ショパン国際ピアノコンクール ピアノメーカーKAWAIチーム

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脈々と受け継がれる「コンテスタントに寄り添う心」

文・小笠原萠子 一般社団法人 日本ピアノ調律師協会 

(月刊ショパン2021年12月号掲載)




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SK ‒EX」は、世界一のピアノづくりを目指すカワイがフラッグシップモデルとし2001年に発表したShigeru Kawaiリーズのフルコンサートピアノである。

 今回のショパンコンクールの公式ピアノとして採用され、カワイのMPAと呼ばれる調律師たちは9月下旬からワルシャワ入りし、ピアノセレクションに備えた。

 本選参加者は予備審査の免除者を含め87名。ピアノセレクションでは、ステージ上に並べられた5台のピアノの中から使用するピアノを15分で選ばなくてはならず、コンテスタントにとっては真剣勝負の時間となる。

 87名の中から「SK ‒EX」を選んだのは6名。そのうち3名がファイナルに進出し、JJジュン・リ・ブイ氏が6位、アレクサンダー・ガジェヴ氏がソナタ賞も合わせた2位を獲得したことは快挙と言えよう。


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 「SK ‒EX」のメインチューナーである大久保氏は「歌うピアノ、多彩な 色、ダイナミックレンジの広さはもとより、ピアニッシモの美しい音作りを目指している」と明かしてくれた。各社口を揃えるのは「審査員席に一番良い音が届くよう腐心している」ということだが、大久保氏によると、フィルハーモニーホールは良くも悪くもすべての音が客席に届いてしまうため、審査員席に最も美しい音が届くよう心を砕いているそうだ。

 また、カワイの調律師は直接コンテスタントとコミュニケーションを取ることを心掛け、コンテスタントに寄り添い気遣うことが大事だという考えを代々受け継いでいる。そのひとつ、カワイが用意したホテル・グロマダ・ワルシャワ・セントラムの練習室には、飲み物やお菓子も常備されており、「SK ‒EX」を選ばなかったコンテスタントも練習に訪れていた。そんな温かな心配りはコンテスタントにも伝わっている。

 先輩の背中を見て覚え、後輩に背中で伝える、そんな寡黙な場面もあるが、インタビュー中は先輩と後輩が和気あいあいとした雰囲気で、お互い笑顔を合わわせる。

 そろそろお茶漬が恋しくないですか? の 問に「カツカレーが無性に食べたい」と答えられた方の爽やかな笑顔と、まわりの皆さんがつられて頷き微笑む姿が印象的だった。

※MPAとは…

カワイの社内資格で、Master Piano Artisan の略。カワイの調律師の中でも、厳しい試験を通過したものに与えられる。特に優れた技術・感性・人間性を求められる。


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大久保英質 

河合楽器製作所 Shigeru Kawaiピアノ研究所 原器課長

蔵田真也

河合楽器製作所 Shigeru Kawaiピアノ研究所 主務

山本有宗

カワイヨーロッパ アーティストサービス マネージャー

*そのほかのカワイ調律スタッフ*

村上達哉

カワイアメリカコーポレーション 副社長

小宮山淳

カワイ音楽振興会 アーティストサービス室長

鈴木希

河合楽器製作所 Shigeru Kawaiピアノ研究所 主務


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大久保英質さん(中央)、蔵田真也さん(右)、山本有宗さん(左)

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