中央大学杉並高校  思考ゲーム研究会 「コミュニケーションでつかんだ成長の種」

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中央大学杉並高校  思考ゲーム研究会

「コミュニケーションでつかんだ成長の種」



2017年11月のある放課後、

中央大学杉並高等学校思考ゲーム研究会の4名は、
顧問の生田研一郎先生とともに、
民間学童クラブへ向かっていた。

今日は年に1度の小学生たちとの交流会だ。

生田先生によると、交流会は昨年から始まったという。

「きっかけは、わたしの子どもが通う学童の先生からの依頼でした。
生徒たちは、普段、部活動としてボードゲームに取り組んでいます。
その彼ら彼女らに、小学生たちにゲームの楽しさを伝えたり、
ゲームのルールを教えたりすることで
成長のきっかけにしてもらいたいと思っています」

 小学1年生~4年生の児童が待つ学童での地域貢献活動は、
今回で3回目になる。

 ボードゲームはもちろん遊びの延長線上にあるものだ。
とはいえ、勝ち負けがあるからこそ、真剣に次の一手を考えたり、
自分が優位に立つにはどうしたらいいかと考えたりする。

だから、勝てば嬉しいし、思った通りに行かなければ
悔しい思いをする。

 今回は小学生たちとの交流会だ。
大人に比べて、感情がストレートに出やすい小学生たちと
コミュニケーションすることで、
生徒たちも学ぶことが多いと生田先生は感じているのだろう。 

準備完了!説明開始 

 日本でメジャーなボードゲームといえば、
『人生ゲーム』『オセロ』『将棋』などだろうか。



しかし、思考ゲーム研究会が活動の中で取り組んでいるゲームは、
一般的には知られていないものも多く、
部内に用意されているゲームは
海外ものを中心に50種類もあるという。

 

今回、小学生たちに体験してもらう3つのゲーム
『おばけキャッチ』
『DOBBLE(ドブル)』
『QUARTO!(クアルト!)』も
すべて海外発のものだ。

 

学童に着くと、テーブルを並べたり、
ゲームをセットしたりと生徒たちはテキパキと準備を進める。

用意が終わり、
別の部屋から入ってきた児童たちを前に、少し緊張気味の生徒たち。

生田先生の挨拶が終わると、生徒たちは
ゲームの説明と進行係を受け持つためにそれぞれのテーブルについた。

 

生田先生がはじめに、それぞれのゲームの特徴を説明する。

「『おばけキャッチ』『DOBBLE』はスピードを競うゲーム。
『QUARTO!』はじっくり考えるゲームです。
みんな好きなゲームを選んで座りましょう」

生田先生の言葉を待ちかねたように、
30人ほどの子どもたちは、
やりたいゲームのテーブルに向かって先を競って走っていく。

子どもたちがそれぞれのテーブルに落ち着くと、
生徒たちからゲームの説明がはじまる。

子どもたちは、身を乗り出して説明を聞いていた。

それぞれのゲームを説明すると、
『おばけキャッチ』は、
めくったカードに描かれた絵の指示にしたがってミニチュアのコマを取るもの。



『DOBBLE』は、手持ちのカードに描かれている絵と
めくったカードに描かれている絵から同じものを見つけて、
一番先に指さした人がめくったカードを取るというもの。

いずれも図形認識力とスピードを競うゲームだ。

生田先生によれば、『おばけキャッチ』や『DOBBLE』のように、
瞬発力が必要なゲームは大人が子どもに勝てないことが多いのだそうだ。

これに対して、じっくり考える『QUARTO!』は、
形、色、穴の有無、高さが違う16個の木製のコマを使って、
同じ要素のコマを一直線に4つ揃える四目並べだ。



ただし、置くコマを相手が選ぶというルールがあるため、
自分が欲しいコマが来るとは限らない難しさがある。

何手か先まで考えて盤上にコマを置く思考力、
相手の手を読む洞察力も必要になる。 

いよいよ、ゲームスタート! 

