オーフロイデ! ベートーヴェン交響曲第九番〜歓喜の歌の発音とうたいかた〜 案内編 新鮮な感動と多様な発展を 指揮者 荒谷俊治

HOME > メディア > コラム > オーフロイデ! ベートーヴェン交響曲第九番〜歓喜の歌の発音とうたいかた〜 案内編 新鮮な感動と多様な発展を 指揮者 荒谷俊治
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

新鮮な感動と多様な発展を    指揮者 荒谷俊治

  

 ベートーベンの第九交響曲はなんといっても「シンフォニー」なんです。終楽章で4人の独唱と混声合唱を伴う交響曲です。第1楽章から第3楽章までは他のシンフォニーと同様オーケストラだけで演奏してきます。しかし終楽章ではバリトンの独唱に始まって独唱者とコーラスが加わらなければ成り立たないところが他の交響曲と違うところです。合唱は「フロイデ」に始まって「ゲッテルフンケン」と歌い終わるまで実際は15分くらいでしょうか、合唱の部分は決して長いとはいえないのですが、シラーの詩といい、ベートーベンの音楽といい、内容も構成も立派で豊かです。

 しかもその間に人間の声としてはかなり無理な(無茶と言っても良い)使い方、書き方がしてあるので、歌う側からいうと声の技術も訓練も必要です。ドイツ語の発音だって慣れない人には負担も多いでしょう。

 しかし全く無理だと言うわけではなく、初心者でもある程度時間をかけてきちんと練習をすれば何とか歌えるようになること、初心者は初心者なりに、ベテランはベテランなりに難しさもあり、しかもたくさんの仲間で協力しながら創りあげていくという、ちょうど登山に似た楽しみもあるところが《第九》の魅力の1つかもしれません。

 内容的にもミサやレクイエムのように直接に宗教的ではなく、むしろ哲学的というか、苦しみを克服して後に歓びに至るという日本人好みの精神性も大きいと思えます。

 合唱経験のない人たちがいきなり大きなミサ曲やパッション(受難曲)に取り組むのは難しく大変です。《第九》の合唱は内容の立派な割に歌う時間も短く、しかもオーケストラが延々と演奏してきた第1楽章からの大きな構成を完結する役目を果たしていて、大きな満足感もあります。

 初めて歌う人たちから回数を重ねたベテンに至るまで、歌う技術の問題や音楽的な理解力、表現力の点でそれぞれに目標が持てるし、本番での深い感動が得られます。

 従って初めて《第九》に取り組む場合は、当然十分な準備期間と練習が必要です。回を重ねるごとに初心者のための練習期間を十分にとりながら、経験者には毎回新しい目標とテーマを持たせて常に新鮮な気持ちで練習できるムード作りが大切になるでしょう。

 実際ドイツ語の発音ひとつを取り出しても、また内容の把握とその表現、発声の問題から歌い方、集中力、持続力、と気を配ることはキリがないほどあるはずです。

 そして何より大切なのは、独唱から合唱、オーケストラから指揮者まで含めて、全員がいかに新鮮にこの曲にたち向かうかということではないでしょうか。年末の《第九》ラッシュ、「歓喜の歌」の洪水はたしかに日本だけの不思議な現象ですが、やがてこの現象が《第九》にとどまらず、多様な曲に向かってくれればと願うのは私だけではないと思っています。

前へ【指揮者からふたことみこと/山田一雄】

【《第九》を歌って/大山裕子】次へ

オーフロイデ! ベートーヴェン交響曲第九番〜歓喜の歌の発音とうたいかた〜 もくじ

株式会社ショパン 1997年発行 無断転載禁止

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
 
 
KAWAI
YAMAHA WEBSITE