アンナ・ボレーナ[全2幕] ドニゼッティ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

G. Donizetti, Anna Bolena 1830
アンナ・ボレーナ[全2幕] ドニゼッティ作曲

 

❖登場人物❖

エンリーコ八世(B) アンナ・ボレーナ(S) ジョヴァンナ・セイモール(Ms) リッカルド・パーシー卿(T) ロシュフォール卿(B) スメトン(A) ハーヴェイ(T)

❖概説❖

 ドニゼッティの出世作で、その成功はアンナ役の当時最高のプリマ・ドンナ、ジュディッタ・パスタの名唱によるところが大きい。多作なドニゼッティの作品の中でも霊感にあふれた傑作であり、わずか一ヶ月で作曲された。マリア・カラスによる蘇演で近年広く知られるところとなった。

第一幕

 第一場 ウィンザー城の広間。騎士たちが、最近エンリーコ八世に愛人ができて王妃アンナに冷たくなったと噂をささやき合っている。そこに王妃に急に呼び出された女官ジョヴァンナがやって来る。実は彼女こそ国王の新しい愛人なので、後ろめたさに不安を感じている。
 貴婦人や小姓たちを従えたアンナが現れ、皆の沈んだ心を陽気にしようと楽士スメトンに歌を所望するが、かえって初恋の苦さを思い出す(「若い頃は純真だった」)。アンナは、もし国王に誘惑されても自分のようになるだけだとジョヴァンナに忠告するので、彼女は王妃に秘密を悟られたのかと不安になる。アンナの退出と入れ違いに国王が現れると、可責の念にかられたジョヴァンナは、王妃を裏切ることはできないと訴えるが、国王は、アンナは結婚する前から自分を裏切っていたのだと言い、彼女を処罰してでもお前を王妃に迎えようとほのめかす。
 第二場 ウィンザー城の庭園。かつてアンナの恋人だったパーシー卿は、追放の罪を許されて城に戻って来ると、アンナの兄ロシュフォール卿に会って再会を喜ぶ。パーシー卿は、アンナと別れて辛かった日々を語る(「彼女を失った日から」)。
 その時、狩りの音が聞こえて国王の一行が通る。国王はパーシー卿の姿を認めると、彼が許されたのは王妃の願いによるものだと言う。それが国王の罠であるとも知らないパーシー卿は、感激してアンナの手に接吻するので、アンナは取り乱す。ロシュフォール卿は心のうちで思わずパーシー卿に自制を求めるが、二人が愛し合っていることを知った国王は、腹心のハーヴェイに二人をよく見張るように命ずる。
 第三場 アンナの居室に続く控えの間。スメトンが以前に盗んだ王妃の肖像画を返そうと忍び込んで肖像に口づけしていると、人の気配がするのでカーテンの陰に身を隠す。それはロシュフォール卿の計らいで入って来たパーシー卿とアンナで、パーシー卿は心のたけをアンナに打ち明けるが、アンナはきっぱりと断る。
 絶望したパーシー卿が自分の剣で自害しようとするので、思わずスメトンは物陰から飛び出して止めに入る。あまりのことにアンナは気絶する。見張りをしていたハーヴェイの知らせで国王が現れ、ロシュフォール卿も駆けつける。国王は王妃が自分を裏切ったと言うが、王妃の無実を証言しようとしたスメトンの胸から王妃の肖像画が落ちて、事態はいっそう悪化する。怒った国王は、全員を牢に入れるよう命じ、アンナには裁判官の前で釈明せよと冷たく言い放つ。


第二幕


 第一場 アンナが幽閉されている部屋に続く控えの間。女官たちが王妃の不幸を嘆いていると、アンナは忠実な女官だけが慰めだと言う。そこにハーヴェイが現れて、女官たちを裁判の証人として連れて行く。一人残ったアンナのもとにジョヴァンナが現れ、もし王妃が罪を認めて国王と離別すれば許されるとの国王の伝言を伝えるが、アンナは恥辱で命は買えないと拒絶する。良心の呵責に耐えきれなくなったジョヴァンナは、自分こそ国王の愛人だと告白してアンナの許しを請う。アンナは自分の女官に裏切られて驚き怒るが、悪いのはだました国王の方だと言って彼女を許す。
 第二場 裁判の間に続く控えの間。廷臣たちはスメトンが真実を語るように祈っている。しかし裁判の間から出て来たハーヴェイは、スメトンが王妃との不倫の関係を告白したと知らせる。彼は王妃の命を救うためと言われて偽りの告白をしたのである。国王はそれだけでもう十分事の成り行きに満足している。
 アンナとパーシー卿が呼び出される。アンナは国王に自分の名誉を汚さないでほしいと訴えるが、国王は耳を貸さない。パーシー卿もアンナの潔白を訴えるが、国王はまったく取り合わないので、アンナはかつて自分の妻だったと言う。アンナはその言葉に感動するが、怒った国王はジョヴァンナにお前が王妃だと言う。ジョヴァンナは、アンナを死に追いやるのなら自分が身を引きたいと願い出る(「抑えられないこの情熱のために」)。
 そこに裁判を終えて判決文を持った裁判官たちが出て来る。ハーヴェイは国王の婚姻は解消、王妃アンナとその共犯者はすべて死刑という判決文を読み上げるので、ジョヴァンナは国王に恩赦を請うが、聞き入れられない。
 第三場 ロンドン塔の中の牢獄。パーシー卿はもちろん、ロシュフォール卿もアンナの兄という理由で死刑の判決を受けて牢獄に入れられている。そこにハーヴェイが入って来て、二人の特赦を伝える。しかしアンナが処刑されると知ったパーシー卿は特赦を拒否し、ロシュフォール卿も同調する。二人は別れのあいさつをしてそれぞれ連れ去られる。 女官たちが牢から出て来て、獄中のアンナの錯乱した様子を語っていると、発狂したアンナが虚ろな目をして現れる。彼女は狂乱状態で昔を懐かしむようにあらぬことを口走るが(狂乱の場「あの方は泣いているの?…私の生まれたあのお城」)、処刑の太鼓の音で正気に戻る。
 そこに牢から引き出されたロシュフォール卿、パーシー卿、スメトンらが来るので、アンナは自分のために死んで行く彼らの不幸をわびる。スメトンは偽証した自分の愚かさを悔いるが、アンナは再び錯乱状態に陥って行く。この時、遠くから新しい王妃を祝う祝砲と鐘の音が聞こえるので、アンナはまた正気に戻る。最後の力を振り絞り、一人静かに神に感謝しながら死んで行くと王と新王妃に訴えながら息絶える(「よこしまな夫婦よ」)。



Reference Materials


初演

1830年12月26日 カルカーノ劇場(ミラノ)

台本
フェリーチェ・ロマーニ/イタリア語

演奏時間 
第1幕86分、第2幕82分(ボンコンパーニ盤CDによる)

参考CD
●カラス、シミオナート、ロッシ=レメーニ/ガヴァッツェーニ指揮/ミラノ・スカラ座管・唱(EMI)
●グルベローヴァ、ツィーグラー、パラッチ/ボンコンパーニ指揮/ハンガリー放送管・唱(Nig)


ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  






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