金の西部の娘」

台本 
カルロ・ザンガリーニ、グェルフォ・チヴィニーニ/イタリア語

演奏時間 
第1幕61分、第2幕44分、第3幕27分(カプアーナ盤CDによる)

参考CD
●テバルディ、デル・モナコ、マックニール、トッツィ/カプアーナ指揮/ローマ聖チェチーリア・アカデミー管・唱(D)
●マルトン、オニール、フォンダリー、モントゴメリー/スラトキン指揮/ミュンヘン放送管、バイエルン放送唱(RCA)

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  





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