 基本ルールの説明が終わると、
「じゃあ、試しにやってみよう」と、生徒たちが小学生たちに声を掛ける。



いざゲームがはじまると、説明を理解しきれずに戸惑う子もいる。

その様子を見ながら生徒たちは、
「分かる?」「そうそう」「それはこうだよ」「何年生?」と声を掛け、

子どもたちとコミュニケーションを取りながらゲームを進めていく。

 スピードを競うゲームをやっている子どもたちは、つねに前のめりだ。

お腹をテーブルにくっつけて、体を二つに折るようにして、
少しでも取りたいカードやコマに近づこうと動いてしまう。



「みんな、テーブルから少し離れて、テーブルには手を出さないよ」

ほかのテーブルからは

「手は頭の上に置いて、そうそう」

「じゃあ、次のカードをめくるよ~」

子どもたちの嬌声に混じって、生徒たちの声が聞こえる。

学年が下の子どもや気おくれしている子どもを気づかった判断だ。

ゲームがはじまって興奮気味の子どもたちを前に、
生徒たちはみんなが楽しむにはどうすればいいか、
どうやってゲームを進めればいいかを考えている。

そして、何度かのトライ&エラーを経て、徐々に生徒一人ひとりの個性が出てきた。



笑い声やおしゃべりが絶えないにぎやかなスピードゲームとは
まったく様子が違うのが、四目並べの『QUARTO!』のテーブルだ。

声を発することもなく、
盤面のコマを真剣な表情で見つめる子どもたちからは、
緊迫感さえが感じられる。

そのテーブルを担当する生徒は、
静かにゲームの行方を見つめる。



次に

どのコマを選ぶか、

どこにコマを置くか
と迷い、

しばらく手が止まった子には
ゲームが理解できているかを確認するように、
次の手の候補となるコマについて説明したり、
ゲームが終わった子どもたちには勝負のポイントを伝えたりと、
そのアプローチも場の雰囲気を壊さないようにゆっくりと静かだ。

2回席替えをして、
3つのゲームをひと通り楽しんだ子どもたちは大満足だったようだ。
また、生徒たちのゲームコントロールも回を重ねてよりスムーズになっていった。
 



生き生きとした体験がもたらしたもの 

約1時間半の交流会の最後、
元気いっぱいの子どもたちからの感謝の言葉に、
少し疲れ気味ながら、
はにかんだ笑顔で応える生徒たちの姿が印象的だった。



交流会後の反省会で4人の生徒たちに感想を聞いた。

「声がかれました。のどが痛いです。でも、子どもたちはかわいかった」と、
『おばけキャッチ』を担当した川嶋万葉さんは、
ホッとしたのか絶えず笑顔で話してくれた。

『QUARTO!』を担当した岩沢大和くんは、
「小学生には難しいと思っていましたが、
みんなちゃんと理解していました。
生田先生のお子さんと対戦しましたが負けました。強かったですね」

『おばけキャッチ』と『DOBBLE』を担当した横光藍里さんは、
「ゲームの説明がちゃんと伝わっていなくて、間違いが起こったりしました。
学年が下の子がカードやコマを取れなくて、
落ち込んだりしていたので、次回は学年を揃えるのもいいかもしれません」

『DOBBLE』を担当した宮下怜大くんは、
「男の子は楽しんでいるけど、感情的になることもありました」と、
ゲーム中にケンカになりかねない場面もあったようだ。

「面白かったのが、ゲームに参加しないで、
カードめくりを担当したいとやってくれた子がいたことです」

 この話には、生徒たちから意外だという声が上がった。

その声に生田先生は
「ゲームに参加するよりも、みんながゲームをしている様子を見るなど
プレイ以外の関わり方が楽しいと感じる子もいるんだ」と答えていた。

生徒たちは一見混沌としているように見えた子どもたちとの交流の中から、
さまざまな気づきや次回へとつながる改善点を見つけ出していた。

生田先生は、
生徒がゲーム中に手を頭の上に置いたり、
テーブルから手を出さないなどのルールをつくり出していたことに触れて、

「あれはよかったね。あのような変形ルールは、
みんなのようにゲームに慣れているからこそできるんだ」と、
生徒たちの機転をほめると同時に
日ごろの部活動が生かされていることもさりげなく伝えていた。


帰っていく生徒たちは疲労感はあるものの、みな一様に明るい表情だった。


小学生たちと交流した経験で、
4人の生徒たちはコミュニケーションや
場づくりに必要な冷静さ、観察力や判断力を試された。

しかし同時に、
自分に自信を持つこともできたのではないだろうか。
しかもそれが、
普段はなかなか触れ合えない小学生たちとの交流の場
という生きた体験であったこと。

この貴重な体験で手にした自信と達成感が、
彼らを少し大人へとステップアップさせたことは間違いない。




中央大学杉並高校  思考ゲーム研究会 「コミュニケーションでつかんだ成長の種」

取材:竹村貴子 撮影:笠井俊彦

編集:The部活!

 

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