
いい音ってなんだろう
あるピアノ調律師、出会いと体験の人生(品切中)
村上 輝久 著
■B6判/274ページ
■定価:本体1,500円+税
■ISBN978-4-88364-143-7
プロローグ
私は、1929年生まれのピアノ調律師。1967年9月5日、ドイツの有名新聞『DIE WELT』(ディ・ヴェルト)朝刊文化欄一面に、びっくりするような記事が載った。
「コートダジュールのピアニスト、非常によく調律されたピアノ」
音楽評論家・記者として有名な、クラウス・ガイテル氏署名入りのマントン音楽祭取材記事だ。内容詳細は本文で記載するが、この記事の中にこうあった。
「ピアノの巨匠、リヒテル、ミケランジェリ、ケンプ、ギレリス、バイロン・ジャニスたちが素晴らしい演奏をしたが、このフェスティバルの本当の主役は舞台の裏にいた。この主役の名前は、テルヒサ・ムラカミ。職業はピアノ調律師。彼の手にかかると、どんなピアノもストラディバリウスになる……と会場でささやかれた。彼はまさに、このフェスティバルの切り札であった」
(後略)