究極の読譜術

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究極の読譜術
こころに響く演奏のために

小畑 郁男/佐野 仁美 著 

 
■A5判/116ページ 
■定価:本体1,500円+税
■ISBN 978-4-907121-57-0


音楽を「感じる」とはどういうことか……?
クラシックやポピュラー音楽など、ジャンルを越えて幅広く応用できる究極の読譜術によって、演奏表現を分かりやすく解き明かした実用書です。
自分らしい演奏を実現するために、すべての人に贈る待望の一冊!! 


 

もくじ

はじめに

第1部 音楽の表現とは?

1. 音楽理論と音楽表現ーー音楽表現を考える2つの視点
2. 音楽表現の構成法
3. 音楽のテクスチュア
4. 旋律の表現
5. ハーモニーと音楽表現
6. 楽譜に記された記号
7. テーマ曲の連関

第2部 楽譜を読み解く

1. F.ブルクミュラー《25の練習曲》作品100より
2. R.シューマン《子供の情景》作品15より
3. F.ショパン《ワルツ》作品69-1
4. C.ドビュッシー《前奏曲集 第1集》より
5. L.van ベートーヴェン《ピアノソナタ第14番“月光”嬰ハ短調》作品27-2

本書で用いられる用語集

おわりに


参考文献



著者紹介



はじめに


 現在の日本では、たとえば器楽指導の場面であってもしばしば「旋律をよくうたわせて」というように教えられることがあります。しかしながら、「旋律をうたう」とはいったいどういうことなのでしょうか。実際には、教師が旋律を口ずさんだり、演奏したりした表現を生徒が模倣するというように、曲ごとに慣習的な音楽表現を伝えていくといった指導法が一般的でしょう。
おそらく長い歴史を持つヨーロッパの人々にとっては自明のことであっても、歴史の浅い日本人にとって、西洋音楽を表現することは難しいのではないでしょうか。

 私たちが用いている五線記譜法で書かれた楽譜は、とても合理的にできています。そこに書かれている記号に従い、楽譜を音にしていくことによって、音楽の流れを生み出すことができますから、一般的には「音楽を演奏することは、楽譜を音にすること」と捉えられています。
 演奏について、音楽教育の中で伝統的に教えられ、一般的な認識となっている例を若干挙げてみれば、
●演奏とは譜例を実現することである。
●小説というまとまりがあり、通常2小節や4小節という単位で旋律は構成されている。
●音楽は拍子を用いて楽譜に記され、小節の1拍目は強く弾かれるべきである。
●楽譜の最初に書かれている標語でテンポを決定する。
といったようなものです。
 しかしながら、このような「楽譜を音にするための一般的なルール」を正直にあてはめて演奏してみても、必ずしも音楽的な表現になるわけではありません。音楽的な表現を行うためには、この「一般的なルール」を超えた何かが必要なのです。
 これまで、音楽的な表現とは、楽譜に書かれていないがゆえに、個人の音楽性の有無の問題であり、一般化するのにそぐわないと考えられがちでした。つまり、感性の領域にあるものとされてきたのです。しかし、このような楽譜には書かれていない、いわば「音楽表現の法則」を知ることによって、みなさんが学習してきたルールの本質を見極めて、正しく適用したり、新しく出会う音楽に対しても、適切な音楽表現を行ったりできるようになるのです。
 本書は、この「楽譜には書かれていない音楽表現の法則」の整理を行い、分かりやすい形で提示することを目的にしています。すなわち、「実際に楽譜から何を読み取り、どのような演奏するのか」を説くものです。楽譜と音楽表現との間に客観的な法則性があることを認め、理論化し、その理論を背景に、ピアノの演奏を念頭において音楽表現の具体例をあげていきます。
 本書の構成を述べておきましょう。
 第1部では、1.音楽理論と音楽表現、2.音楽表現の構成法の章において、法則全般についての説明を行い、この章に続く、3.音楽のテクスチュア、4.旋律の表現、5.ハーモニーと音楽表現、6.楽譜に記された記号、7.テーマの連関の章で具体的な適用例を示します。その法則をもとに、第2部では、よく知られた曲を用いて、総合的な音楽表現について考えていきたいと思います。
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