本の出版ストーリー

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喜びの歌シリーズ

「第九」の合唱楽譜出版事情
 
 7月は年末にむけて各地でベートーヴェンの「第九」の練習がそろそろ始まる時期でもあるので、ショパン社、ハンナ社で発行、発売しているベートーヴェンの交響曲第九番「歓喜の歌」の楽譜のご紹介からはじめよう。
 

 今から50数年前、「第九」終楽章合唱部分の楽譜を出版していたのは、老舗の音楽之友社と、おそらく、同じく老舗の東京音楽書院の2社だった。音楽之友社版は原語に堀内敬三訳のついていたもの。これは今でも出版されている。その頃、私は全音楽譜出版社の編集部に在籍していて、「合唱界」というコーラスの月刊誌を編集していた。その私が全音から独立して東京音楽社をつくり、月刊「合唱界」を発行しながら、楽譜としてはまず最初に「第九」終楽章を「歓喜の歌」として出版した。

 この時巻末に合唱部分の歌詞ページをつくり、その発音については発音記号とフリガナをつけた。いずれも音楽業界ではじめての試みだったが、「日本語のフリガナをつけるなんて安易で不正確でとんでもない!」と、専門家から批判されたりもした。

 このページのとくに発音記号の部分作成については全音の編集部にいた鞍掛昭二さんが手伝って仕上げてくれた。

 
 当時「第九・歓喜の歌」は労音関係で演奏されることが多かったので、訳詞は労音訳のもの、解説は山根銀二先生のもの、楽譜自体も東京労音との共編で出版していた。しかしこれは後に「第九」の演奏会が労音以外にもどんどん拡がるようになっていったので、ある時期から私どもの編、発行とし、小松雄一郎先生の訳詞と解説に差し替えることにした。
 

 なお、この「歓喜の歌 ドイツ語版」のサーモンピンクの表紙デザインは当時デザイナーあるいは、編集者として頭角を現しはじめていた堀内誠一。後に50代で夭逝したが私の親戚関係でもあった。

  

 その後荒谷俊治指揮、日本合唱協会合唱によるパート別の練習用テープを作成、しばらくして同内容のCDを製作して発売した。幸いいずれも好評で現在はCDの需要が多い。続いて、日本語の「第九」を作ろうということでなかにし礼先生作詞による日本語の「第九」が生まれ、石丸寛・指揮によって桑名市で初演、これも私どもで出版させていただいた。2007年には年配者も使いやすいように大きな楽譜と文字で大判の楽譜を出版。さらに2011年には携帯しやすいポケットスコア判を発行、いずれもご好評をいただいている。昭和37年頃の初版から50年ほど経過しても未だに人気の衰えないドイツ語、フリガナ付版。各版合わせて累計80万部となる。

 
 

内藤克洋(株)ショパン 代表取締役編集長 (株)ハンナ 会長・総編集長

 
 
 

ショパン 「第九」の楽譜

   
ショパン 第九の楽譜    
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