ショパンについての覚え書き
Notes sur Chopin
André Gide × Mahoko Nakano (品切中)
アンドレ・ジッド 著
中野 真帆子 編訳
■四六判/144ページ
■定価:本体1,500円+税
■ISBN 978-4-88364-214-3
ノーベル賞作家ジッドはショパンをどう見たか
胸を張って、堂々と、「ヴァーグナーよりもショパンが好き」と言おう! 誰もがずっと言いたくて、誰もうまく説明できなかったその理由が、心憎いまでに巧みに語られた希有なる書物! ショパン・ファンには、「鬼に金棒」的一冊! 平野啓一郎(作家)
ジッドが作家ならではの冷徹な視線と鋭敏な感性で、ショパンの音楽について深く考察した評論集です。その深遠で示唆に富む言葉は、ピアノを弾く人にとって、自分なりのショパン像を描き出すための有力な手がかりになることでしょう。
編訳者まえがき
フランスを代表するノーベル賞作家、アンドレ・ジッド(1869-1951)がショパンをこよなく愛し、ピアノの練習を通して音楽と日常的に深く関わっていたことはよく知られています。
裕福なプロレスタントの家庭に生まれ、敬虔なクリスチャンである母、ジュリエットに厳格に育てられたジッドは、七歳でピアノを始めて、少年期にはショパンの直弟子、ヨーゼフ・シフマッハーJoseph Schiffumacher(1827-1888)等に師事しました。ジュリエット自身もピアノをたしなみましたが、感情をあらわにして音楽に耽溺(たんでき)することを嫌い、曲の始めから終わりまで声高に拍子をとりながら、独奏(ソロ)より四手で連弾することを好んだようです。
肉体に宿り始めた欲望と、宗教倫理との矛盾に揺れ動く思春期を経て、作家としての地位を確立した後も、妻のマドレーヌと純粋な愛をはぐくむ一方で同性愛に奔(はし)り、本能と社会道徳(モラル)との葛藤を、生涯、作品の主題として問い続けていたアンドレ・ジッド。そんなジッドがロマン的叙情と古典的均衡という相反する要素を併せ持つ、「ピアノの詩人」ショパンの音楽に共感し、次第に惹かれていったのは当然の成り行きであったといえるでしょう。
本書は、ともすれば演奏家の片思いに終わってしまいがちな気難しいショパンの作品をより深く理解し、魅力的に演奏するための秘密の合鍵です。さあ、ページの扉を開けて、ジッドの語る「ショパン論」に耳を傾けてみましょうか……。
中野真帆子
もくじ
編訳者まえがき
献辞
ショパンについての覚え書き
エドュワール・ガンシュの手紙
断章ーー見つけ出された手記
日記からの抜粋
補足
アンドレ・ジッド年譜
編訳者あとがき
解説 青柳いづみこ