アフロのピアノレッスン2 稲垣えみ子

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やめてしまったピアノを大人になってもう一度

第2回 アフロのピアノレッスン 稲垣えみ子

 止められない 
    止まらない

 どうしよう。考えられない事態が発生してしまった。まさかの〝レッスン病〞である。あれだけ練習が嫌で嫌で仕方がなかった子供時代は、一体なんだったんだ? とにかく練習がしたくてたまらない。

 最初の兆候は、早くも練習初日に現れた。

 ちなみに練習と言ってもまずは「自主練」である。何せ40年ぶり。先生も不安そうだったが、当然私も不安であった。なので、まずは小学校時代に弾いた《きらきら星変奏曲》に自己流で1ヵ月取り組み、その結果を見て今後の方針を決めましょうということで話がまとまったのである。

 記念すべき第1回の自主練は、早朝に行われた。

 なぜ早朝かというと、そう、誰にも聞かれたくなかったからだ。

 私が当てにしていたレッスン場は、よく通っている近所のカフェである。ここにピアノがあるのだ。店主に「いつでも練習していいですよ」と言われてヨッシャと思っていた。だがいざ楽譜をもらった私はたちまち、甘くない現実に直面した。40年ぶりの楽譜はまるっきり暗号にしか見えなかった。

 楽譜もロクに読めぬ人間のつっかえつっかえのピアノ練習など、営業妨害そのものではないか。

 さすがの図々しい私もそこまではできない。何より恥ずかしすぎる。というわけで午前7時、誰もいない店の鍵を開けてこっそり店に入り(許可はもらってるんですけどね……)ピアノの前に座った。それだけで緊張してくるが、やるしかない。まずは『キラキラ星のテーマ』。あの小さな子供でも弾ける簡単なヤツと自分に言い聞かせながら、まずは右手から。

 ドドソソララソ……。

 いや、こ、これは……なんというか……そう重い! 重すぎるよ鍵盤! 自分の指が自分のじゃないみたいだ。実に

頼りない。小さな鍵盤にまったく負けている。指のことなど何十年も意識したこともなかったのに突然、それぞれの指に「よろしくお願いします」と頭を下げたくなる。

 続いて左手。予想はしていたが、さらに衝撃を受ける。指が頼りないばかりか大いにもつれてヨタヨタである。しかも最後で指が足りなくなり、最も弱々しい左小指を使い回す羽目に。これはいけないと、指番号を見る。

 そう、子供の頃は大嫌いだった指番号。

 それは、自由に弾きたい気持ちを邪魔する七面倒臭い規則でしかなかった。でも今の私は、その頃とは違うのだ。ルールには意味があり、そこには先人の知恵が詰まっている。一見邪魔臭くとも、それを使わせていただいた方が結局は近道なのだということを、大人の私は人生の荒波にもまれながら理解してきたのである。……っていうか、この絶望的な状況で、とにかく何でもいいからおすがりしたかった。

 なのでそのありがたい知恵に従い、ゆっくりと一音ずつたどっていく。

 ……あらまあ! やっぱり番号に従えば、確かに最後まで無事たどり着けるじゃないの。実は親切だったんである指番号。

 そしていよいよ、両手で弾いてみる。

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続きは月刊ショパン2018年2月号でどうぞ! アフロさんはこの先果たしてピアノが思いどおりに弾けるようになるのか? イケメンピアニスト米津真浩先生の今月のコメントも見逃せない!

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