子供の貧困って何だろう? ”現代コラム”

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最初にひとことお断りを。当コラムは何かに役立つことを目的としたものではなく、読んで楽しいものでもありません。勉強や部活に専念できる充実した中高生活を送っている人たちがいる一方で、社会にはこんな子どもたちもいるのだ、ということを知ってほしいと思い、掲載することにしました。 「これ、おいしいね!」。塩サバの焼き物をほおばっては、白いご飯をおいしそうに食べる中学生のA子さん。数人の子どもたちがテーブルを囲んで、とりとめのない話をしながら箸を進めます。食欲は旺盛。家庭の食卓ではありません。あるNPOが開設している「居場所」でのシーンです。この居場所には、毎日10数名の中学生や高校生、20歳前後の若者たちがやってきて、食事をしたり、ゲームをしたり、パソコンでネットを見たり、ボランティアに勉強を見てもらったりと、それぞれが思い思いの時間を過ごしています。 [caption id="attachment_737" align="alignnone" width="800"]出典:https://www.plus-social.jp/project.cgi?pjid=11 出典:https://www.plus-social.jp/project.cgi?pjid=11[/caption] 子どもたちが居場所に来る理由はさまざま。家庭が困窮状態で三度の食事がきちんととれない、親が仕事に追われ、子どもの食事をつくる時間がない、親が病気で面倒を見てくれない、家族がいつも不機嫌、親が暴力をふるうので家に居たくない、子ども本人が発達障害を持っていて学校にも家にも居たくない、児童養護施設を出所してから安心できる場がない…などなど、とても深刻で複雑な状況下で暮らす子どもばかりです。 決してお金がないことだけが要因ではありません。さまざまな事情が複合的に糸のようにからみ合い、子どもたちの生きづらさが形づくられています。しかし、たかがお金、されどお金、です。根本のところに貧困が大きく関わっているのは確かです。2014年に厚生労働省が発表したデータでは、子どもの貧困率は16.3%。日本国内で暮らす18歳未満の子どもたちのじつに6人に1人、300万人以上が貧困状態にあることが伝えられました(グラフ参照)。 [caption id="attachment_731" align="alignnone" width="1006"]子どもの貧困 ※青線が全世帯を対象とした貧困率、赤線が18歳未満の子がいる世帯を対象とした貧困率 ※2014年厚生労働省「国民生活基礎調査」より[/caption] ところで、このデータはあくまで世帯収入を基準とした経済的な側面から切り取った数値です。その経済的な不利が、どのように子どもの暮らしの文化的側面、交友関係など社会的側面へ影響を与えているのかは、詳しく報告されていません。ただし、親の年収と子どもの学力や学歴との関わり、親世代が困窮していれば子世代も困窮しやすいなどの貧困の世代間連鎖は、これまでの研究・調査でかなり明確に証明されてきました。 文化的、社会的な側面とは、何も大げさなことではありません。落ち着いて本が読めたり、音楽が聞けたり、遊びやスポーツができたり、親と接する時間が持てたり、学校や親せきの人とふれあいがあったり、友だちの家へ遊びに行くことができたり、部活ができたり、自由に進路を選んだり…と、人として、人の子どもとして当たり前に享受できる暮らしのことをいいます。子どものQOL(Quality Of Life)と、言い換えてもいいかもしれません。経済的に不利な状況下にある16.3%の子どもたちが、本来なら得られるべきQOLが得られていないことは想像に難くありません。 b0de527baa6ebc10de0c1d5a08ff3d18_m さて、冒頭で述べた居場所の話に戻りましょう。それぞれが深刻な事情を抱えているにも関わらず、居場所に来た彼ら彼女たちの表情は明るく、声も元気です。何よりも豊富なおかずと栄養にあふれた食事、子どもたちをほんわか受け入れ、1人ひとりへの目配りを怠らない大人の存在が、子どもたちの安心感を引き出しているようです。一時ですが、本物のQOLを感じている時間なのでしょう。 近年になり、学習支援を中心とした子どもの居場所づくり、食の提供を通して、栄養の偏りや孤立を防ごうという善意の動きが全国に広がりつつあります。東京でも「子ども食堂ネットワーク」のサイトが登場しました。関心のある方は、http://kodomoshokudou-network.com/ を検索してみてください。 文◎中田充樹
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