理香りんのおじゃまします!

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改訂版
理香りんのおじゃまします!
ピアニスト万華鏡

宮谷 理香 著
 

 
■四六判/270ページ 
■定価:本体1,500円+税
■ISBN 978-4-907121-56-3

ショパンコンクール入賞ピアニストの飾らぬ声を届けます!

 2008年12月に発行された、ショパン国際ピアノコンクール入賞ピアニスト、宮谷理香著「理香りんのおじゃまします!」。再版を望む声が多くあがっていましたが、2016年3月、著者のデビュー20周年を迎えるにあたり「改訂版 理香りんのおじゃまします!」として刊行されることになりました。改訂版には、新たにカラー写真のページ、また、月刊「ショパン」の掲載稿から抜粋した著者の知性とユーモア溢れるエッセイを集めた第4章も加わり、幅広い世代のファン待望の一冊となっています。万華鏡のようにさまざまな魅力を見せる宮谷理香が、ピアニストとして、人として、女性として、「飾らぬ声」をお届けします!

 

もくじ

第1章 理香りんのおじゃまします!

月刊ショパン誌上で2006年1月号~2007年1月号の間に連載されたものをまとめました。

著者の飾らない筆致を通して、ピアニストの日常を垣間見ることができます。

 

第2章 私のピアノ人生

〔Ⅰ〕ショパンコンクールをめざすまでの日々

〔Ⅱ〕1995年のショパンコンクール

〔Ⅲ〕1996年のデビュー後

〔Ⅳ〕レクチャーなどでお話ししている自分流極意

大きく分けて、上記の4つから成り立っている章です。

 

第3章 理香りんをめぐる50題―問答集

この本のために企画された〈問答〉コーナーです。

著者の嗜好、価値観を伺い知ることが出来ます。

 

第4章 理香りん的ファンタジー ─「月刊ショパン」掲載稿から

改訂版出版にあたり追加された章です。これまで「月刊ショパン」に寄稿した文章などが

掲載されています。

 

 

 

はじめに



 満員のコンサートホールの客席、ほの暗い会場の中で、舞台の中心に置かれたピアノだけがスポットライトに浮かびあがる。舞台袖から拍手に包まれて登場し、その指先から紡ぎだされる音色、そこに迸り出る興奮、恍惚、インスピレーション、生まれる詩とドラマ

 ピアニストがステージにいる時間は、実は人生のごくごく一部にすぎない。しかし、万華鏡のように移り変わるさまざまな光の色をもった人生すべてが、ステージに凝縮されている。私たち演奏家は、その瞬間のために日々を生きていると言ってもいいかもしれない。

 作り出したとたんに消えていってしまう音を生まれさせるために? 否、消えていく音が生み出す時を共有するために。


 2005年10月31日、『ショパン』の内藤克洋社長からお電話をいただいた。「来年から月刊誌『ショパン』で連載をしてみませんか」という依頼。「えーっ! 私などが!?」と驚き、「演奏家が文章を書けるのだろうか?」と不安が頭をよぎったものの、「せっかくお声をかけていただいたのだから、挑戦させてください!」とお引き受けすることになった。

 この本、『理香りんのおじゃまします!〜ピアニスト万華鏡』の第1章は、月刊『ショパン』誌上で2006年1月号〜2007年12月号の2年間連載した『理香りんのおじゃまします!』をまとめたものである。その時々に書いてきたエッセイなので古くなってしまった話もあるが、加筆訂正は最小限にして、掲載当時のまま転載している。

 ピアニストの日常を気軽なエッセイとして描くことが趣旨であったが、連載するにあたっては、決めたことがあった。それは〈不良になる〉こと。詳しくは連載文に譲るが、ここでは音楽家であることよりも、人間味ある生の声を届けることをモットーとして書いた。時折出現する少々ふざけた表現は、連載上でのキャラクターとして活躍させた〈不良理香りん〉の仕業である。

 『理香りん』は、『ショパン』編集部内で私のデビュー当時から使われていた愛称で、そのことを知って、連載でも使いたいと私から申し入れたもの。それに、「ピアニストが文章なぞ書いておこがましいけれど許して」という気持ちと、モットーの表現としてささやかなユーモアを含ませた「おじゃまします!」を組みあわせて『理香りんのおじゃまします!』という連載タイトルとした。連載の影響で、各地で「理香りん」と呼びかけられることが増えて愛着のわいたこの題名を、今回そのままメインタイトルとして使うことにした。

 第2章は、今回、本としてまとめることが決まってから半年ほどの時間をかけて新たに書き下ろしたもの。大きく分けて4つの部分からなっている。〔Ⅰ〕ショパンコンクールをめざすまでの日々、〔Ⅱ〕1995年のショパンコンクール、〔Ⅲ〕1996年のデビュー後、〔Ⅳ〕レクチャーなどでお話ししている自分流極意。

 私は素人の家庭に生まれたピアノ弾きである。それを特別のこととは思わないけど、そんな私だからこそ、お伝えできることがあるかもしれないとは思っている。家庭環境や、多くの恩師との出逢い、人生を変えた出来事、支えられた言葉など、これまでの歩みを改めて振り返り、〔Ⅰ〕から〔Ⅲ〕までの文を綴った。〔Ⅳ〕については、いつも講演などでお話しするときに使っている、主旨やレジュメをメモしたカードを、この機会に整理してまとめたものである。

 第3章は、この本のために企画した〈問答〉コーナーで、『ショパン』編集者からの「五十題」の問いにひとつずつ答えたもの。『理香りん』名付け親のひとりでもある編集者との〈問答〉は、私が信頼する彼女に是非と希望して実現したものでもある。この〈問答〉は2008年6月に2回と8月に1回の計3回、時間をかけておこなわれた。

 与えられた単語やテーマに対して自由に話したことが元になっている。リラックスした会話の中で、文章には現れてこなかった一ピアニストの素顔みたいなものを感じていただければと思う。

 連載、書き下ろし、問答ともに、似たようなエピソードが重複していたり、過去に書いた他の文章等と同じような記述があったりする部分もあるが、そこはどうかお許しいただきたい。

 ピアニスト万華鏡、さまざまに移り変わる景色をご覧ください。

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