
改訂版
パリのヴィルトゥオーゾたち
ショパンとリストの時代(品切中)
ヴィルヘルム・フォン・レンツ
中野 真帆子 訳
■B5判/128ページ
■定価:本体1,900円+税
■ISBN 978-4-907121-55-6
音楽は身体にしみ込んできます。
この本がそれを感ずるよすがに――
小柴昌俊 東京大学名誉教授/ノーベル物理学賞受賞
外交官でアマチュアピアニストだったヴィルヘルム・フォン・レンツによる、19世紀パリを舞台にした回顧録。若き日のリストやショパンとの交流、時代の音楽事情や才気煥発な芸術家たちとの出会いがユーモラスな筆致で描かれています。
訳者まえがき
『パリのヴィルトゥオーゾたち』の著者、ヴィルヘルム・フォン・レンツ(1809〜1883)は、バルト海沿岸の都市、リガに生まれた熱狂的な音楽愛好家で、ロシア帝国の参事官としてサンクトペテルブルクでその生涯を終えるまでに三度ほどパリを訪れました。若き日のリストと出会った6ヶ月にわたる1828年から1829年冬の初頭にかけての最初の滞在、社交サロンのアイドル・ショパンの知遇を得た1842年9月からその年の終わりまでの二度めの滞在、ショパンと再会し、さらに親交を深めた1845年夏の最後の滞在ーー本書は、その三度にわたるパリ滞在の際、親交を深めたピアニストたちの回顧録で、フォン・レンツ特有の誇張と演出、資料や年代の不正確さが若干あるとはいえ、十九世紀前半のパリの音楽事情や才気煥発な芸術家たちの様子が、彼の鋭い観察眼を通して生き生きと具体的に描かれています。リストやショパンはこの饒舌で、一風変わった人物に閉口しながらも、彼の持参した、当時まだ一般に知られていなかったベートーヴェンやウェーバーのピアノ作品に触れ、多いに刺激されたことでしょう。ショパンのマズルカを勉強したことのある人なら一度は耳にしたことのある〈伝説〉のマイアベーアとの論争やルバート奏法に対する解釈も、この本の中のエピソードです。
時流にのって、自らの夢を実現させたヴィルトゥオーゾたち。私たちもロマンの香り溢れる十九世紀のパリへ、彼らを捜しにタイム・スリップしてみませんか?
中野真帆子
もくじ
訳者まえがき
19世紀前半のパリ市街図
第一章 リスト Franz Liszt 偉大なる英知
第二章 ショパン Frederic Chopin ピアノのラファエロ
訳者あとがき
資料集
主要参考文献
別冊付録 訳注 中野真帆子